質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一〇号

蛍光灯水銀の回収及び適正処理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月二十八日

紙   智  子   


       参議院議長 江 田 五 月 殿



   蛍光灯水銀の回収及び適正処理に関する質問主意書

 蛍光灯は一般家庭、事務所、工場などで幅広く使用されており、年間約三億五千六百万本販売されている(日本電球工業会統計二〇〇七年)。
 蛍光灯の発光には水銀が必要であり、水銀フリー蛍光灯の開発や一本当たり水銀使用量の減量がすすんでいるとはいえ、経済性からみても今後も大量の水銀含有蛍光灯が使用され続けることは確実である。蛍光灯に使用する水銀は無機水銀で、一般的にヒトの消化管からは吸収されにくいとされるが、川や海の無機水銀が環境中の微生物によりメチル水銀に変化したものは食物連鎖を通じて魚介類に取り込まれる。このため、使用済み蛍光灯の水銀についても、環境中への放出を極力抑え、回収、リサイクルを徹底することがもとめられる。しかしながらその現状は、水銀処理最大手の野村興産株式会社イトムカ鉱業所(以下、「イトムカ」という。)によると「適正処理されているのは一五%くらい」という水準であり、大部分は環境中に放出されていることが懸念される。
 蛍光灯のガラス部分は全体の九二%を占めるが、特に事業所等で使用されているラピッドスタート形蛍光灯には管内に酸化スズが塗布されていることから使用中に酸化水銀を発生させ、これがリサイクルの大きな障害となっているという指摘もある。
 そこで、人の健康、生活環境を保全する観点から蛍光灯水銀の回収、処理の実態を明らかにするとともに、とりわけ酸化スズを塗布したラピッドスタート形蛍光灯の処理の現状、水銀・ガラスのリサイクルの問題点について、以下、質問する。

一 蛍光灯水銀・ガラスの回収・リサイクルの現状について

 環境省の有害金属対策基礎調査検討会資料(以下、「検討会資料」という。)によると、わが国の一般蛍光ランプ(蛍光灯)の生産量は二〇〇一年から〇五年の五ヵ年平均で三億六千七百四十万本、使用している総水銀量は三千二百二十五キログラムである。この含有量は、わが国の年間水銀需要量の約二三%を占め、水銀含有製品としては水銀柱血圧計の三〇%に次ぐ大きな割合となっている。この処理状況について聞く。
1 使用済み蛍光灯の回収・処理ルートについて、一般家庭用(一般廃棄物)、事業所用(産業廃棄物)の別に説明されたい。また蛍光灯からの水銀除去方法及び蛍光管ガラス、水銀のリサイクル方法について説明されたい。
2 蛍光灯水銀処理業者名とそれぞれ業者ごとの年間水銀処理量を一般廃棄物、産業廃棄物の別に示されたい。
3 蛍光灯の消費量は一般家庭が約六〇%、事務所等が約四〇%とみられている。
 検討会資料では、「蛍光管からの水銀リサイクル量」は「〇・二〇トン~」となっており、これは一般家庭から排出され全国都市清掃会議の回収ルート、もしくは自治体の直接契約で搬入された使用済み蛍光灯がイトムカで処理・回収された一般廃棄物からの水銀量の二〇〇三年度から〇六年度の平均ということである。これに対し、産業廃棄物から処理・回収された水銀量は、「製品からの水銀リサイクル量 一五トン」とされ、「電池、照明器具、計器、無機薬品、医療機器、汚泥、建設機材、吸着材など製品・廃棄物」を合わせた数値となっている。蛍光灯水銀のリサイクル量を適切に把握するために、事業所等の使用済み蛍光灯の処理・回収量についても明確に把握すべきではないか。
 またリサイクルされず、焙焼などの中間処理を経て最終処分場に埋め立てられている水銀量も明確に把握すべきではないか。
4 環境省の公益法人、財団法人日本環境協会エコマーク事務局は「ガラス製品認定基準書」において、「電気ガラス(蛍光ランプ用ガラス管)は、ランプとして水銀をガラス内部に拡散浸透しているため、リサイクルの際、溶融炉に悪影響を及ぼす。また直管の半数はラビットタート対策としてスズ膜が塗布されており、リサイクル時の影響が懸念される。使用済み蛍光灯の九五%は埋立て前に水銀を除去し、埋立て処理している。拡散浸透しているスズ、水銀の除去がリサイクルのカギである」と記述している。
 この基準は、社団法人日本電機工業会の環境技術専門委員長を長とする日本環境協会エコマーク類型・基準制定委員会において、環境省総合環境政策局も関与して決定したものだが、先のイトムカの「適正処理は一五%」の指摘を勘案するならば「九五%は水銀を除去」との記述は実態と異なるのではないか。また政府は、「拡散浸透しているスズ、水銀の除去がリサイクルのカギである」という認識を同様に持っているか。
5 松下電器産業株式会社電材営業本部副参事(当時)は、「日本の場合は…ランプがつきやすくするために、酸化スズというものをガラスの中にやきつけております。これが、ランプ・ツー・ランプができない大きな技術的ハードル」(国連大学ゼロエミッションシンポジウム、二〇〇三年十月二十一日)と講演している。
 政府は、ガラスの中にやきつけた酸化スズが蛍光灯ガラスのリサイクルができない技術的ハードルという認識を同様に持っているか。蛍光灯ガラスのリサイクルができないということは即ち、酸化スズは蛍光灯水銀のリサイクルもできない技術的ハードルなのではないか。

