質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一〇号

内閣参質一六九第一一〇号
  平成二十年四月二十五日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出サンルダムに関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出サンルダムに関する第三回質問に対する答弁書

一の1について

 河川整備に当たっては、治水上の安全性を確保するため、水害の形態及び氾濫域の状況のみならず、本支川及び上下流のバランス等を考慮し、水系全体として適切にバランスのとれたものとなるよう実施することが重要であると認識している。

一の2について

 第一回答弁書(平成十九年十二月二十八日内閣参質一六八第一○○号)一の2について、第二回答弁書(平成二十年二月五日内閣参質一六九第一一号)一の2の(二)について並びに第三回答弁書(平成二十年三月十一日内閣参質一六九第五九号)一の1について及び一の2についてで述べたとおり、天塩川水系河川整備計画(以下「整備計画」という。)における目標流量は、流域全体の効果的な河川整備を実施するために、河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第十条の規定に基づき、実績流量のみならず、地域の気象、開発の状況等を総合的に考慮して設定したものである。
 また、御指摘の「天塩川流域委員会に出された資料」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、真勲別地点における目標流量は、サンル川合流前の名寄川の流量である毎秒約六百五十立方メートルに、サンル川及びその他支川の流量の合計である毎秒約八百五十立方メートルを加え、毎秒千五百立方メートルとしたものである。

一の3の(一)について

 御指摘の「二○○六年十月八日の水害」では、下川町三の橋上流で農地等の冠水が発生したが、これは名寄川の流量が流下能力を上回り、当該地付近で溢水したことが原因である。このため、必要な河道を確保することが有効であり、第三回答弁書一の3の(一)についてで述べたとおり、整備計画で定めたとおり、河道掘削等を行うことが適切であると考えている。

一の3の(二)について

 音威子府村筬島地区では、近年では平成十三年九月八日から十二日までの洪水及び平成十八年五月十日から十一日までの洪水で、内水の氾濫があったことを確認しており、当該氾濫は、筬島地区の降雨量が多かったこと等に加え、天塩川の水位が高く排水できなかったことが原因である。天塩川の内水対策としては洪水時の水位の上昇をできるだけ抑えることが有効であることから、整備計画においては、本支川及び上下流のバランス等を考慮しつつ、サンルダムの建設及び河道掘削等を行うこととしている。また、筬島地区については、内水の氾濫の状況に応じて、第一回答弁書一の3についてで述べたとおり、河川管理者等が保有する排水ポンプ車等を活用し内水排除を行うこととしている。さらに、第三回答弁書一の3の(二)についてで述べたとおり、現在、筬島地区に排水機場を設置する予定はないが、今後の災害の発生状況等に応じて必要な対策を検討することとなる。このような考え方については、必要に応じて地域住民に説明してまいりたい。

一の4について

 平成十九年度に実施したサンルダム建設事業の再々評価においては、サンルダムを建設することによるサンルダムの費用対効果の値は、治水に係る便益である九百六十二億円を治水に係る費用である五百九十九億円で除して約一・六と算出している。
 お尋ねの「1/100確率のサンル川天塩川間の想定被害額」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、洪水時に発生する被害を軽減する便益を算出した際には、三日雨量としての発生確率百分の一の雨量の場合におけるサンルダム建設事業の実施前の想定被害額については、昭和四十八年八月十七日から十九日までの降雨パターンの降雨により、再々評価時点における河道条件で洪水が発生することを想定し、サンル川天塩川間を複数の区間に分け、その区間ごとに発生すると想定される最大の被害額を合計し、約六千九百億円としている。

二の1について

 「河川における魚類生態検討会」(座長:水野信彦愛媛大学名誉教授)においては、専門知識を有する学識経験者等の委員が、小林哲夫著「サケとカラフトマスの産卵環境」などの既往文献等を参考にしつつ、サケの卵・稚仔魚の保全に必要な水深を三十センチメートルとすること等を内容とする報告書を取りまとめたものである。

二の2、4及び5について

 第一回答弁書二の1についてで述べたとおり、名寄川真勲別地点における九月から四月までの非かんがい期の正常流量(漁業、流水の清潔の保持、動植物の生息・生育地の状況等を総合的に考慮して定められた維持流量及び流水の占用のために必要な水利流量の双方を満足する流量をいう。以下同じ。)は、サケ、マスの産卵等に必要な水深及び流速を考慮した流量である毎秒四・八立方メートル並びに工業用水と上水の取水のために必要な流量である毎秒〇・七立方メートルの合計である毎秒五・五立方メートルに設定している。

二の3について

 御指摘の「近年をみると整備計画で述べられている正常流量がほぼ達成されている」の根拠が必ずしも明らかではないが、平成五年から平成十四年までの十年間では、名寄川真勲別地点における一日の平均流量が正常流量を下回る日数は、年間最大で百七日、最小で二十日発生しており、流水の正常な機能が維持されるよう、正常流量を確保するために、整備計画に基づきサンルダムを建設する必要があると考えている。

