質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三一号

内閣参質一六九第一三一号
  平成二十年六月三日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 町村 信孝   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員大河原雅子君提出八ッ場ダム建設事業の今後に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大河原雅子君提出八ッ場ダム建設事業の今後に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの「ダムサイト予定地の河道をふさぐ本格的な本体工事」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、八ッ場ダムの本体となるコンクリートの打設(以下「本体打設」という。)は平成二十四年度に開始する予定である。また、本体打設前に実施する河川の転流のための工事の一部である仮排水トンネルの工事は既に着手しており、河川の仮締切の工事は、仮排水トンネルの完成後、天端以下の基礎岩盤の掘削を開始する前に実施する予定である。

一の2について

 本体打設を開始するまでに、一般国道百四十五号の付替道路のうち先行して二車線で完成予定のもの(以下「二車線の付替国道」という。)及び東日本旅客鉄道株式会社吾妻線の付替鉄道の付替工事並びに「水没予定地住民の移転」がおおむね完了していることを想定している。

一の3について

 八ッ場ダム建設事業に係る付替道路について、既に完成した区間及び工事に着手している区間の延長とその全体に対する割合は、平成十九年度末現在、二車線の付替国道が約五・七キロメートルで総延長約十・八キロメートルの約五十二パーセント、一般県道林岩下線の付替道路が約四・六キロメートルで総延長約六・九キロメートルの約六十六パーセント、一般県道林長野原線の付替道路が約二・四キロメートルで総延長約三・九キロメートルの約六十二パーセント、一般県道川原畑大戸線の付替道路が約二百四十メートルで総延長約一・一キロメートルの約二十一パーセントである。
 また、八ッ場ダム建設事業に係る付替鉄道について、既に完成した区間及び工事に着手している区間の延長とその全体に対する割合は、平成十九年度末現在、約八・四キロメートルで総延長約十・四キロメートルの約八十一パーセントである。
 さらに、八ッ場ダム建設事業に係る代替地については、すべての地区で分譲を開始しており、各地区ごとの分譲を開始している面積とその分譲を予定している全体の面積に対する割合は、平成十九年度末現在、川原畑地区が約六千百平方メートルで全体面積約六万二千三百平方メートルの約十パーセント、川原湯地区が約九千八百平方メートルで全体面積約九万八千五百平方メートルの約十パーセント、横壁地区が約六千九百平方メートルで全体面積約三万三千八百平方メートルの約二十パーセント、林地区が約五千五百平方メートルで全体面積約七万六千七百平方メートルの約七パーセント、長野原地区が約五千五百平方メートルで全体面積約七万四百平方メートルの約八パーセントである。

一の4について

 付替道路のうち、一般国道百四十五号は平成七年度から、一般県道林岩下線及び一般県道林長野原線は平成十一年度から、一般県道川原畑大戸線は平成十六年度から工事に着手している。

一の5及び6について

 付替道路については、事業費が大きく工事に期間を要するトンネルや橋梁を先行して整備していることから、一の3についてで述べた工事の進捗率を考慮しても、二車線の付替国道は平成二十二年度末までに、一般県道林岩下線は平成二十二年度末までに、一般県道林長野原線は平成二十四年度末までに、一般県道川原畑大戸線は平成二十六年度末までに工事が完了すると見込んでいる。

一の7について

 お尋ねの「法面崩落事故に対する対策工事」については、崩落が発生した原因及びその対策工法について、現在、調査及び検討を行っているところである。調査及び検討が終了した後速やかに対策工事を実施し、引き続き、川原畑地区を含む一般国道百四十五号の付替工事を進めてまいりたい。

一の8について

 川原湯地区の打越の代替地については、大規模な盛土により代替地を造成する箇所(以下「盛土造成箇所」という。)であることから、平成十四年度よりダム貯水池に面する法面において沈下量の測定を開始し、平成十九年三月まで継続して沈下量の測定を実施している。住居等を整備する盛土の上面(以下「盛土上面」という。)については、盛土施工中に継続して測定することが難しいため、盛土上面における測定を行ってはいないが、これまでの法面における測定結果によると打越の代替地の沈下量は収束しており、現時点では盛土上面についても沈下に関する問題はないと認識している。
 また、盛土造成箇所である川原湯地区の大沢の代替地と横壁地区の東・中村の代替地においても、沈下量の測定を実施している。

一の9について

 代替地については、平成二十一年度末までにおおむね造成が完了する予定であり、造成が完了したものから、順次分譲を開始することとしているものであるが、盛土造成箇所については、造成中に沈下量の測定を実施し、その結果も踏まえ、分譲開始時期を判断することとしている。
 また、川原湯地区の打越の代替地のようなダム貯水池に面した盛土造成箇所については、分譲開始後でも、盛土上面について、試験湛水が完了するまで沈下量の測定を実施する予定である。
 さらに、一の2についてで述べたとおり、平成二十四年度開始予定の本体打設までに、「水没予定地住民の代替地への移転」がおおむね完了していることを想定している。