二 ラピッドスタート形蛍光灯(酸化スズ付)のリサイクル障害について

 蛍光灯には形状別に、直管形、環形、コンパクト形、電球形があり、直管形にはランプ点灯の安定器の型によりグロースタート形、ラピッドスタート形、Hf形(インバータ専用)等がある。このうち、酸化スズが管内に塗布されているのは直管形のラピッドスタート形のみである。ラピッドスタート形の二〇〇七年度の出荷数量は五千百九十七万本、直管形の約二六%、蛍光灯全体の約一五%を占める。
 酸化スズを塗布したラピッドスタート形蛍光灯は使用するにつれ、管内に多数の黒点(アバタ)が生じる。これは一九八三年度照明学会全国大会講演論文集で松下電工社員が指摘している「ラピッドスタート形蛍光ランプのアバタ現象」というもので、他のタイプの蛍光灯にはない現象である。
 ラピッドスタート形はグローランプの保守が不要なため、事務所や工場、店舗などの設備照明として広く採用されている。つまり、アバタ現象のあらわれた使用済みラピッドスタート形蛍光灯のほとんどは産業廃棄物となる。
1 管内に酸化スズが塗布されているラピッドスタート形の過去五ヵ年平均の生産量と一般蛍光灯総生産量に占める割合、含有水銀量を示されたい。
 産業廃棄物の使用済み蛍光灯は水銀が除去されていない懸念があるが、酸化スズが塗布されたラピッドスタート形のうち、実際の水銀リサイクル量、最終処分場で埋め立てられた量はどれくらいか。政府は、明確に把握する必要があるのではないか。
2 特許庁の公開特許公報A(昭五五-三一一七)(一九八〇年一月十日公開)には、松下電子工業株式会社社員の発明として、「ガラス管内面に起動補助体としての透明導電皮膜を設けてなる蛍光ランプに関するもの」がある。これには、「この種の蛍光ランプは、起動特性がすぐれている反面、長期点灯中に管内面に黒褐色の斑点を生じ」とある。さらに、「ガラス管の内面に酸化スズなどの金属酸化物より成る透明導電皮膜を形成し、その上にけい光体を塗布する構造である。…微放電の繰返しにより水銀の酸化が促進されると共にけい光体が変色し、いわゆる黒褐色の斑点に至る」と説明している。
 そこで政府は、ラピッドスタート形の酸化スズを塗布した蛍光灯が使用するにつれ、酸化水銀のアバタが生じる事実を認めるか。
 またこのアバタが水銀・ガラスの回収・リサイクルの障害だという認識を持っているか。
3 日本電球工業会及びパナソニック株式会社は、ラピッドスタート形蛍光灯が使用するに伴い酸化水銀であるアバタが生じることを確認しているか、政府は承知しているか。
4 このアバタは蛍光灯の継続使用により、酸化水銀が生成され管内にやきつくものである。だからこそ、洗浄によっても除去できず水銀の回収やガラスリサイクルできない原因となっている。このアバタの付いた使用済み蛍光灯は産業廃棄物として、イトムカや他の処理業者に持ち込まれているとみられるが、イトムカ等の水銀処理業者において、このアバタは水洗浄、空気洗浄などの方法により完全に除去しているか、政府は承知しているか。

三 北海道庁によるイトムカへの立入検査について

 イトムカにおける蛍光灯水銀の不適正処理の指摘を受け、今年六月十六日、北海道庁の廃棄物担当者がイトムカに立入検査を実施したと聞く。
1 立入検査を行った人数、所要時間、検査内容、立入検査した場所、工程など政府が道から把握した内容をすべて説明されたい。
2 北海道庁は、立入検査の際、「スポット黒化」ではない前記二が示す酸化水銀のアバタが付着した使用済み蛍光灯を確認したか。また酸化水銀の付着した使用済み蛍光灯からの水銀回収工程を現認したか、アバタの付いた使用済み蛍光灯が水洗浄工程に入れられ、洗い流され、工程を終了してきれいなガラスカレットとなって出てくる状況を現認したか。それぞれの質問について政府の承知しているところを説明されたい。承知していない場合、調査するなどして、答弁されたい。
3 政府は、イトムカでは産業廃棄物である酸化水銀のアバタ付きのものを含む、すべての使用済み蛍光灯から水銀が回収・除去され残滓が埋立て処理され、人の健康と生活環境の保全がされていることを、国民に対し完全に保証できるか。

  右質問する。