質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第一八一号

内閣参質一六九第一八一号
  平成二十年六月二十七日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員辻泰弘君提出政府管掌健康保険に対する国庫補助額の特例等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員辻泰弘君提出政府管掌健康保険に対する国庫補助額の特例等に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの平成二十年度における政府等が管掌する健康保険の事業に係る国庫補助額の特例及び健康保険組合等による支援の特例措置等に関する法律案(以下「特例支援法案」という。)に基づく国庫補助額の特例及び政府又は全国健康保険協会が管掌する健康保険(以下「政府管掌健康保険等」という。)の事業を支援するための特例措置(以下「特例措置」と総称する。)を講ずることとしたのは、当該事業の運営の安定等を図ることが重要であること及び平成二十年度における国の財政収支の状況にかんがみ、同年度の医療保険制度の安定的な運営及び国の適切な財政運営に資するためである。

二について

 お尋ねの医療保険の一元化については、まず、平成十八年の医療保険制度改革の基本的な方向を示した「健康保険法等の一部を改正する法律附則第二条第二項の規定に基づく基本方針」(平成十五年三月二十八日閣議決定)が決定されたが、その中で「保険者の自立性・自主性を尊重した上で、医療保険制度を通じた給付の平等、負担の公平を図り、医療保険制度の一元化を目指す」こととされた。その後、当該基本方針を踏まえ、決定された「医療制度改革大綱」(平成十七年十二月一日政府・与党医療改革協議会決定)において、「都道府県単位を軸とする保険者の再編・統合を進め、保険財政の基盤の安定を図り、医療保険制度の一元化を目指す」こととされたところであり、当該大綱に従って医療制度改革を進めてきたところである。また、政府として、御指摘の「今次の特例措置は医療保険制度の一元化に向けた重要なステップになる」との考えを示したことはなく、現時点においてもそのように考えていない。

三から六までについて

 お尋ねの助け合いとは、特例支援健康保険組合等(特例支援法案第四条第四項に規定する特例支援健康保険組合等をいう。以下同じ。)が被用者に関する医療保険のセーフティネットの機能を有している政府管掌健康保険等の事業を支援することを意味しており、特例措置によって、政府管掌健康保険等は、特例支援健康保険組合等から徴収した千億円の額の特例支援金が特例交付金として交付されることにより、その安定的な運営が図られることとなる。また、我が国の医療保険制度においては、被用者保険の対象とならない者を地域保険である国民健康保険の対象とすることにより国民皆保険が実現されているが、被用者に関しては、政府管掌健康保険等が、健康保険組合が解散する場合においては当該健康保険組合の権利義務を承継すること等を通じ、被用者に関する医療保険のセーフティネットとしての役割・機能を果たしている。したがって、政府管掌健康保険等の安定的な運営の確保が図られることは、我が国の医療保険制度全体の安定すなわち国民皆保険の維持につながるものであり、助けられるのは国だけであるとの御指摘は当たらないものと考えている。

七について

 お尋ねの厚生労働大臣の発言については、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二○○六」(平成十八年七月七日閣議決定)に則った社会保障分野の歳出改革を進めていく上で、被用者保険間の財政調整を前提に政府管掌健康保険等の事業に対する国庫補助を削減することの検討を行っていたところ、関係団体から筋が悪い旨の御意見等があったことを踏まえ、厳しい状況に直面しながらの選択であることを申し上げた趣旨と承知している。また、特例措置を導入することとした理由については、一についてで述べたとおりである。

八について

 お尋ねについては、特例措置に係る協議は広範にわたる関係者間で継続的に行われてきたため、すべてについて網羅的にお答えすることは困難であるが、主なものとして、健康保険組合について、昨年十二月十二日に、厚生労働省において、厚生労働大臣から健康保険組合連合会会長に対して特例措置の内容等を説明し御理解を得たほか、共済組合等を所管する関係各省から共済組合等に対して説明し御理解を得たものである。なお、特例措置の内容等を御理解いただくに際し、平成二十年度単年度限りの措置とすべきこと等を条件とすることといった健康保険組合連合会からの御意見等をいただいたところである。

九について

 お尋ねの三者に御負担いただく額の内容と規模については、健康保険組合においては、特例支援金として総額七百五十億円の額を御負担いただき、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会及び日本私立学校振興・共済事業団においては、特例支援金として総額二百五十億円の額を御負担いただき、国民健康保険組合においては、所得水準の比較的高い国民健康保険組合の補助金を減額することにより、国庫補助額を総額三十八億円程度減額するものである。また、健康保険組合の被保険者一人当たりの影響額については、特例支援金を御負担いただく健康保険組合の要件が定められていないことからお示しすることは困難であるが、国家公務員共済組合連合会及び地方公務員共済組合連合会を組織する共済組合の組合員並びに私立学校教職員共済制度の加入者一人当たりの平均影響額又は国民健康保険組合(国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令(昭和三十四年政令第四十一号)第五条に規定する厚生労働大臣が定める組合及び国庫補助額が減額されない国民健康保険組合を除く。)の被保険者一人当たりの平均影響額については、平成十八年度末の当該共済組合の組合員数及び当該制度の加入者数の合計数又は当該被保険者数を用いて機械的に試算すると、それぞれ年間五千七百円程度又は年間四千五百円程度となる。

十について

 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二○○六」においては、優先課題の一つとして財政健全化が挙げられており、後世代に負担を先送りする構造をなるべく早く是正することなどを改革の基本的立場としている。一方、特例措置は、医療保険制度の安定的な運営及び国の適切な財政運営に資するために講ずることとしたものであり、後世代への負担の先送りをしないようにする観点などから、当該基本方針と整合的な措置であると考えている。

十一について

 特例支援法案は、平成二十年度における国庫補助額の特例及び政府管掌健康保険等の事業を支援するための特例措置を規定するものであり、平成二十一年度以降については、特例支援法案附則第二条において、「平成二十一年度以降の保険者の費用負担の在り方について速やかに検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」としており、これが政府の方針である。

十二について

 一についてで述べたとおり、特例措置を講ずることは必要であると考えており、特例支援法案については、国会に対し、引き続き速やかな御審議及び御可決をお願いしてまいりたい。