質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六二号

発電用ダムの国への報告データ改竄・隠蔽に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年十月二十三日

又市 征治   


       参議院議長 江田 五月 殿



   発電用ダムの国への報告データ改竄・隠蔽に関する質問主意書

 中国電力俣野川発電所土用ダムの「国への報告データ」が五年間にわたり改竄され、内部告発されるまで当時の社長らの指示により隠蔽されていた。このことが新聞報道された後も、隠蔽した電力会社経営者および、公務員法違反までして、隠蔽を指示した国土交通省幹部に対し、住民が納得するような処分は、国と電力会社の「談合」により、いまだ行われていない。
 更にこの虚偽のデータを使用して合格した俣野川発電所三号、四号機もそのまま運転を続行している。
 こうした反社会的な改竄・隠蔽工作は住民の安全と国民の知る権利を蹂躙し、また公益通報者の保護に反し、政府が予定している消費者庁設立の理念にも反する重大な行為である。
 よって、以下質問する。

一 内部告発のもみ消し工作について

 平成十八年十月三十一日、朝日新聞に、中国電力俣野川発電所土用ダムのデータの改竄が行われ、事実発覚後も、山下隆現社長、高須司登前会長の指示により隠蔽が行われていたという内容の告発記事が出た。
 国土交通省は、同様の内部告発を受けていたが、これを公に取り上げるのではなく逆に、当時の甲村謙友中国地方整備局長(現在本省河川局長)了解のもと、新聞報道の一週間前の十月二十三日に担当官が、被告発者たる中国電力本社を訪問し、内部告発内容について詳しく紹介し、隠蔽のため対策を相談した。しかも、「国土交通省としても、告発内容がマスコミにばら撒かれては困るので、貴社に事実確認をお願いしたい」とまで言っている。
 この行為は、守秘義務を定めた「国家公務員法」百条違反行為であり、さらには「公益通報者保護法」にも反する行為だと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 責任回避のため、調査報告書の訂正再提出を要求したことについて

 中国電力は平成十一年一月八日、中国電力山下隆現社長が「公にしては困る」と発言し、その後同月二十五日の会議で、高須司登前会長も、これを追認し、改竄の事実を隠蔽することになった。その後、中国電力は、子会社に天下りしていた旧建設省OBの仲介で、同月二十八日、旧建設省日野川工事事務所副所長に、土用ダムのデータの改竄について相談したところ、同副所長は、「今回のことは聞かなかったものとする」と発言している。この発言を受け最近まで事実の隠蔽が続けられていた。
 その後、内部告発により、この隠蔽の事実が公になると、中国電力は副社長を本部長として緊急対策本部を立ち上げ、「調査報告書」を作成し提出した。しかしその報告書には右の副所長の発言がそのまま載せられていたため、立腹した中国地方整備局は、調査のやり直しを命じた。このため中国電力は天下りした前出OBを通じて中国地方整備局と調整し、問題の副所長の発言を訂正し、再度、国へ「調査報告書」を提出した。
 この行為は国土交通省の「談合」・「隠蔽」体質そのものと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 前社長の「意見書(反論書)」への国土交通省および経済産業省の対応拒否について

 しかしこの再提出された「調査報告書」について、中国電力白倉茂生前社長が、「虚偽の内容が多い」として平成十八年十二月六日付で中国地方整備局と経済産業省原子力安全保安院に代理人弁護士を通じて「意見書(反論書)」を提出した。ところが中国地方整備局は、副所長のこと以外は、社内のことだとして、受け取りを拒否したので、代理人は担当官の机の上に置いて帰った。一方、郵送した経済産業省からは未だ全く回答はない。
 両省は、なぜ、前社長が提出した「意見書(反論書)」を真摯に受け止めて吟味しなかったのか、その理由を明らかにされたい。

四 社員への人権無視の尋問行為と、国による無視について

 国への「調査報告書」を作成するにあたり、中国電力は東京の弁護士事務所に依頼して、内部告発者だと目星を付けた社員の取り調べを行わせた。この取り調べで、「朝日新聞にどのような資料が提供されたか覚えはないか」、「朝日新聞から、何時頃、どのような内容の取材を受けたか」、「あなたが保管していた土用ダム問題の議事録メモを誰かに情報提供した覚えはないか」と言う尋問が三時間にわたって繰り返されている。
 さらに、この社員は、中国電力の人事担当役員に、「これ以上しゃべると、どうなるか分からないぞ」と云った類いの脅しまでかけられ、こうした社内外の度重なる人権と尊厳を踏みにじった取り調べ・脅しのため、恐怖心で、精神的に参り、体調を崩して入院していた。退院後も取調べがトラウマとなり、その話題になると今でも恐怖心を感じるという。
 結局、当人は関係会社へ出向させられた。こうした取り調べ状況を国(国土交通省、経済産業省)にも伝えたが、放置されたままである。
 中国電力の関係役員達と東京の弁護士事務所の行為は明らかに、「人権侵害」であり、「公益通報者保護法」違反と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 改竄データを使用して発電所運転許可を与え、発覚後も運転継続を黙認している事について

 中国電力の俣野川発電所三号機、四号機は、それぞれの発電所が建設された当時の多田社長、高須社長が、当時の通商産業大臣に対して、使用前検査を申請し、検査合格後、運転許可を得ている。
 その後、この重要な使用前検査が、改竄された土用ダムのデータを使用して検査合格していることが分かった。本来、データ改竄・隠蔽が発覚したら直ちに、使用前検査のやり直しを行うべきであるのに、未だ、そのまま運転を続けている。
 経済産業省はなぜ、そのまま運転を続けさせているのか、もし国土交通省がわずか一日の現場確認で安全だと言ったことを、そのまま鵜呑みにしていたとしたら、それこそ無責任である。なぜ、使用検査をやり直さなかったのか、明らかされたい。

六 甘利大臣(当時)・経済産業省と中国電力幹部との関係について

 当時の甘利明経済産業大臣は、平成十六年から平成十七年までの二年間、中国電力高須前会長の強い後援を得て、広島市のリーガロイヤルホテルで「甘利明君を励ます会」を開催していた。
 このこと自体、職務権限と政治資金に絡む重大な疑惑である。
 しかも改竄・隠蔽事件が新聞報道された以降、当時の甘利大臣または、経済産業省の幹部が、中国電力の高須前会長、福田現会長、山下現社長、その他の幹部と面談したことはないか。面談していたとしたら、事件関与の疑念を持たれないためにも、その内容について明らかにされたい。

七 報道当日に行った、ダム安全性確認のための「緊急調査」の信憑性について

 平成十八年十月三十一日、朝日新聞が告発記事を報道した日に、中国地方整備局は担当官を土用ダムに派遣して緊急調査を行い「ひび・水漏れはなかった」と安全宣言をしているが、このダムにたどり着くだけでも半日かかるのに、一日だけの日帰り検査でどんな検査をしたのか疑問が残る。詳細な報告書を公表されたい。

  右質問する。