質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四八号

内閣参質一六九第一四八号
  平成二十年六月十七日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員谷博之君提出フェニルケトン尿症及びメープルシロップ尿症治療用ミルク価格の引き上げに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷博之君提出フェニルケトン尿症及びメープルシロップ尿症治療用ミルク価格の引き上げに関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、都道府県等からの報告によると、平成十七年度において、フェニルケトン尿症の患者が二百二十六人、メープルシロップ尿症の患者が二十九人である。

二について

 使用薬剤の薬価(薬価基準)(平成二十年厚生労働省告示第六十号。以下「薬価基準」という。)に収載されている雪印新フェニルアラニン除去ミルク及び雪印新ロイシン・イソロイシン・バリン除去ミルク(以下「特殊ミルク」という。)の薬価については、他の不採算品の薬価と同様に、特殊ミルクの製造販売業者(以下「業者」という。)から提出された資料に基づき、薬価算定単位当たりの製造販売に要する原価に、販売費及び一般管理費、営業利益、流通経費並びに消費税及び地方消費税相当額を加えることより算定したところである。また、これらの具体的な額については、業者から提出された資料に基づいて計算しており、これを公にすることにより、業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、答弁を差し控えたい。

三について

 厚生労働省としては、特殊ミルクを必要としている患者の中に小児慢性特定疾患治療研究事業の医療給付の対象外になっている成人が存在すること及び本年四月の特殊ミルクの薬価改定の結果メープルシロップ尿症の成人患者の自己負担が増加することについては、認識していた。

四から六までについて

 不採算品の薬価の再算定(以下「不採算品再算定」という。)は、中央社会保険医療協議会において了解された「薬価算定の基準」(平成二十年二月十三日付け保発第〇二一三〇〇一号厚生労働省保険局長通知)に基づき行っているところである。具体的には、その薬価が著しく低額であるため製造販売業者が製造販売を継続することが困難であるが、保険医療上の必要性が高い医薬品として、関係学会から供給の継続等に関する要望があった医薬品や、日本薬局方に収載されているが薬価基準には一品目しか収載されておらず、仮に供給が途絶えると保険医療上支障が生ずるおそれがある医薬品などについて、当該医薬品の製造販売業者から提出される原価に関する資料に基づき、当該医薬品の継続的な供給を可能とするために実施するものである。このため、特殊ミルクの不採算品再算定に当たって、これを供給する立場にない患者等から意見を聴くことや日本先天代謝異常学会(以下「学会」という。)との協議等は行っていないものである。

七及び八について

 お尋ねの赤字額及び設備更新に係る費用については、これを公にすることにより、業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから、答弁を差し控えたい。

九について

 本年四月に改定した特殊ミルクの薬価については、当該薬価の算定の基礎となった提出資料について誤りがある旨の申出を業者より受けたことを踏まえて訂正を行うこととしているものであるが、訂正後の薬価により製造販売を継続することについて、業者より特段の言及はなかった。

十について

 次回以降の薬価改定において特殊ミルクの薬価を再度引き上げる可能性については、特殊ミルクの製造販売の採算いかんによるものであり、現時点では不明である。

十一について

 四から六までについてで述べたとおり、不採算品再算定は、当該医薬品の継続的な供給を可能とするために実施するものであり、特殊ミルクの薬価の算定に当たって医薬品を供給する立場にない学会とは協議を行っておらず、また、今回行うこととしている訂正についても同様に学会と協議を行っていないため、学会の意見は承知していない。

十二について

 厚生労働省としては、御指摘のような実態については承知していないが、フェニルケトン尿症の患者は食事療法を行わないと神経症状を発症する場合があることや、成人患者やその家族から経済的負担の軽減について要望があることは承知している。

十三について

 既に薬価基準に収載されている希少疾病用医薬品については、必要に応じて不採算品再算定を行うことにより、その継続的な供給を確保しているところであり、また、患者の負担が過度なものとならないよう、高額療養費制度が設けられていることから、御指摘のような製造販売業者に対する助成及び税制上の優遇措置を講じることは考えていない。

十四について

 お尋ねの米国におけるフェニルケトン尿症治療用ミルク及びメープルシロップ尿症治療用ミルクの販売価格については、把握していない。
 一般に、医薬品の製造販売の承認申請を行うかどうかは、製造販売業者の判断によるものであり、また、特殊ミルクが国内に流通していることから、国として、御指摘のような調査や海外製造者に対する承認申請の働きかけを行うことは考えていない。

十五について

 九についてで述べたとおり、本年四月に改定した特殊ミルクの薬価については、当該薬価の算定の基礎となった提出資料について誤りがある旨の申出を業者より受けたことを踏まえて訂正を行うこととしているものである。

十六について

 厚生労働省としては、特殊ミルクの薬価の訂正の予定について地方自治体の関係部局及び関係団体に速やかに情報提供するとともに、業者と協議を行い、業者から医療機関等を通じて薬剤費の差額を患者に返金していただくこととするなど、必要な措置を講じているところである。

十七について

 九についてで述べたとおり、本年四月に改定した薬価基準における特殊ミルクの薬価については、当該薬価の算定の基礎となった提出資料について誤りがある旨の申出を業者より受けたことを踏まえて訂正を行うこととしているものであり、患者負担が重いとの患者等からの意見のみによって薬価の訂正を行うことはない。

十八について

 四から六までについてで述べたとおり、不採算品再算定は、当該医薬品の継続的な供給を可能とするために実施するものであり、医薬品を供給する立場にない患者や学会等と協議を行うものではなく、御指摘のような制度を導入することは考えていない。