質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇二号

医薬品の販売体制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月二十五日

又市 征治   


       参議院議長 江田 五月 殿



   医薬品の販売体制に関する質問主意書

 新・薬事法による医薬品の販売体制が開始されるのを前にして、医薬品を利用する国民の安心・安全を確保する立場から、インターネットによる医薬品販売の可否について、及び医薬品配置販売業従事者への「一定水準の講習等」について以下質問する。

一 インターネットによる医薬品販売について

1 平成一八年三月に国会に提出された、一般用医薬品の販売制度を見直す薬事法改正案の参議院・衆議院での質疑の際には対面販売の必要性・重要性が指摘され、第一類医薬品、第二類医薬品をインターネット販売や通信販売に開放することについては、否定的な意見が相次ぎ、更に参考人質疑においても、反対の意見があったと承知しているが、インターネットによる医薬品販売の在り方に対する政府の見解を示されたい。
2 インターネットによる販売解禁を求める側は「省令案での第三類医薬品のみのインターネット販売では、国民の利便性を損なう。第一、二類医薬品も販売できるように」と猛烈に規制緩和を働きかけており、これに反対する薬剤師会等薬業団体、薬害被害者団体、更に厚生労働省と対立していると聞いているが事実か。
3 医薬品の販売時には販売者側からの医薬品に関する「適切な情報提供」が行われて、購入者に十分理解してもらうことが重要である。
 また、購入者の疑問や要望を受けたときには、「適切な相談応需」が行われることが必要である。
 情報量に関していえば、医薬品の適切な選択と適正な使用のためには、情報量が多ければよいというものではなくて、購入者にとって必要な情報を効率よく提供する必要がある。
 他方、薬の正しい選択のためには販売専門家の側も、医療行為に抵触しない範囲で、購入者から情報収集を行う、例えば購入者の状況、つまり言葉にならない購入者の情報収集をすることが必要である。
 これらを確実に行うには、購入者と専門家がその場で直接やり取りができる「対面販売」が不可欠である。しかしオンラインドラッグ協会へのヒアリングでは、オンラインで相談があったタイミングではなく二四時間以内に返事をしたり翌日にまわってしまうこともある、との答えもあったという。対面販売によらないゆえの相談・応答・服用の間のタイムラグは、薬害につながるおそれがあると考えるが、政府の見解を示されたい。
 本来、専門家による情報提供は、マニュアル通り又は機械的に情報を提示することではなく、購入者の状況に即して適切に必要な情報を提供することであろう。
 こうした直接やり取りができる「対面販売」と同等の対応が、遠隔地のコンピュータディスプレイ上において可能であると考えるのか、政府の見解を示されたい。
4 一般的なインターネット商品の消費者ニーズは、時間的に制限のある購入者とか、地理的に制限のある購入者、更には、店頭での購入をためらう商品に関しての購入者であり、「安い」、「配達してくれる」、「ポイントがたまる」等がその利点だと公表されていて、安全性が問題にされていない。
 別の調査では、ネット利用者でも「医薬品はネットでは買わない」とか、「規制すべき」と考えている人が多いという結果が出ている。
 解禁論者は、インターネット通販業者のみが地理的に不便な地域へのサービスを提供できるがごとく標榜しているが、過疎などの地域へのサービスは既に置き薬業者・配置販売業者が行っているのであり、そこでは対面販売が行われている。
 消費者ニーズに応じることも必要だが、医薬品という健康・安全に直結した特別な商品にあっては、専門家による対面販売によって、健康保持、薬害の防止、安心と安全を守ることが国民にとって大切であり、対面販売の重要性を啓発すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 医薬品配置販売業者の「一定水準の講習等」について

 平成二〇年一月三一日付けで、既存医薬品配置販売業者に「一定水準の講習等」の実施を努力義務化する厚生労働省医薬食品局長通知がでた。法施行後直ちに講習等を実施しなければならない各自治体並びに事業者はその発表内容を注視している。
1 「一定水準の講習等」の厚生労働省素案では、講習等を実施する根拠は、旧法第三四条を受けての改正法附則第一二条による、既存配置業者による配置員の資質向上であるといわれ、その際の講習等の実施者とは既存配置販売業者と考えられている。しかし、既存配置販売業者の多くは薬剤師や登録販売者ではなく、これから必要とされる専門的な技術または知識を従事者に客観性、透明性を持って伝えることは難しく、専ら販売テクニックの伝授にのみに終始することを否定できず、講習等の実施者になりえないのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 厚生労働省の素案と言われている通知のままでは、利害関係者が講習を行う可能性が生じ、自社製品及び取り扱い品目に対する重要情報(過去の薬害)の過小評価や客観性を欠いた伝達、更に販売テクニック等の講習が行われる可能性を否定できない。
 既往の類似分野をみると、医療機器販売業における講習については、「責任技術者講習等を受ける者との取引関係その他の利害関係の影響を受けないこと」との規定の下に実施されている(薬事法施行規則第九一条第三項第三号に規定する講習等を行う者の登録に関する省令第二条第一項第五号)。
 そこで、これを参考にし、本件講習等についても、「講習等の実施者は、講習等の対象者との取引関係その他の利害関係の影響を受けないこと」との規定を追加してはどうかと考えるが、政府の見解を示されたい。
3 既存配置販売業者が第二類医薬品を扱うことについて、関係者の間で問題視されてきた。しかし、消費者にとって必要な(第二類を含めた)情報を提供させるためには、客観性、透明性を持たせた講習を全ての既存配置販売業者及びその従事者に確実に受けさせることが重要ではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
4 現状において配置販売業者の団体は、既存配置販売業者及び新配置販売業者を分離する予定はないとしている。個々人による講習は事実上困難であるから、「配置販売業者の団体」が主催等をして個々人を受講させ、客観性、透明性を確保する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。