質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第九七号

内閣参質一六九第九七号
  平成二十年四月十八日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員浅尾慶一郎君提出後期高齢者医療制度の保険料徴収に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浅尾慶一郎君提出後期高齢者医療制度の保険料徴収に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの例については、確認した限りでは、ないものと承知している。なお、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号。以下「高齢者医療確保法」という。)において準用する介護保険法(平成九年法律第百二十三号)において、特別徴収の方法が規定されているが、通常の年度における経常的な保険料の徴収は、年度当初から特別徴収の方法によることとされており、平成二十年度の特別徴収の開始時期について明示的に平成二十年十月一日以降とされているわけではない。

二及び三について

 後期高齢者医療の保険料の徴収方法については、高齢者医療確保法第百七条において、特別徴収の方法による場合を除くほか、普通徴収の方法によることとし、特別徴収については、介護保険法の規定を準用することとしているが、そもそも特別徴収とは、全国的な制度である年金制度を前提に、年金保険者の協力の下で、被保険者の保険料納付に係る便宜を図るとともに市区町村の事務負担を軽減する趣旨で行うものであり、全国的に運用することが合理的かつ効果的な仕組みであるから、特別徴収を原則とし、それが適当でない場合に普通徴収とする趣旨であって、御指摘の高齢者医療確保法第百九条は、例外的に普通徴収とされた場合において、その保険料の納期を市区町村の条例で定めることを規定したものである。
 後期高齢者医療の保険料の徴収において、通常の年度で経常的に行われる特別徴収は、当該年度分の保険料について、四月分から九月分までの年金からは仮徴収として、十月分から翌年三月分までの年金からは本徴収として徴収する仕組みとしているところである。しかし、後期高齢者医療制度の導入初年度においては、通常の年度を前提として規定されている仮徴収に関する規定をそのまま適用することができないことから、制度が開始される前年度である平成十九年十月一日時点で年金保険者が特別徴収の対象となるべき年金の受給者を把握し、市区町村に通知する等の事前の準備手続により平成二十年四月から特別徴収を実施するという初年度の特例について、高齢者医療確保法の本則と同様に介護保険法の関係規定を準用しつつ、経過措置として高齢者の医療の確保に関する法律施行令(平成十九年政令第三百十八号。以下「高齢者医療確保法施行令」という。)附則第十二条に規定し、新制度の円滑な導入を図ったものである。なお、一般に、経過措置として規定される内容については、現行制度を改正した場合に現行制度から改正後の制度への円滑な移行を図るための措置だけでなく、新たな制度が創設される場合にその創設に当たっての事前の準備行為等を定める措置についても含まれるものである。
 法律の授権範囲及び日本国憲法第七十三条第六号との関係に関するお尋ねについては、これまで述べたとおり、制度発足当初における経過措置を定めた高齢者医療確保法施行令附則第十二条は、健康保険法等の一部を改正する法律(平成十八年法律第八十三号)附則第百三十三条の規定に基づき、必要な経過措置を定めたものであり、同法の委任範囲を超えるものではないと考える。

四について

 後期高齢者医療の保険料については、日本国憲法第八十四条に規定する「租税」には含まれないと解されるため、御指摘の後期高齢者医療の保険料を特別徴収の方法によって徴収することについては、同条の「新たに租税を課し、又は現行の租税を変更する」場合には当たらないものと考える。なお、国民健康保険の保険料についてではあるが、最高裁判所の判決(平成十八年三月一日最高裁大法廷判決)において、市区町村が行う国民健康保険の保険料については、当該保険料は被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものであり、国民健康保険が強制加入とされ、保険料が強制徴収されるのは、社会保険としての国民健康保険の目的及び性質に由来するものというべきであるとして、日本国憲法第八十四条が直接に適用されることはないというべきであるとしているところである。