質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五八号

内閣参質一七〇第五八号
  平成二十年十月二十八日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員藤本祐司君提出輸入米穀の検査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤本祐司君提出輸入米穀の検査に関する質問に対する答弁書

一について

 政府が米穀の輸入を目的とする買入れを行う場合には、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成六年法律第百十三号。以下「食糧法」という。)第三十条第二項の規定に基づき、他に委託しており、その委託を受けて当該米穀の輸入を行う者(以下「輸入業者」という。)は、政府との間で締結した輸入米穀買入委託契約(以下「委託契約」という。)に基づき、輸出国において買入れの対象となる米穀の安全性を確認するための検査(以下「安全性確認検査」という。)を行うこととなっている。
 平成十九年度に安全性確認検査を実施した米穀の輸入相手国は、米国、タイ、ベトナム及び豪州となっている。これらの四か国のいずれにおいても、輸入業者による安全性確認検査の委託先は、財団法人日本穀物検定協会(以下「検定協会」という。)になっており、検査項目は、産地検査で農薬二百二十八品目の残留量及び遺伝子組換米穀の混入の有無の二項目、船積時検査で農薬等三百八品目の残留量又は含有量の一項目となっている。検査費用は、四か国のいずれにおいても、産地検査における農薬の残留量の検査に要する経費で百十六万七千五百円、遺伝子組換米穀の混入の有無の検査に要する経費で四万二千円、船積時検査における農薬の残留量等の検査に要する経費で百七十九万二千七百円となっている。安全性確認検査の件数は、米国で七十件、タイで二百五十一件、ベトナムで四十八件、豪州で三件となっている。御指摘のサンプリングについては、「輸入米麦安全性確保対策実施要領(平成十五年七月十日付け十五総食第三十号総合食料局長通知)」に定めるところにより行われていると承知している。
 御指摘のベトナムを事例としたタイムスケジュールについては、一般的に、産地検査及び船積時検査に要する期間がそれぞれ二十日間程度、船積みから我が国での陸揚げまでに要する期間が二十五日間程度となっていると承知している。

二について

 輸入業者による安全性確認検査の委託先については、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)に基づき、厚生労働大臣が登録した検査機関(以下「登録検査機関」という。)の中から当該輸入業者が選択することとなっている。安全性確認検査の実施については、同法の基準に即して、「輸入米麦安全性確保対策実施要領(平成十五年七月十日付け十五総食第三十号総合食料局長通知)」が定められており、その検査の項目は、委託契約において、同要領の別表に定める項目とすることが規定されている。

三について

 登録検査機関は、食品衛生法上の登録の要件を満たし、同法の基準に適合した検査を行うこととなっていることにかんがみ、当該登録検査機関に安全性確認検査を委託させることとしているところである。また、海外貨物検査株式会社によるサンプリングの件については、輸入業者の判断にゆだねられているところである。

四について

 輸入業者による安全性確認検査の委託先については、登録検査機関の中から選択することとされており、登録検査機関の総数は、現時点で九十二となっている。また、それらの名称については、食品衛生法に基づき公示されている。これら九十二の登録検査機関の検査能力については、関係資料の確認作業に時間を要するため、お答えすることは困難である。なお、当該登録検査機関の調査項目別の調査量については、承知していない。

五について

 お尋ねの内容について確認することができる平成十五年度以降において、年度別検査費用の総額は、平成十五年度が約三億千万円、平成十六年度が約二億八千万円、平成十七年度が約四億五千万円、平成十八年度が約四億四千万円、平成十九年度が約五億三千万円となっている。年度別検査委託先別の検査件数は、平成十五年度が検定協会百七十五件、海外貨物株式会社四百五十件、平成十六年度が検定協会百九件、同株式会社四百八件、平成十七年度が検定協会二百五十八件、同株式会社四百六十五件、平成十八年度が検定協会三百四十八件、平成十九年度が検定協会三百七十二件となっている。検査費用の額は、平成十五年度が検定協会約一億三千万円、同株式会社約一億八千万円、平成十六年度が検定協会約一億円、同株式会社約一億七千万円、平成十七年度が検定協会約二億四千万円、同株式会社約二億千万円、平成十八年度が検定協会約四億四千万円、平成十九年度が検定協会約五億三千万円となっている。なお、輸入業者は、登録検査機関の中から安全性確認検査を委託する検査機関を選択し、当該登録検査機関と契約を締結しているところである。

