質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六四号

内閣参質一七〇第六四号
  平成二十年十月三十一日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員谷岡郁子君提出農作物への鳥獣被害と対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷岡郁子君提出農作物への鳥獣被害と対策に関する質問に対する答弁書

一について

 鳥獣による農作物の被害金額については、毎年度、都道府県から報告を受けており、平成十九年度でイノシシは約五十億円、シカは約四十七億円、カラスは約二十六億円、サルは約十六億円、鳥獣全体で約百八十五億円となっている。それぞれ平成十四年度と比較すると、イノシシは約一・〇倍、シカは約一・二倍、カラスは約〇・六倍、サルは約一・一倍、鳥獣全体で約〇・九倍となっている。なお、被害件数、農作物に被害を及ぼしている鳥獣の捕獲数及び被害地点については把握していない。

二について

 国においては、鳥獣による農林水産業に係る被害及び農林水産業に従事する者等の生命又は身体に係る被害その他の生活環境に係る被害(以下「農林水産業等に係る被害」という。)に対応するため、平成二十年八月一日から、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成十九年法律第百三十四号。以下「法」という。)を所管する農林水産省に鳥獣被害対策室を設置し、関係省庁が連携して鳥獣被害防止対策を実施している。
 また、法は、平成二十年二月二十一日に施行され、法第四条第一項に定める被害防止計画は、平成二十年八月末現在で三百二十五市町村において作成されているところであり、その効果については今後明らかになるものと考えている。

三について

 鳥獣被害防止対策においては、鳥獣の生態や生息状況等の科学的知見を踏まえて個体数調整、被害防除や生息環境管理の対策を適切に組み合わせるとともに、対策の実施効果を踏まえ、被害対策の柔軟な運用が図られることが重要であると考えている。

四について

 法第十五条に規定する鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に寄与する人材としては、行政機関の職員や研究機関の研究者等法第四条第一項に定める被害防止計画の作成及び鳥獣の保護管理に関する専門的知見を有する者、農業改良助長法(昭和二十三年法律第百六十五号)第八条に規定する普及指導員等被害防止対策に関する専門的知見を有する者、狩猟免許を受けた者等捕獲等に関する専門的知見を有する者等を想定している。
 また、人材の育成を図るための研修については、狩猟免許を受けた者に関しては、狩猟免許の更新に際して受けることとされている管轄都道府県知事による講習において、併せて実施することとしており、当該講習の講師に、狩猟免許を受けた者の中から特に指導力の卓越した者を充てるなどしているところである。

五について

 法第十条に定める鳥獣の処理とは、捕獲現場での埋設、処理施設での焼却、肉としての利活用、鳥獣の保護管理に関する学術研究への利用等である。
 法第十五条においては、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止に関する事項について専門的な知識経験を有する者の育成を図ることとしており、鳥獣の処理に関する技術は、ここでいう専門的な知識経験に含まれる。
 また、処理施設の充実に関しては、被害防止計画に基づき捕獲等をした鳥獣が適正に処理されるよう、地方公共団体等において処理施設を整備することとされている。国としては、この整備及び処分経費に対する財政支援を行うことにより、処理施設の充実に努めているところである。

六について

 法第九条第一項に定める鳥獣被害対策実施隊については、都道府県からの報告によると、平成二十年八月末現在で、九市町村において設置されている。
 鳥獣被害対策実施隊の隊員については、地域全体で被害防止対策に取り組む体制を早急に確立することが重要であることから、猟友会の会員、市町村や農林漁業団体の職員が主な対象となり得るものと考えているが、鳥獣被害対策実施隊の構成は地域の事情に応じて異なるものと考える。

七について

 地域全体で被害防止対策を持続的に実施するためには、猟友会の会員、市町村や農林漁業団体の職員のみならず、農業者自らが狩猟免許を取得することが期待されていると考えている。また、捕獲した鳥獣を地域資源としてとらえ、安全性を確保しつつ、肉等の加工、販売等を通じて地域の活性化につなげる取組を推進する必要があると考えている。農林水産省においては、都道府県等の協力を得て、地域資源としての活用を含めた地域の鳥獣被害防止に関する各種取組の把握に努めているところである。