質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第八三号

内閣参質一六九第八三号
  平成二十年四月四日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員藤田幸久君提出米国同時多発テロに関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤田幸久君提出米国同時多発テロに関する第三回質問に対する答弁書

一について

 九・一一独立調査委員会報告書には、「九・一一攻撃はオサマ・ビン・ラーディンが主導した。」との記載があると承知しており、また、オサマ・ビン・ラーディンによるとみられる声明においては、オサマ・ビン・ラーディンが同時多発テロ事件を指示したことを認める内容の発言が含まれていると承知している。なお、米国国務省テロ年次報告書二千六年版には、「アル・カーイダはオサマ・ビン・ラーディンにより千九百八十八年に設立された」との記載があると承知している。

二について

 「テロとの闘い」は、国際社会の最重要課題の一つであり、また、我が国自身の安全保障の問題であると認識した上で、我が国は、国際社会と連携し、関連する国際連合安全保障理事会決議に基づき、テロリスト等に対する資産凍結等の措置を行うとともに、テロリスト及び関連物資の拡散や流入の阻止を目的として各国がインド洋で実施している海上阻止活動に対する補給支援活動を実施している。

三について

 いわゆるテロ行為に関しては、現時点で十三作成されているいわゆるテロ防止関連条約のうち十一の条約において、締約国に対し、典型的なテロ行為に該当する行為を犯罪とすることが求められている。我が国は、これまで、既存の国内法令を改正し、又は、航空機の強取等の処罰に関する法律(昭和四十五年法律第六十八号)、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(昭和四十九年法律第八十七号)、人質による強要行為等の処罰に関する法律(昭和五十三年法律第四十八号)、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律(平成十四年法律第六十七号)等の新たな法令を制定するなどし、これらの条約で犯罪とすることが求められている行為を、我が国の国内法において犯罪としている。
 また、我が国は、例えば、国際連合安全保障理事会決議第千三百三十三号等において、すべての国際連合加盟国に対し、アル・カーイダ及びオサマ・ビン・ラーディン並びにこれらと関係を有する個人及び団体の資金を遅滞なく凍結すること等が求められていることから、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)の関係規定に基づいて、これらに対する支払等及びこれらとの間の特定資本取引を許可に係らしめている。

四について

 お尋ねの九・一一テロ攻撃は、米国のみならず人類全体に対する卑劣かつ許しがたい行為であり、国際社会は、いわゆるテロ防止関連条約の作成を通じて、いわゆる典型的な「テロ行為」に該当する一定の行為類型を犯罪とし、各国がこれを処罰するための法的枠組みを着実に整備してきている。
 警察は、本件の捜査を行っていた米国法執行機関と連携しつつ、行方不明邦人の身元確認等に関する調査を行った。
 オサマ・ビン・ラーディンのものとされる声明等に対する検証作業の有無については、我が国の具体的なテロ対策にかかわるものであることから、お答えを差し控えたい。

五について

 米国政府の関係機関等との情報のやり取りについては、相手方がだれであるかを含め、相手方との関係からその内容を明らかにすることは差し控えたい。

六について

 アメリカン航空一一便に搭乗していた邦人一名については、御遺体は発見されていないが米国の裁判所による死亡宣告がなされている。また、ユナイテッド航空九三便に搭乗していた邦人一名については、墜落現場から発見された御遺体の一部による身元確認がなされている。

七について

 ユナイテッド航空九三便の墜落現場の状況については詳細を把握しておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。

八について

 御指摘の情報は承知していないが、いずれにせよ、政府としては、警備に関係する各種情報の収集、分析を行い、北海道洞爺湖サミットの警備及び首都の警備等に万全を期しているところである。

九について

 前々回答弁書(平成二十年二月一日内閣参質一六九第八号。以下「前々回答弁書」という。)八について並びに前回答弁書(平成二十年二月二十二日内閣参質一六九第二六号)十六、十九及び二十についてにおいては、御指摘の事実があるか否かについて十分な知見を有する必要はないものと認識してお答えしたものであるが、前々回答弁書四についてで述べたとおり、大学・研究機関等を主体に、平成十四年二月から三月に米国で行われた「米国世界貿易センタービルの被害拡大過程、被災者対応等に関する緊急調査研究」に政府職員が参加し、航空機の衝突によるビルの崩壊の過程について一定の知見は得ているところである。いずれにせよ、政府としては、様々な警備情勢を勘案しつつ、北海道洞爺湖サミットの警備及び首都の警備等に万全を期しているところである。