六について

 輸入業者により輸入される米穀は、政府自らが買い入れていることから、その買入れの対象となる米穀の安全性が確保されるよう、委託契約において、当該輸入業者による輸出国での安全性確認検査の実施を定めるとともに、その費用についても政府が負担しているところである。

七について

 米穀の輸入時において食品衛生法に違反することが判明した米穀については、通常、輸入業者に対し検疫所長が発出する文書において、積戻し、廃棄又は食用以外の用途に使用することのいずれかの措置を採るよう指示されていると承知している。当該輸入業者が、食用以外の用途に使用することとして輸入を行う場合には、政府として行う輸入を目的とする買入れを当該輸入業者に委託していることから、その輸入された米穀について買い入れていたものである。
 輸入業者が事故米穀を買い受ける際の価格については、「輸入米麦の事故品及び荷粉品処理要領(平成十九年三月三十日付け十八総食第千三百七十号総合食料局長通知)」に基づき、政府が輸入業者に対し支払う事故米穀の買入委託代金と同一の価格とされている。
 当該価格の平成十九年度における加重平均価格は、一トン当たり千六百三十六円である。

八について

 農林水産省での勤務経験があり、これまでに検定協会の役職員となった者の人数については、検定協会からは、把握していないと聞いている。農林水産省での勤務経験があり、平成二十年度に検定協会に在職している常勤役職員の人数については、検定協会からは、平成二十年十月一日現在で百十七人と聞いており、その役職は、会長、理事長、理事、検定職員等であると聞いている。また、農林水産省又は検定協会での勤務経験があり、これまでに海外貨物検査株式会社の役職員となった者の人数については、同株式会社からは、把握していないと聞いている。農林水産省での勤務経験があり、平成二十年度に同株式会社に在職している常勤役職員の人数については、同株式会社からは、平成二十年十月一日現在で六人と聞いており、その役職は、代表取締役社長、技術部長、食糧部長等であると聞いている。なお、検定協会での勤務経験があり、同株式会社に在職している者の平成二十年度における人数と役職名については、承知していない。

九について

 輸入業者による安全性確認検査や農産物検査法(昭和二十六年法律第百四十四号)に基づく品位等検査については、登録検査機関や同法に基づき農林水産大臣が登録した検査機関の中から当該輸入業者が選択して行うこととされており、これらの検査の具体的な委託先に係る判断については、当該輸入業者にゆだねられているところである。

十について

 平成十五年度から平成十九年度までに国が検定協会又は海外貨物検査株式会社と締結した契約については、現時点では、検定協会にあっては、遺伝子組換米穀の混入の有無の検査を目的とした「米国産米穀の遺伝子組換米の混入検査」等の契約が締結されており、その件数は、八十一件であり、それらの契約の金額は、総額で約八億四千百万円であると承知している。海外貨物検査株式会社にあっては、国内産米穀のカドミウムの分析を目的とした「平成十九年度国内産米穀のカドミウム分析業務」等の契約が締結されており、その件数は、二十一件であり、それらの契約の金額は、総額で約一億五百万円であると承知している。

十一について

 今般の事故米穀の不正規流通の問題を受けて、消費者が不安を感じることのないよう、食品衛生上問題のある事故米穀については、国内において流通する可能性を無くす考えであり、かかる観点からも、委託契約に基づき、安全性確認検査が適切に行われていくべきものと考えている。