質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七三号

内閣参質一六九第一七三号
  平成二十年七月一日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出サンルダム建設問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出サンルダム建設問題に関する質問に対する答弁書

一の1について

 第四回答弁書(平成二十年四月二十五日内閣参質一六九第一一〇号)一の1についてで述べたとおり、河川整備に当たっては、治水上の安全性を確保するため、水害の形態及び氾濫域の状況のみならず、本支川及び上下流のバランス等を考慮し、水系全体として適切にバランスのとれたものとなるよう実施することが重要であると認識している。
 また、第二回答弁書(平成二十年二月五日内閣参質一六九第一一号)一の1の(一)についてで述べたとおり、天塩川水系河川整備計画(以下「整備計画」という。)に記載された治水対策が途上であるため整備計画の目標流量を安全に流下させるために必要な河道が確保されていない区間においては、堤防の整備、河道掘削等を行うとともに、サンルダムを建設し洪水時の水位を低下させる必要がある。

一の2について

 お尋ねについては、第二回答弁書一の2の(一)についてで述べたとおりである。

一の3について

 お尋ねの「実際の雨量をもとにしたサンル川合流点より下流支川の目標流量」が何を指すのか必ずしも明らかでないが、真勲別地点における目標流量の設定に当たっては、名寄川におけるサンル川合流点より下流の支川についても考慮した上で、第二回答弁書一の2の(二)についてで述べたとおり算定している。

一の4について

 河川整備に当たっては、水害発生の状況、河川環境の状況等を考慮し、河川整備基本方針及び河川整備計画で目標とする一定規模の流量を対象として水害を防止又は軽減することを基本とし、あわせて一定規模を超える洪水が発生した場合においても被害をできるだけ少なくするよう配慮することとしている。また、河川整備には多大な予算と時間を要することから、段階的に整備を進め、治水上の安全性の確保を図っているところである。
 御指摘の「越水しても破堤しない堤防」が何を指すのか必ずしも明らかでないが、仮に耐越水機能が確保された堤防を指すのであれば、一連の堤防で耐越水機能を確保する技術的知見が明らかになっていないため、耐越水機能を確保するための堤防の整備を行うことはできないと考えている。また、遊水地の整備を中心とした対策については、整備計画の作成過程において、代替案として検討し、その効果等を比較考慮した結果、ダムの建設を中心とした整備計画に定められた対策が適切であると判断したものである。

二の1及び2について

 沙流川水系二風谷ダムの魚道については、北海道開発局が行ったサクラマスの遡上調査等の結果により、サクラマスが経年的に遡上していること、魚道を利用して降下した魚種が五科十一種確認されていること、二風谷ダムの上流域におけるサクラマスの生息状況等から、北海道開発局としては、魚類の資源維持に大きな役割を果たしていると評価したものである。また、学識経験者からなる「北海道地方ダム等管理フォローアップ委員会」(以下「フォローアップ委員会」という。)において、サクラマスが経年的に遡上していること等を示した上で、サクラマスの遡上については「経年的に遡上していることから、魚道は有効に機能し、魚種の資源維持に大きな役割を果たしているものと判断される」と、降下については「経年的に魚道により降下をしていることから、親魚は沙流川に回帰しているものと判断される」との評価について了承されているところである。北海道開発局としては、これらを総合的に検討し、二風谷ダムの魚道について、サクラマスの遡上及び降下の機能を確認しているものである。

二の3について

 第四回答弁書三の1の(二)についてで述べたとおり、サクラマスの降下については、御指摘の北海道栽培漁業振興公社の報告書も含む北海道開発局の調査結果より、二風谷ダムの魚道を利用して降下した魚種は五科十一種で、サクラマスは経年的に魚道を利用した降下が確認されていることから、北海道開発局としては、「経年的に魚道により降下をしていることから、親魚は沙流川に回帰しているものと判断される」と評価しているものである。

二の4について

 二風谷ダムの事業主体である北海道開発局が行った評価等に対して、より客観性等を確保する観点から、フォローアップ委員会を設置し、意見をいただいているところである。

二の5及び6について

 北海道開発局が二風谷ダムの下流で行っているサクラマスの遡上調査においては、遡上したサクラマスのうち標識されたものが確認される場合もあるが、当該調査は、遡上したサクラマスのうち標識されたものの数を把握するために行っているものではなく、また、遡上までの間に標識が脱落する可能性があること等から、お尋ねの「遡上魚の中の標識魚の割合」については、お答えできない。
 また、二風谷ダムにおける標識放流魚の調査は、サクラマスの動向を把握し、ダムに設置した魚道の効果も含むダムの影響を検証するため、魚道等においてサクラマス幼魚(スモルト)を捕獲し、その降下の状況を把握しているものである。

二の7について

 第四回答弁書三の2の(一)についてで述べたとおり、サンルダムにおいて暫定水位運用の期間に恒久的対策の効果を把握・検証することについては、「天塩川魚類生息環境保全に関する専門家会議」(以下「専門家会議」という。)の設置に先立ち開催された、専門家会議と同じ委員で構成される「天塩川魚類生息環境保全に関する専門家会議準備会」において、説明しているものである。

三の1及び2について

 お尋ねの「バイパス方式」及び「バイパス」の意義が必ずしも明らかでないが、ダム上流からダム下流へ魚を降下させるための方式の一つとして、ダム上流の分水施設において集魚し、開水路等を通じてダム堤体下流まで誘導する方式があり、後志利別川水系美利河ダムで採用しているものとサンルダムで検討しているものは、いずれもこの方式である。

三の3について

 美利河ダムの魚道の工事に要した費用は約七億円であり、また、第三回答弁書(平成二十年三月十一日内閣参質一六九第五九号)四の2についてで述べたとおり、サンルダム建設事業において魚道に係る費用は約八億円と見込んでいる。