質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一四四号

サンルダム建設に係る各種専門家に関する第三回質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十二月十八日

紙 智子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   サンルダム建設に係る各種専門家に関する第三回質問主意書

 前二回の答弁を受け、さらに多くの問題や疑問点があらわれた。
 サンルダムをめぐって各種専門家がさまざまな議論を行っているが、天塩川魚類生息環境保全に関する専門家会議(以下、「専門家会議」という。)委員八名のうち、北海道庁職員一名以外の七名はすべて北海道開発局(以下、「開発局」という。)から受注実績のある企業、公益法人に所属していることが明らかになった。
 また開発局による委員選任の実態はその兼任の極端な多さなどといった点において、「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」の「審議会等の運営に関する指針」(一九九九年四月二十七日閣議決定)の趣旨に著しく反している。
 またいわゆる天下りの答弁内容も不十分である。そこであらためて以下のとおり質問する。

一 各種専門家の国土交通省審議会等委員の歴任・兼任の多さについて

 専門家会議委員、また天塩川流域委員会委員長、副委員長ら開発局からの研究委託実績のある三名の委員は、国土交通省及び開発局の各種審議会等委員を多数兼任している。しかしながら、前記閣議決定は「委員の任命に当たっては、当該審議会等の設置の趣旨・目的に照らし、委員により代表される意見、学識、経験等が公正かつ均衡のとれた構成になるよう留意するものとする。」とし、兼職については、「委員がその職責を十分果たし得るよう、一の者が就任することができる審議会等の委員の総数は原則として最高3とし、特段の事情がある場合でも4を上限とする。」と記されている。この点について以下政府の認識について質問する。
1 専門家会議委員について
(一) 辻井達一座長は開発局の流域委員会関連では、石狩川、沙流川、釧路川(副委員長)、後志利別川流域懇談会及び整備計画検討委員会を歴任・兼任している。開発局の委員選定理由は、石狩川については「生物、環境について学識経験」、沙流川については「動植物全般の専門家」、後志利別川については「河川に関し学識経験」、釧路川については「植物生態学の専門知識」と幅広い。
 河川関係では他に、「石狩川下流河岸の自然環境の多様性回復について植物の専門家」であるとの理由から石狩川下流河岸検討会委員を、「湿地に関する専門知識」を理由として釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会委員長も務めた。
 分野は河川にとどまらず、道路関係で「各分野の専門知識」を理由に委員長を務めたのは、豊富バイパス道路環境計画第二次検討委員会、高規格道路旭川・紋別自動車道(遠軽町丸瀬布~遠軽町豊里間)事業に係る環境技術検討委員会、高規格道路旭川・紋別自動車道(丸瀬布~遠軽間)環境影響評価技術検討委員会、一般国道三九号北見バイパス(北見市~端野町)事業に係る環境影響評価技術検討委員会、地域高規格道路旭川十勝道路(中富良野~富良野市間)事業に係る環境影響評価技術検討委員会、高規格幹線道路(共和~余市間)環境影響評価技術検討委員会がある。
 他に、北見道路整備における環境保全対策を考える懇談会、高規格幹線道路日高自動車道(厚賀~静内間)道路事業に係る環境影響評価技術検討委員会に選任されている。
 開発局本局の環境に係る情報協議会では「環境に関する有識者」として選任されている。
(1) 一人の人物がこれほど多岐にわたるテーマの委員を務めているのは右記閣議決定の趣旨に反するのではないか。反しないという場合はその根拠を示されたい。
(2) 一人の人物がこれほど多岐にわたるテーマの委員を兼任して、適切な高水準の専門的知見を得られると考えているのか。
(3) 辻井座長の専門領域は何なのか。また開発局がそれぞれ選任理由にあげた各分野についての辻井座長の顕著な業績を論文・著作名で具体的に示されたい。
(4) 多数の審議会等委員を兼任し、国土交通省と縁深い人物が開発局が主催する委員会等の委員として適切な判断ができるとする根拠を示されたい。
(5) 開発局は、各分野の第一人者ではなく事業推進に理解があることを理由として委員を多くの審議会等で兼務させているのではないか。
(二) 井上聰委員は、北海道地方ダム等管理フォローアップ委員会と沙流川流域委員会は「魚類、底生動物に係る専門知識を有するため」、留萌川河川整備懇談会は「魚類の学識経験」を理由に、網走湖水環境改善施策検討委員会は「河川及び湖沼の魚介類に精通している」ことを理由に、十勝川千代田分流堰魚道検討委員会は「学識経験者の立場から意見等をいただくため」選任されている。高規格道路日高自動車道(厚賀~静内間)道路事業に係る環境影響評価技術検討委員会は「各分野の専門知識により選定」されている。
(1) 井上委員の開発局が主催する審議会等の兼任の実態は右記閣議決定の趣旨に反するのではないか。反しないという場合はその根拠を示されたい。
(2) 高規格道路日高自動車道(厚賀~静内間)道路事業では、「各分野の専門知識により選定」と国土交通省資料にあるが、具体的には何の専門領域もしくは生物種の専門的知見を得るために選任したのか。
(3) 開発局がそれぞれ選任理由にあげた各分野についての井上委員の顕著な業績を論文・著作名で具体的に示されたい。
(4) 平成二十年三月十一日付けの答弁書(内閣参質一六九第五九号)では、右記フォローアップ委員会が、沙流川水系二風谷ダムの魚道について「サクラマスが経年的に遡上、降下している」ので「機能していると結論づけている」と述べている。しかしながらこうした所見は、魚道降下は一%にすぎないなどの事実を無視した結論である。このような非科学的なダム肯定論を述べる委員は不適格ではないか。
(5) こうした各種専門家のダム肯定論を根拠に、開発局は「二風谷ダムではサクラマス資源の保全が成功している」としているが、開発局からの受注企業に所属する委員が開発局の好む結論をいっている図式は審議会等の公正さをもとめた右記閣議決定に反するのではないか。
(三) 眞山紘委員は、沙流川流域委員会、平取ダム環境調査検討委員会、十勝川千代田分流堰魚道検討委員会、石狩川下流河岸検討会、地域高規格道路道央圏連絡道路(長沼町~江別市間)に係る環境影響評価技術検討委員会を歴任・兼任している。
(1) 眞山委員の開発局が主催する審議会等の兼任の実態は右記閣議決定の趣旨に反するのではないか。反しないという場合はその根拠を示されたい。
(2) 地域高規格道路事業で眞山氏の専門領域が必要とされた分野は具体的に何か。
(四) 山田正委員は、石狩川、鶴見川、霞ヶ浦、阿賀野川水系といった全国各地の流域(水)委員会(懇談会・有識者会議)委員を兼任している。北海道関係では網走湖水環境改善施策検討委員会、本省関係では河川審議会小委員会委員を歴任している。
(1) 山田委員の国土交通省が主催する審議会等の兼任の実態は右記閣議決定の趣旨に反するのではないか。反しないという場合はその根拠を示されたい。
(2) 国土交通省、地方整備局等から同委員への委託研究、共同研究の実績について、研究名、金額を年度別に示されたい(過去十年分)。
(五) 安田陽一委員への国土交通省、地方整備局等からの委託研究、共同研究の実績について、研究名、金額を年度別に示されたい(過去十年分)。
2 開発局から研究費を受けた流域委員会委員について
 開発局から委託研究費、共同研究費を受けた委員長以下三名の委員は、多くの審議会等委員を兼任・歴任している。清水康行委員長は、天塩川河川整備計画検討委員会、釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会、十勝川千代田実験水路運営準備委員会、網走湖水環境改善施策検討委員会、常呂川土砂流出対策に係る専門委員会を兼任している。
 長澤徹明副委員長は、石狩川流域委員会、宗谷地域農地防災事業検討委員会、国営事業評価専門委員会、北海道開発局総合評価審査委員会、国土交通省独立行政法人評価委員会などを歴任している。
 黒木幹男委員は、北海道地方ダム等管理フォローアップ委員会、後志利別川流域懇談会及び整備計画検討委員会(委員長)、石狩川流域委員会、沙流川流域委員会、石狩川下流河岸検討会、標津川流域懇談会(委員長)の他、国土交通省本省では社会資本整備審議会河川整備基本方針検討小委員会を歴任している。
(一) この三名の委員が多くの審議会等委員を兼任していることは右記閣議決定の趣旨に反するのではないか。反しないという場合はその根拠を示されたい。
(二) 河川関係、ダム事業関係での兼任が目立つが、開発局は委託研究・共同研究を依頼した研究者を兼任する方針があるのか。
(三) 三名への国土交通省・各地方整備局(開発局以外)からの委託研究、共同研究の実績があれば、研究名、金額を年度別に示されたい(過去十年分)。

