質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇一号

発電用ダムの国への報告データ改竄・隠蔽に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十一月二十五日

又市 征治   


       参議院議長 江田 五月 殿



   発電用ダムの国への報告データ改竄・隠蔽に関する再質問主意書

 中国電力俣野川発電所土用ダムの「国への報告データ」が五年間にわたり改竄・隠蔽されていたこと、その過程で公益通報者への報復、反対意見書の抹殺があったこと、そして虚偽のデータで合格した三号、四号機の運転を継続していることについて、私は一〇月二三日に質問主意書(第一七〇回国会質問第六二号)を提出したところ、同三一日に答弁書(内閣参質一七〇第六二号。以下「前回答弁書」という。)を得た。
 反社会的な改竄・隠蔽工作はダム関連住民の安全と国民の知る権利を蹂躙し、公益通報者の保護に反し、また政府が予定している消費者庁設立の理念とも相容れない。
 前回答弁書はなお重要な点で疑義があるので、再度以下の通り質問する。

一 「一についての答弁」について

1 国家公務員法違反について
 「国土交通省が中国電力本社を訪問して、内部告発について情報提供した行為は、『国家公務員法』百条(守秘義務)違反と考えているが、政府としての見解を明らかにされたい」旨の質問に対し、答弁がないが、なぜ答弁書から外したのか、その理由について説明願いたい。
 国土交通省河川局の池田課長補佐は「当時中国地方整備局長だった甲村現河川局長は中国電力へ担当官が訪問して情報提供し、調査を申し入れたことは承知していた」旨はっきりと述べている(「国土交通省は『内部告発者』をこうして裏切った!」、『ウィークリープレイボーイ』(平成二〇年七月七日号)、集英社)。
 このことは、甲村現河川局長を含め当時の関係者全てが、国家公務員法に違反していたことになる。取材に対し内閣府国民生活局の近藤正堂政策調査員は、「公務員として知りえた秘密を外に出すこと自体、守秘義務違反(国家公務員法百条違反)になると思います」とはっきり答えている。よって明らかに、「国家公務員法」百条(守秘義務)違反と考えるが、政府としての見解を説明願いたい。
2 公益通報者保護法違反について
 前回答弁書で国土交通省は「公益通報者保護法」に反しないと言っているが、前出の近藤政策調査員は、「利益が相反する立場の当事者に、これだけ安易に情報が流れてしまうものなのか」、「『自分たちは誰が告発したのかわからない形で情報を出した』と言ったところで、これが端緒となって告発者が突きとめられてしまえば、結果は一緒ですよ」と述べている。国土交通省の言い訳ではなく、政府としての見解を明らかにされたい。このことは政府が提出している「消費者庁」法案の根幹にかかわる問題である。もし国土交通省と同じ考えであるというのであればその理由も併せて明らかにされたい。

二 「三についての答弁」について

 前回答弁書で国土交通省及び経済産業省は「意見書(反論書)」について、ダムの安全性に関する新たな情報を含むものでなく、法律に基づく処分等に影響を与えるものでないと判断した旨述べている。ところが経済産業大臣から中国電力社長にあてた要求文書「電気事業法第一〇六条第三項の規定に基づく報告徴収について」(平成一八・一一・〇一原第四号)の中では、中電技術コンサルタントとの議事録、メール等のやりとりの記録等全てを国に提出するよう命じている。これら提出物の中に当時鳥取支店の担当マネージャーの書いた議事録が提出されているはずであり、これら議事録を見れば、中国電力が提出した「調査報告書」は捏造されたものであることがわかるはずである。
 両省が無視した「意見書(反論書)」にはまさにこのことが指摘されている。この「調査報告書」は明らかに国へ偽造した文書を提出したことになり、公文書偽造あるいは、私文書偽造になると考えるが、前回答弁書では真面目に答えていない。政府の見解を改めて問う。

三 「五についての答弁」について

 前回答弁書で、経済産業省としては、土用ダムの安全性について厳格に確認した結果、土用ダムが電気事業法に基づく技術基準に適合するように維持されており運転の継続に支障がないことを確認している旨答弁しているが、前回答弁書の「七について」では、「国土交通省中国地方整備局の担当者が、目視による土用ダムの堤体の外観調査等を行ったものであり、当該調査に係る詳細な報告書は存在しない」と答弁しているのみである。経済産業省は国土交通省の「目視」による結果のみに依拠しているのか、それとも国土交通省とは別に検査したのか、別に検査したのであれば詳細報告書を開示されたい。このようないい加減な検査に基づくかぎり、「改竄データをもとに実施した『使用前検査』をやり直す必要がない」ということにはならないし、住民のダムの安全性に対する不安を払拭することにはならないと考えるが、政府の見解を説明されたい。
 また経済産業省は、「電気事業法に基づき中国電力が定めた保安規程の変更命令や中国電力本社への立入検査を行うなど、再発防止の観点から指導監督を行った」と答弁しているが、そもそも「保安規程」は発電所が使用前検査に合格して、運転に入ってからの規制を定めたものであるのに対し、使用前検査は運転開始前の性能検査であるから、両者は性格も時点も違う。さらに当方での調査では、経済産業省が中国電力本社への立入検査を行ったという情報はない。何時、経済産業省の誰が中国電力本社への立入検査を行ったのか明らかにされたい。

四 本質問の主旨を真摯に受け止め、直ちに俣野川三号機、四号機を停止して、「使用前検査」をやり直すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。