質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六九号

事業評価制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十月二十三日

川田 龍平   


       参議院議長 江田 五月 殿



   事業評価制度に関する質問主意書

 私が、平成十九年十二月に行った仙台市地下鉄東西線の建設への補助金支出に関する質問に対する答弁書で、公共事業の評価制度に関する情報が、一部開示された。この制度についての最も基本的な文書ともいえる「公共事業評価の基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)にあるように、公共事業の効率性とその実施過程の透明性の向上は、今後一層急務となるであろう。
 しかし、この制度の内容について調べたところ、少なからぬ問題点が浮かび上がってきた。「事前評価」「再評価」「事後評価」と三段階ある評価過程の中で、今回は「再評価」の領域を取り上げ、事業分野としては、鉄道建設事業を例に挙げて、以下質問する。

一 再評価の主体について

 「国土交通省所管公共事業の再評価実施要領」(以下「再評価実施要領」という。)によれば、再評価を実施する主体は、補助事業等においては「地方公共団体等、地方公社又は民間事業者等」とある(三頁)。また、評価主体の長は、再評価の実施に当たり、学識経験者等の第三者から構成される「事業評価監視委員会」を設置するものとする、とある(八頁)。したがって、例えば政令指定都市で行われる補助事業の場合、再評価の主体は、事業主体である地方公共団体であり、その再評価をチェックする「事業評価監視委員会」もまた、その設置すなわち人選は事業主体である地方公共団体が行う、という理解でよいか。

二 評価機関の独立性について

 すでに述べたように、「基本的考え方」によれば、公共事業の効率性および実施過程の透明性の一層の向上を図るために、事業評価は行われる(一頁)。したがって、前記のように、事業主体が再評価も行い、そのチェック機関の設置も行う、という評価制度のあり方は、事業の効率性、とりわけ透明性の向上という目的に反している。「基本的考え方」の目的を達成するためには、事業主体から完全に独立した評価機関とチェック機関が必要と考えないか。考えないのであれば、その理由を明らかにされたい。

三 公共事業評価における「公開」の原則について

 「基本的考え方」では、意思決定過程の透明性や国民へのアカウンタビリティを果たすことが謳われている(二頁)。これに基づくなら、再評価の作業においても、公開の原則が守られねばならない。「再評価実施要領」では、再評価作業の際の諮問機関として設置が義務付けられている「事業評価監視委員会」の場合は、その審議と議事録の公開が規定されているが(九頁)、再評価の作業自体については、何も規定されていない。再評価主体が行う作業も含めて、審議の公開と議事録および資料の公開を定めるべきと考えないか。考えないのであれば、その理由を明らかにされたい。

四 「残事業の投資効率性」の概念について

 事業評価制度が整備される過程で費用便益分析における共通認識について定めた「公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針」(以下「技術指針」という。)では、再評価の際に事業の継続か中止かを判断する材料として、「残事業の投資効率性」という概念が導入され、「事業全体の投資効率性」は、あくまで事業の透明性確保、説明責任の達成を図るためのものとされている(三頁)。何ゆえ「事業全体」ではなく「残事業」が、事業継続か中止かの第一の判断基準となるのか、その根拠を簡潔に示し、またこの根拠について言及している文書があれば、明らかにされたい。

五 「時間価値」算定の方法について

 「技術指針」では、時間価値に関して、主要な算定法が、従来の「所得接近法」から「選好接近法」に変更されている(十二頁)。これに基づいて、例えば鉄道建設事業の分野でも、「鉄道プロジェクトの費用対効果分析マニュアル99」から「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル2005」(以下「マニュアル2005」という。)への改訂の際に、同様の変更がなされている。この変更の根拠を簡潔に示し、またその根拠について言及している文書があれば、明らかにされたい。

六 国土交通省所管公共事業の「再評価」における費用対効果分析について

 「再評価実施要領」によると、「事業採択時において実施した費用対効果分析の要因に変化が見られない場合で、かつ、事業規模に比して費用対効果分析に要する費用が著しく大きい等費用対効果分析を実施することが効率的でないと判断できる場合にあっては、再評価実施主体は、費用対効果分析を実施しないことができるものとする」(七頁)とある。事業採択時に実施した費用対効果分析の要因に変化があるか否か、および費用対効果分析が効率的ではなくなる事業規模を判断するのは、いかなる機関か。国すなわち国土交通省か、再評価の主体か、それとも第三者機関か。
 また、このような例外規定は、費用便益分析に関して「各事業分野において共通的に考慮すべき事項について定めたものである」(一頁)とされている「技術指針」には存在しないし、「マニュアル2005」にも存在しない。更には、「すべての公共事業評価において尊重すべき事項」(一頁)を示す「基本的考え方」にも、存在しない。逆に、これらの文書において、再評価の際には投資効率性を評価することが求められているにも拘わらず、これに例外規定を置くことは妥当性を欠いている。妥当と考えるのであれば、いかなる文書でその根拠が示されているのか明らかにされたい。

  右質問する。