質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第一二三号

内閣参質一六九第一二三号
  平成二十年五月二十日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員大河原雅子君提出八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定根拠となる調査等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大河原雅子君提出八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定根拠となる調査等に関する質問に対する答弁書

一について

 堤防詳細点検は、「河川堤防の設計について」(平成十四年七月十二日付け国河治第八十七号国土交通省河川局治水課長通知)における「河川堤防設計指針」(以下「指針」という。)に基づき、直轄管理区間の堤防について浸透に対する安全性を照査しているものであり、河川堤防の質的整備の推進を図ることを目的としている。

二について

 河川管理施設等構造令(昭和五十一年政令第百九十九号)は、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十三条第二項の規定に基づき、河川管理施設又は許可工作物のうち、ダム、堤防その他の主要なものの構造について河川管理上必要とされる一般的技術的基準を定める必要があることから、内閣が制定しているものである。

三について

 堤防詳細点検や河川管理施設等構造令は、洪水等による災害の発生の防止等を図るために必要なものであり、御指摘の「流域に暮らす人々の生命財産を守るため」に重要なものであると考えている。

四について

 直轄管理区間における堤防詳細点検の結果によると、破堤地点又は越水地点として想定した地点のうち一級河川利根川水系利根川(以下「利根川」という。)の左岸側の同川河口から、百三十二キロメートル付近の地点である茨城県古河市中田新田地先、八十二キロメートル付近の地点である茨城県取手市長兵衛新田地先、利根川の右岸側の同川河口から百三十六キロメートル付近の地点である埼玉県北埼玉郡大利根町弥兵衛地先、一級河川利根川水系江戸川(以下「江戸川」という。)の左岸側の同川河口から、五十八キロメートル付近の地点である千葉県野田市関宿江戸町地先、三十七キロメートル付近の地点である千葉県野田市今上地先、三十三キロメートル付近の地点である千葉県流山市大字中野久木地先、二十六キロメートル付近の地点である千葉県流山市大字木地先及び十一・五キロメートル付近の地点である千葉県市川市大洲三丁目地先については、指針に基づく堤防の浸透に対する安全性の照査の基準(以下「照査基準」という。)を満足しないと評価した堤防の一連の区間内に位置するものである。
 また、利根川の左岸側の同川河口から、百五十一・五キロメートル付近の地点である群馬県邑楽郡明和町大輪地先、七十八・五キロメートル付近の地点である茨城県北相馬郡利根町押付新田地先、利根川の右岸側の同川河口から四十五・五キロメートル付近の地点である千葉県香取市川尻地先及び江戸川の左岸側の同川河口から四十八・五キロメートル付近の地点である千葉県野田市岡田地先については、照査基準を満足すると評価した堤防の一連の区間内に位置するものである。
 利根川の左岸側の同川河口から三キロメートル付近から十八キロメートル付近までの区間である茨城県神栖市波崎地先から太田地先までは、無堤のため、堤防詳細点検は実施していない。
 なお、利根川の左岸側の同川河口から二百五キロメートル付近の地点である群馬県前橋市敷島町地先及び利根川の右岸側の同川河口から百九十六キロメートル付近の地点である群馬県高崎市萩原町地先については、指定区間内にあり、群馬県は両地点において堤防詳細点検に類する浸透に対する安全性の照査を行っていないと聞いている。

五について

 河川整備は、堤防の整備状況に加え、河道断面の確保状況、過去の被災履歴、堤防決壊時の影響、上下流のバランス等を考慮して実施している。現在、利根川水系においては、堤防決壊時の影響が大きい利根川及び江戸川の右岸の堤防強化を重点的に実施しているところであり、御指摘の二地点を含む左岸の堤防強化については、右岸の堤防強化の進捗に応じて順次進めてまいりたいと考えているが、現段階において二地点の対策について具体的にお示しすることはできない。

六について

 直轄管理区間においては、「河川定期縦横断測量業務実施要領について」(平成九年六月十二日付け建設省河治発第二十九号建設省河川局治水課長通知。以下「要領」という。)に基づき河川管理の基本となる基礎資料を得るために、定期横断測量を実施している。お尋ねの「測量」は、要領に基づき「平成十六年度管内定期横断測量(その三)業務」及び「平成十六年度管内定期横断測量(その四)業務」として御指摘の二地点も含めて実施したものであり、要した費用は約千九百万円である。
 また、当該費用は、治水特別会計治水勘定(当時)における(項)河川事業費(目)直轄河川改修費である。

七について

 国土交通省の測量結果によると、利根川及び支川の直轄管理区間において河川管理施設等構造令に基づく高さ、天端幅等の基準を満たしていない堤防が存する区間の合計は、約五百キロメートルであるが、すべての地点を正確にお示しすることは膨大な作業を要することから困難である。

八について

 指針を定めた平成十四年度から平成十八年度までに堤防詳細点検に要した費用は、国土交通省関東地方整備局全体で約五十七・九億円であり、そのうち利根川水系に係るものは約三十五・二億円となっており、当該費用は、治水特別会計治水勘定(当時)における(項)河川事業費(目)直轄河川改修費である。
 なお、当該費用には、堤防詳細点検の一部と併せて実施した河川改修に必要な地質調査や設計等に係る費用も含まれている。

九について

 御指摘の「互いに照らし合わせた利用」が何を指すのか明らかではないが、堤防詳細点検を行うに当たっては、堤防の高さ、天端幅等の形状について、要領等に基づき実施した定期横断測量の結果を活用しているところである。

十について

 堤防詳細点検は、河川堤防の質的整備の推進を図るために必要なものとして実施しているものであり、また、堤防詳細点検の結果を踏まえ、照査基準を満足しないと評価した堤防の一連の区間については、堤防の強化対策を進めることとしており、堤防詳細点検の結果は有効に活用されているものと考えている。