質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一六号

歴史教科書とその検定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十二月四日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   歴史教科書とその検定に関する質問主意書

 歴史教科書をめぐっては、一九八二年に教科書検定を発端として中国、韓国との外交問題に発展した。この問題は「『歴史教科書』に関する宮沢内閣官房長官談話」によって解決が図られ、その後の教科書検定においては近隣諸国条項が定められ、歴史教科書に一定の方向性が定められた。
 しかし、一六八国会の文教科学委員会質問でも指摘したとおり、昨今の教科書検定においては、歴史に関する記述のブレには著しいものがある。
 よって、以下質問する。

一 義務教育諸学校教科用図書検定基準および高等学校教科用図書検定基準には、いわゆる近隣諸国条項があり、近現代史に関しては国際理解と国際協調の見地から配慮を行うように定めている。この条項を含む現行の基準はいずれも一九九九年に定められたものであるが、現政権はこの条項をどのように認識しているのか。またこの条項は堅持していくものと考えるが、いかがか。

二 二〇〇七年三月、二〇〇八年度から使用する高等学校教科用図書について、沖縄戦における集団自決での日本軍の強制・誘導・関与に関する記述の削除を要求する検定意見が公表されたが、この意見は近隣諸国条項の趣旨に反する内容であり、事実、中国・韓国も抗議を行っている。この検定作業と同じ時期に、大阪地裁でいわゆる沖縄ノート裁判が行われているが、この裁判における原告の提訴動機は「本件各書籍や高等学校の歴史教科書(平成一七年度検定)等の公の書物に、集団自決が日本軍の命令により強制されたかのごとく記載されているのを放置できないという点などにあるとされ、集団自決の歴史を正しく伝えていくことが本件訴訟の目的である」(控訴審判決文より)とされる。この裁判と教科用図書検定作業の時期は符合しており、また裁判での原告の要求に合わせるようなかたちで、それまでは出されなかった沖縄戦に関する検定意見が出された。このことに教科書検定に対する重大な疑義を感じざるを得ない。裁判が始まったというだけで検定のモノサシを変えたことは時期尚早ではないか。また高裁までの判決における被告無罪という結論をふまえて、政府は現在どう判断しているのか。

三 国連人権委員会は、本年一〇月、自由権規約に関する最終の対日審査報告書を公表しているが、その二二項では従軍慰安婦の問題を挙げている。その中には、「『慰安婦』問題への言及を含む歴史教科書がほとんどないこと」への懸念と、「この問題に関して生徒と一般の公衆に対して教育しなければならない」という勧告が含まれている。この勧告に従うなら、今後の歴史教育のあり方、教科書検定のあり方を見直す必要があることになる。しかし、二〇〇六年から使用されている中学校用教科書には慰安婦について記述したものが一冊もないなど、慰安婦の問題を扱う教科書は減少している。この減少に対する見解と、今後の政府の対応について問う。

  右質問する。