一の10について

 一の1についてで述べたとおり、既に、仮排水トンネルの工事に着手し、八ッ場ダム建設事業の完成時期に影響を与えないように工事を進めているため、お尋ねの「転流工の工事の遅れがダム完成時期に与える影響」は現時点ではないと考えている。

一の11について

 御指摘のように「付替国道の工事や代替地移転が計画より大幅に遅れる」ことにはならないと現時点では考えている。

二の1について

 御指摘の「事業別執行額(予算ベース)」の根拠が必ずしも明らかではないが、付替道路は、一の5及び6についてで述べたとおり、事業費が大きく工事に期間を要するトンネルや橋梁を先行して整備していることから、単に予算の執行率に比べ工事の進捗率が低いことのみをもって、事業費が増大するとは言えないと考えており、今後ともコスト縮減等を図りつつ、予定している事業費の範囲内で付替道路が完成するよう努力してまいりたい。

二の2について

 御指摘の「予想外の地質」がどのようなものを想定しているのか必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

二の3及び4について

 東京電力株式会社への送水量削減に伴う減電補償の見込額及び支払予定時期については、今後、任意による交渉を経て契約に至らなければならないものであるとともに、個別企業の経営上の問題にかかわるものであることから、具体的な数値及び時期をお示しすることは差し控えたい。また、お尋ねの「減電補償の今までの支払額」についても同様に、個別企業の経営上の問題にかかわるものであることからお示しすることは差し控えたい。

二の5について

 お尋ねの「営繕費、宿舎費などの間接経費」については、今後、コスト縮減等に取り組むことにより、増額する必要がないと現時点では考えているところである。

三の1について

 お尋ねの「当初の代替地計画」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、平成十七年七月及び八月に国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所が実施した第四回意向調査の際に示した「八ッ場ダム建設に伴う意向調査票(第四回)」においては、代替地の第一期分譲可能予定時期を「平成十七年度末」としているところである。
 また、お尋ねの「代替地の移転が遅れることにより地元住民が蒙っている被害に対する補償」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、八ッ場ダム建設事業に伴う補償については、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和三十七年六月二十九日閣議決定)に基づき、引き続き実施してまいりたい。

三の2について

 川原湯地区の打越の代替地からダムサイト右岸の天端付近を通過し、八ッ場ダムの本体下流の右岸側で現在の遊歩道に接続する延長約千三百メートルの遊歩道の案を地元住民の方々に提示しているところであり、引き続き詳細について検討してまいりたい。

三の3について

 八ッ場ダムの建設に伴い吾妻渓谷の散策を制限する必要がある範囲については、現在検討を進めているところであり、現時点ではお答えすることは困難であるが、可能な限り工事の影響が小さくなるよう努力してまいりたい。

四の1について

 お尋ねの「ダム本体関係の工事費(貯水池護岸工事と地滑対策を除く)」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、現在、国土交通省が管理しているダム及び独立行政法人水資源機構が独立行政法人水資源機構法(平成十四年法律第百八十二号)第二条第四項に規定する特定施設として管理しているダムのうち、貯水池護岸工事及び地滑り対策工事に要する費用を除くダム本体に係る費用が、建設に要した費用の十パーセント以下であったダムは、現時点で国土交通省において把握している限りでは存在しない。

四の2及び3について

 八ッ場ダムの建設のための地質等の現地調査については、平成十七年度から実施している現在のダムサイトにおける横坑調査により岩盤のせん断強度を確認する等、地質構造の調査精度が向上している。このため、最新の地質調査結果等を踏まえた設計せん断強度及び岩級区分図に関して、平成十九年九月に開催された「第八回八ッ場ダム・湯西川ダムコスト縮減技術委員会」において、意見をいただいたところであり、これを踏まえ、国土交通省は、総合的に判断し、岩盤強度の評価を適切に見直しているものである。

四の4について

 御指摘の「ダムサイト予定地はもともと地質がひどく悪いところであるから、今後、本体掘削等で予想外の地質が現れる可能性が十分にある」の根拠が必ずしも明らかではないが、地質等の現地調査の結果、ダムサイト予定地の岩盤は、ダムを建設する上で問題がないことを確認している。

四の5について

 御指摘の「取り返しの付かない事故」がどのようなものを想定しているのか明らかではないが、八ッ場ダムの建設に当たっては、ダム本体の安全性を十分確認しながら工事を進めることとしている。

