質問主意書

第170回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質一七〇第九号
  平成二十年十月三日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員糸数慶子君提出米海軍原子力潜水艦「ヒューストン」の放射能漏れに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員糸数慶子君提出米海軍原子力潜水艦「ヒューストン」の放射能漏れに関する質問に対する答弁書

一及び二について

 うるま市議会が、本年八月十一日付けの「米国原子力潜水艦の冷却水漏れ事故に対する抗議決議」及び「米国原子力潜水艦の冷却水漏れ事故に対する意見書」、並びに、同月十八日付けの「米国原子力潜水艦のホワイトビーチ寄港に反対する抗議決議」及び「米国原子力潜水艦のホワイトビーチ寄港に反対する意見書」を議決したことは承知している。政府としては、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)政府に対し、我が国に寄港する米国の海軍(以下「米海軍」という。)の原子力推進型の軍艦(以下「原子力軍艦」という。)の安全性について引き続き万全の対策をとるよう働きかけていく考えであり、米海軍の原子力軍艦の寄港地が所在する地方公共団体(以下「関係地方公共団体」という。)の理解が得られるよう努力してまいりたい。
 米海軍の原子力軍艦に関しては、原子力災害が発生していない場合や発生のおそれがない場合でも、米側から外務省に対し、我が国における米海軍の原子力軍艦の安全性に関して通報がある場合には、事案の軽重にかかわらずいかなる場合であっても、外務省から、遅滞なく官邸を含む関係省庁及び関係地方公共団体に連絡・通報することとした。

三及び四について

 米海軍の原子力軍艦が我が国に寄港するに際しては、米海軍は、外務省に対し、通常、入港の少なくとも二十四時間前に、その原子力軍艦の寄港地、入港予定時刻及び停泊又は投びょうの予定位置等について通報を行っている。外務省は、米海軍の通報を受け、警察庁、防衛省、文部科学省、海上保安庁及び関係地方公共団体に米海軍の通報内容につき連絡を行っている。
 なお、米国との連絡の具体的な内容については、米国との信頼関係が損なわれるおそれがあること等から、お答えすることは差し控えたい。

五について

 ホワイト・ビーチ地区における桟橋については、物資の積卸しに必要な作業場が狭隘なため、提供施設整備により、平成十一年度から平成十七年度までの間において我が国政府が拡幅等の整備を行ったところである。その内容は、約十六メートルの拡幅、接岸設備である係船柱及び防舷材の整備等であり、当該整備に要した予算額は約三十六億円である。

六について

 今般の米海軍の原子力推進型の潜水艦(以下「原子力潜水艦」という。)ヒューストンから微量の放射能が放出された可能性があるとされた事案は、米国政府からの説明によれば、閉じられたバルブの一つから、米海軍の厳格な設計基準を上回る少量の水が染み出たことが原因であったとのことである。

七について

 米海軍の原子力軍艦は、昭和三十九年以来千三百回以上我が国に寄港しているが、今回、米海軍の原子力潜水艦ヒューストンから微量の放射能が放出された可能性があるとされた事案を含め、人体及び環境に影響を及ぼすような放射能の放出は一件も発生していない。
 米国政府は、今般の米海軍の原子力潜水艦ヒューストンの事案に関する最終報告の我が国政府への通報に当たり、原子力軍艦の安全に関する従来のコミットメントを厳格に遵守し続けることを再確認し、すべての原子力軍艦について具体的な措置及び厳格な基準によりこれを維持することを改めて確約した。
 政府としては、本最終報告を含む米国政府の対応は、米海軍の原子力軍艦の安全性に対するコミットメントを表したものと認識している。また、政府としては、本最終報告により、我が国の平和と安定に重要な役割を果たす米海軍の原子力軍艦の安全性が再確認されたと考えており、米国政府に対し、我が国に寄港する米海軍の原子力軍艦の安全性について引き続き、万全の対策をとるよう働きかけていく考えである。
 なお、政府は、米海軍の原子力軍艦が我が国に寄港する際には、主体的かつ厳格に放射能調査を実施している。具体的には、文部科学省が、「原子力艦放射能調査指針大綱」に基づき、米海軍の原子力軍艦が我が国に寄港する際に、二十四時間体制で放射能監視を実施しており、結果は必ず公表している。この監視は、人体及び環境に影響を与えるような放射能のレベルを検出することが可能である。

八について

 外務省は、これまで、米側から、米海軍の原子力軍艦の原子力災害が発生した場合、又は発生のおそれがあるとの通報を受けた場合には、関係省庁で申し合わせた通報体制に従って、官邸を含む関係省庁及び関係地方公共団体に遅滞なく連絡を行うこととしている。さらに、米海軍の原子力軍艦の原子力災害が発生していない場合や発生のおそれがない場合でも、米側から外務省に対し、我が国における米海軍の原子力軍艦の安全性に関して通報がある場合には、事案の軽重にかかわらずいかなる場合であっても、外務省として、遅滞なく官邸を含む関係省庁及び関係地方公共団体に連絡・通報することとした。