三の1の(一)について

 沙流川水系二風谷ダムの魚道については、北海道開発局が行ったサクラマスの遡上調査等の結果により経年的に遡上していることなどから、魚類の資源維持に大きな役割を果たしていると評価したものであり、当該評価については、学識経験者からなる「北海道地方ダム等管理フォローアップ委員会」(以下「フォローアップ委員会」という。)において、一日平均約〇・五尾遡上していることを示した上で、了承されているものである。
 また、ヤマメの生息密度の変化については、様々な要因の影響が考えられることから、ヤマメの生育密度だけをもって魚道の役割を評価するべきものではないと考えている。

三の1の(二)について

 サクラマスの降下については、御指摘の「公社の報告書」も含む北海道開発局の調査結果より、二風谷ダムの魚道を利用して降下した魚種は五科十一種で、サクラマスは経年的に魚道を利用した降下が確認されていることから、「経年的に魚道により降下をしていることから、親魚は沙流川に回帰しているものと判断される」との北海道開発局の評価について、フォローアップ委員会が了承したものであり、フォローアップ委員会が御指摘の「公社の報告書」と異なる評価を行ったとは考えていない。
 また、適材適所の観点から幅広い人材を求めた結果として、フォローアップ委員会の八名の委員のうち、一名は北海道栽培漁業振興公社(以下「公社」という。)の関係者であるが、フォローアップ委員会は、公社による調査結果を評価するものではなく、公社による調査結果も含む様々な調査結果に基づき北海道開発局が行った評価に対して意見を述べるものであり、公正な意見をいただいているものと認識している。

三の1の(三)について

 魚道の効果については、御指摘のように「サクラマスが魚道を遡上または降下している事実が把握できれば十分」とは考えておらず、第二回答弁書三の1の(三)について及び第三回答弁書三の1の(二)についてで述べたとおり、個別の魚道や河川の特性に応じて、学識経験者の意見等を踏まえ、総合的に検討し判断するものと考えている。

三の1の(四)について

 北海道開発局が行っているサクラマスの遡上調査においては、お尋ねの「放流魚及びその世代交代」の把握は行っておらず、お尋ねの「遡上魚のうち天然魚と標識放流魚の割合及び標識放流魚の回帰率」については、お答えできない。

三の1の(五)について

 二風谷ダム及び後志利別川水系美利河ダムにおける標識放流魚の調査は、専門家の意見を踏まえ、適切に実施しているものであると考えており、また、サクラマスの動向を把握し、ダムに設置した魚道の効果も含むダムの影響を検証するために必要な調査であることから、今後も引き続き実施していく必要があると考えている。

三の2の(一)について

 サンルダムにおいて暫定水位運用の期間に恒久的対策の効果を把握・検証することについては、「天塩川魚類生息環境保全に関する専門家会議」(以下「専門家会議」という。)の設置に先立ち開催された、専門家会議と同じ委員で構成される「天塩川魚類生息環境保全に関する専門家会議準備会」において、説明している。
 また、第三回答弁書三の2の(一)についてで述べたとおり、サクラマスの遡上及び降下の機能を確保するための恒久的対策の効果については、専門家会議の意見も踏まえて、暫定水位運用の期間に十分把握・検証することとしており、その結果、必要な場合は追加対策等を行うこととしている。

三の2の(二)について

 専門家会議の委員には、天塩川に精通している専門家が含まれていると考えており、御指摘の「天塩川をよく知る専門家がほとんどいないこと」を理由として、意見交換会等を行う必要はないと考えている。
 なお、専門家会議の運営方針においては、座長は、会議の進行上必要があると認めるときは、他の専門家からの意見聴取その他必要な措置を講じることを事務局に要請することが可能となっている。

四の1について

 北海道開発局による産卵床の調査は、専門家の意見を踏まえ、適切に実施しているものであると考えている。

四の2から4までについて

 御指摘の「民間調査」の詳細が明らかでないため、お答えできないが、四の1についてで述べたとおり、北海道開発局による産卵床の調査は、専門家の意見も踏まえ、適切に実施しているものであると考えており、サンルダムの建設によるサクラマス産卵床への影響も適切に評価しているものと認識している。

四の5について

 お尋ねについては、御指摘にあるような考え方の根拠が明らかでないため、お答えできないが、第三回答弁書三の1の(三)についてで述べたとおり、サンルダムの建設によるサクラマスへの影響や魚道の機能については、事業主体である国土交通省が、専門家会議の議論も踏まえた所要の調査検討を行い、総合的に判断するものと考えている。

五の1について

 御指摘の「流域委員会で示されたバイパス方式と別のものである」の趣旨が必ずしも明らかではないが、美利河ダムで採用している魚道は、ダム上流からダム下流へ魚が降下できる方式であり、サンルダムにおいて、サクラマス幼魚(スモルト)を確実に降下させるための恒久的対策として検討しているバイパス方式と同じ方式であると考えている。

五の2について

 堤体工に係る費用については、本体に使用するコンクリートの体積を約四十九万五千立方メートルと見積もり、一立方メートル当たりの費用を約九千八百円として約四十八・五億円、減勢工に使用するコンクリートの体積を約一万五千立方メートルと見積もり、一立方メートル当たりの費用を約二万千円として約三・○億円、堤体への目地の造成及び止水工として約〇・五億円の合計約五十二億円を見込んでいる。

六について

 今後、事業を進めて行く上で、必要な時期を判断し、適宜、説明会を開催してまいりたい。