五の1及び2について

 お尋ねの「高規格道路」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、地域高規格道路を指すのであれば、一般国道百四十五号のうち地域高規格道路の整備区間として四車線で整備を計画している範囲は、付替道路の整備予定区間内の群馬県吾妻郡長野原町横壁から同郡東吾妻町松谷までの延長約九・四キロメートルの区間であり、平成六年度に事業化し、完成予定時期は未定である。
 また、群馬県吾妻郡長野原町長野原から同郡東吾妻町松谷までの延長約十・八キロメートルの一般国道百四十五号の付替道路に要する全体事業費は約七百八十六億円と見込んでいる。
 なお、「全体事業費は二車線までの分と四車線にする分を分けて示されたい」の趣旨が必ずしも明らかではないが、合計延長約一・四キロメートルの二車線で整備する二区間の事業費の合計は約八十九億円と、延長約九・四キロメートルの四車線で整備を計画している区間の事業費は約六百九十七億円と見込んでいる。

五の3について

 一の3についてで述べたとおり、二車線の付替国道については、既に完成した区間及び工事に着手している区間の延長とその全体に対する割合は、平成十九年度末現在、約五・七キロメートルで総延長約十・八キロメートルの約五十二パーセントである。
 お尋ねの「事業費執行率」については、ダム貯水池、付替道路、代替地等に必要となる用地を同一の地権者から一括で買収している場合が多数あり、二車線の付替国道のみに支出した額を抽出するためには膨大な作業が必要となること等から、お答えすることは困難である。

五の4について

 二車線の付替国道に係るトンネル及び橋梁の名称、延長及び工事進捗率については、平成十九年度末現在で、群馬県吾妻郡長野原町長野原側から順番に次のとおりである。
 トンネルについては、久森トンネル(仮称)は延長約二百七十メートルで工事進捗率が約六十二パーセント、松谷第一トンネル(仮称)は延長約千七百六十メートルで工事進捗率が百パーセント、松谷第二トンネル(仮称)は延長約八百二十メートルで工事進捗率が百パーセントである。
 橋梁については、長野原めがね橋は延長約四百六十メートルで工事進捗率が百パーセント、小倉沢橋(仮称)は延長約三十八メートルで工事進捗率が零パーセント、深沢橋(仮称)は延長約九十一メートルで工事進捗率が百パーセント、三号橋(仮称)は延長約四百四十メートルで工事進捗率が百パーセント、立馬橋(仮称)は延長約四十七メートルで工事進捗率が百パーセント、久森沢川橋(仮称)は延長約二百三十メートルで工事進捗率が百パーセント、境沢橋(仮称)は延長約五十一メートルで工事進捗率が零パーセント、鍛冶屋沢橋(仮称)は延長約四十五メートルで工事進捗率が百パーセント、雁ヶ沢橋(仮称)は延長約百八十メートルで工事進捗率が百パーセント、松谷高架橋(仮称)は延長約二百七十メートルで工事進捗率が零パーセントである。
 なお、トンネルの工事進捗率は、トンネル整備予定区間の延長のうち、掘削が完了している区間の延長の割合を、橋梁の工事進捗率は、橋梁の整備予定区間の延長のうち、既に完成している区間及び橋梁上部工に着手している区間の延長の割合を基に算出している。

五の5及び6について

 一般国道百四十五号の付替道路については、平成二十二年度末までに二車線での工事を完了し、平成二十三年度当初の供用開始を予定している。四車線化の時期及びトンネル部分と橋梁部分の構造については、二車線での供用開始後、交通の状況に応じて検討することとしており、現時点でお答えすることは困難である。

五の7について

 お尋ねの「四車線分の用地を買収する範囲と距離数」は、一般国道百四十五号の付替道路のうち、四車線で整備を計画している区間である群馬県吾妻郡長野原町横壁から同郡東吾妻町松谷までの約九・四キロメートルである。また、お尋ねの「すでに四車線分の用地を買収した範囲と距離数」については、多数の未買収の土地が買収した土地と混在しており、買収が完了した範囲と距離を正確に抽出するためには膨大な作業が必要となることから、お答えすることは困難である。

五の8について

 一般国道百四十五号の付替道路に係る費用の負担割合は、社会資本整備事業特別会計治水勘定が約五十九パーセント、社会資本整備事業特別会計道路整備勘定が約二十七パーセント、水源地域対策特別措置法(昭和四十八年法律第百十八号)に基づく関係都県負担分が約十四パーセントとなっている。

五の9について

 一般国道百四十五号の付替道路については、地域高規格道路の整備区間として四車線で整備を計画しているものであり、現時点では「負担割合の前提が変わること」は想定していない。