質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一八号

金融不況の大学生に与える影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十二月四日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   金融不況の大学生に与える影響に関する質問主意書

 今年に入ってからの世界的な金融不況は、日本経済にも多大な影響を与えており、大学においても就職内定の取消しによって非正規雇用労働者が増大するという懸念や、親の失業等で授業料を払えずに退学する学生が現在よりもさらに増大するという懸念がある。
 そもそも、今日の大学の授業料は旧国立大学や公立大学でも年間五〇万円を超え、私立大学においては、授業料だけで平均年八〇万円、施設費など授業料以外の支払い費用を含めると平均で一〇〇万円を超える。大学生の七割以上が私立大学に通っていることから、大学生の子どもを持つ多くの世帯は、この負担により家計を圧迫されており、勉学や課外活動を犠牲にして、授業料や家計の足しにするためにアルバイトをせざるを得ない大学生も多い。景気動向で次の社会を担う若者が大学で学ぶ機会を奪ってしまうことは、長期的に見ると大きな社会的損失である。OECD諸国の中では、国立大学が無償の国も多く、無償でない国でも授業料は大抵日本円で一〇万円以内に抑えられており、景気動向にかかわらず、大学生が勉学に励む条件が整えられていると言える。その背景には、国を挙げて次の社会を担う世代を育てていくという姿勢がある。
 また、「就職氷河期」と呼ばれた一九九〇年代後半に大学を卒業した者の中には、今なお派遣労働など不安定な環境に置かれている者も多く、この世代の雇用と所得の不安定さは少子化の一因ともなっている。
 現在の不況や二〇〇〇年に急速に広まった格差を乗り越えて、日本社会の持続可能な発展を目指すためには、教育環境、特に高等教育の環境整備は必要不可欠である。
 よって以下質問する。

一 政府は我が国の大学生をどのように位置づけているのか。若者が大学で学ぶことは、個々人の私的な行為と考えているのか、あるいは我が国の将来の社会を担う人間に成長するための公共性を持った行為と考えているのか、政府の見解を示されたい。

二 学生が勉学に励む時間を十分に持つことは非常に重要である。一方で、スポーツや文化活動に参加することも人間力形成の一環であり、これを支援・推進することは高等教育行政の課題のひとつと考える。学生がスポーツ・文化活動に取り組むことができる時間や環境の確保についての政府の認識と、またそれに関する政府の役割についての見解を問う。

三 二〇〇六年度の学生生活調査の結果を見ると、昼間部大学生の収入は同年度で約二二〇万円だが、うち親からの仕送りが約七割であり、親が大学生一人当たり年間約一五〇万円を負担している。大学生の子どもが二人、三人といる場合は親に多大な負担がかかることになるため、この高等教育の費用負担は少子化の一因になっているとも考えられる。また、学生本人のアルバイト収入は年平均三三万円程度であり、月で割ると三万円程度であるが、月三万円のアルバイト収入を得るためには三〇~四〇時間程度の労働が必要になると計算できる。つまり、一人の学生が一年間、大学生活を送るためには、親は家計から約一五〇万円を負担し、なおかつ学生本人も月三〇~四〇時間の労働が必要であることを示している。この結果から、学生生活を営む上では、現在の大学生やその親の家計に多大な負担がかかっていると考えることができる。また、こうした費用負担のため、学生は勉学やその他必要な活動にかかわる時間も削減せざるを得なくなっている。政府は、このような大学生及び親の家計に対する負担について、多いと考えているのか、妥当な水準と考えているのか、考えを示されたい。また、大学生が平均して、月三〇~四〇時間の労働を行っていることについても、見解を問う。

四 二〇〇六年度の学生生活調査の結果では、学生の一年間の支出のうち、授業料等大学への納付金が約一〇〇万円と約半分を占めている。一方で、修学費や課外活動費は年一六万円であり、月にすると一万三千円ほどである。勉学のためには教科書等の書籍やパソコンなどの購入が必要であり、課外活動でも様々な経費が必要であることを考えると、月に一万三千円は決して十分な額とは言えないと思われる。学生の経済的負担を減らし、勉学やスポーツ・文化活動を含めた課外活動に費用を回せるように配慮することは、将来社会を支える世代への投資としても必要なことと考えるが、このことについて政府の見解を示されたい。

五 現在、政府は「留学生三〇万人計画」を推し進めている。しかし、留学生を極端に増やす前に、日本人学生への支援を充実することが、学生やその親の負担を軽減するためにも、また日本の将来のためにも必要なことではないのか。このことに対する政府の見解を問う。

  右質問する。