二 専門家会議委員が所属する企業への開発局からの天下りについて

 前回答弁書(内閣参質一七〇第一二二号)で、専門家会議副座長が所属している株式会社北開水工コンサルタント(以下、「北開水工」という。)が二〇〇三年度から〇七年度の五年間に五十七億円を超える開発局事業を受注していることが明らかになった。
 人事院が毎年国会に報告している「営利企業への就職の承認に関する年次報告」(現在公表されている一九九八年度から二〇〇七年度)によると、開発局から北開水工への再就職は〇二年度二件、〇三年度一件記載されている。
 この記載について、人事院から国会への報告年度別に、氏名、開発局における最終官職と退職日、北開水工における地位、職務内容、就職日を示されたい。

三 公益法人へのいわゆる天下りと事業委託費について

 前々回答弁書(内閣参質一七〇第九四号)で専門家会議座長を含む委員三名が国土交通省等所管の以下の五公益法人に所属しており、これら法人は二〇〇三年度から〇七年度に国土交通省からそれぞれ財団法人日本グラウンドワーク協会は五千二百六十一万円、社団法人北方圏センターは二十五万円、財団法人水利科学研究所は九万円、財団法人河川環境管理財団は四十九億六千八百万円、社団法人河川ポンプ施設技術協会は二億一千万円の事業を受注していることがわかった。
1 前回答弁書では、国土交通省からのいわゆる天下りの実態について、五法人のうち財団法人河川環境管理財団及び社団法人河川ポンプ施設技術協会に国土交通省元河川局長を含む同省幹部七名が再就職している事実が記載された。一方、衆議院調査局による「国家公務員の再就職状況に関する予備的調査についての報告書(平成二十年三月)」には、昨年四月一日現在の公益法人における国家公務員再就職者数が示されており、社団法人河川ポンプ施設技術協会は六名、財団法人河川環境管理財団は四十六名、社団法人北方圏センターは一名となっている。これらのうち国土交通省からの再就職者について、その者の氏名、国土交通省の最終役職、退職日、公益法人への就職日、役職名、常勤非常勤の別を示されたい。
2 財団法人河川環境管理財団などの公益法人は、国土交通省からの事業受注とは別に、同省等から多額の事業委託を受けている。法人別の事業委託費の交付件数、金額を年度ごとに示されたい。また北海道に係る事業については事業目的と金額を合わせて示されたい(省庁別に過去十年分)。

  右質問する。