質問主意書

第170回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二二号

米印原子力協定へのわが国の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年九月二十九日

藤末 健三   


       参議院議長 江田 五月 殿



   米印原子力協定へのわが国の対応に関する質問主意書

 米印原子力協定が、わが国も所属する国際組織である原子力供給国グループ(以下、「NSG」という。)において承認されたが、一般的に、アメリカとインドの原子力協定は、核拡散防止条約(NPT)体制を補強するのではなく核兵器の拡散を拡大しかねないと指摘されている。インドは、NPTに未加盟であり、独自に核兵器の開発・実験を行い、核兵器を保有している。インドの原子炉二十二基のうち、民生用の十四の原子炉については国際原子力機関(IAEA)と保障措置協定を結び査察対象となっているが、軍事用については査察対象となっていない。
 そもそもNSGは一九七四年のインドの核実験を契機として設立された。今回の米印原子力協定の承認は、NPT体制の悪い前例になる可能性が高く、NPTの不公平性への批判を招くものであり、北朝鮮やイランの核開発への対応に大きな影響を及ぼすものであると考えられる。
 これを踏まえ、米印原子力協定へのわが国の対応に関して、以下質問する。

一 米印原子力協定に対するわが国の見解を示されたい。真に核拡散防止に貢献し、核拡散防止体制を強化できるのか、わが国として何ができるのかを明確にされたい。

二 このような行動をとっているインドに対し、何らの核軍縮義務や核査察義務を課さずに、NSGの輸出管理規制の例外扱いを認めることはNPT体制の瓦解につながる恐れがあるのではないか。世界で唯一の被爆国であるわが国としてはどのような対応を行う考えであるのかを明確に示されたい。

三 NSGの国際会議においては、濃縮ウラン燃料や燃料再処理技術の輸出禁止、核実験再開後の特例対応の廃止など、インドに対し、厳しい対応を求める意見が数多くあったと聞くが、同国際会議におけるわが国の意見表明はどうであったのかを示されたい。また、このような国民の関心が高い事項に関する国際会議については、その議事録を和訳して国民に示す必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 わが国は、世界で唯一の被爆国としてインドに対し、NPT加盟や、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名及び批准を求めてきた。わが国は、引き続きこの立場を維持し、NSGにおける米印原子力協定の例外扱いは認めるべきではなく、他国が例外扱いを認めるとしても核兵器開発を完全に抑制する方策を主張すべきと考えるが、政府の考えはいかがか。

五 わが国はNPT体制の強化に貢献すべきと考えるが、政府としては今後NPT体制の強化についてどのような取組を進めていく考えなのか。具体的な貢献策があれば、その予算と併せ示されたい。

六 次回のNPT再検討会議は二〇一〇年に開かれる。前回二〇〇五年の会議は完全に決裂しており、NPTの機能は大幅に低下した。次回は今回の米印原子力協定への対応も含めた対応方針が必要となるが、我が国はどのような方針で準備を行うのかを示されたい。今から対応を図らなければNPTにおけるわが国のイニシアティブは確保できず、また、NPTの強化も困難であると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。