十について

 御指摘の米国国防総省のホームページで公表されている写真は承知していない。運輸省航空事故調査委員会(現在の国土交通省航空・鉄道事故調査委員会)が設立されて以降、同委員会が調査を行った航空事故において、事故機の機体を特定できなかった例はない。

十一について

 米国国家運輸安全委員会が同時多発テロ事件の邦人犠牲者の御家族に対して事故の経緯や原因等について説明したかどうかについては承知していない。

十二について

 九・一一独立調査委員会報告書及び米国国立標準技術研究所の報告書には、第七ビル崩壊に関する直接の言及はないと承知している。
 また、米国連邦危機管理庁の報告書の中においては、第七ビルについては、延焼による火災によって崩壊につながったが、火災の特質及びこの火災がどのように建物を崩壊させたかは現時点で不明であるなどの記述があると承知している。
 同時多発テロ事件は、首都の防災及び危機管理において重要な参考となる事例であると認識しているが、米国政府による再調査については、我が国として判断する立場にはない。

十三について

 政府としては、御指摘のような事実について承知しておらず、お答えすることは困難である。また、日本で実際に事故が発生した場合には、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会では、事故原因を特定するために、御指摘のようなデータの収集、解析を行っている。

十四について

 米国連邦危機管理庁の調査報告書によれば、第一ビル及び第二ビルについては、航空機衝突の衝撃による建物構造的な損傷及び火災により崩壊し、第七ビルについては、第一ビル及び第二ビルからの延焼による火災が原因で崩壊したと承知している。
 また、米国国立標準技術研究所の報告書によれば、第一ビル及び第二ビルにつき航空機衝突による破壊と火災の熱で脆弱となった構造部分の複合的要素が建物の崩壊につながったとの見解が示されていると承知している。

十五について

 御指摘のような早急な撤去作業による身体への危険性及び同時多発テロ事件に起因する疾病又は同時多発テロ事件の後遺症を患っている邦人の存在については承知していない。
 また、御指摘の「現場の安全等を考慮した上で」とは、前回質問主意書(平成二十年二月十二日提出質問第二六号)二十一で御指摘のあったビル崩壊後の撤去作業に関連し、米国連邦危機管理庁の報告書においては、九・一一同時多発テロ事件直後、工学技術チームにより、復興作業にかかわる人々の安全等のために、残った建物や瓦礫の安定性についての評価が行われたとの記述があることを根拠としたものである。

十六について

 政府としては、御指摘の残骸については確認していないが、米国政府は米国同時多発テロ事件の事実究明及び再発防止に向けた努力を行っているものと受け止めており、我が国政府として御指摘の調査を行う必要はないと考えている。

十七について

 米国において、旧ドイツ銀行ビルの屋上において遺骨が発見されたとの報道があったことは承知しているが、詳細な事実関係は承知していない。
 いずれにせよ、御遺体の身元確認作業等については、米国の関係当局によりなされるべきものと考える。

十八について

 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二十九条第四項の規定による国土交通大臣の指定を受けた航空従事者の養成施設の設置者である航空会社においては、二百時間以上の飛行訓練が要件となっている事業用操縦士の資格の技能証明を有する者を採用した後、一般的には、一年程度の訓練を実施した上で、大型機の操縦に必要となる航空機の型式についての限定を受けさせているものと承知している。
 なお、お尋ねの「航空大学」の意味するところが必ずしも明らかではないが、独立行政法人航空大学校及び日本の大学において大型機の操縦訓練は行われていない。
 また、「セスナ機の免許を取得した者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、航空従事者技能証明を受けている者が大型機の操縦に必要となる航空機の型式についての限定を受けるためには、例えば、前述のとおり、航空会社において一年程度の訓練を実施しているものと承知している。