質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第七七号

内閣参質一六九第七七号
  平成二十年四月一日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員富岡由紀夫君提出公共事業における予算査定の根拠に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員富岡由紀夫君提出公共事業における予算査定の根拠に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「東京湾アクアライン」の費用対便益分析については、平成十一年度に日本道路公団(当時)が試行的に実施した事後評価において、総便益は三兆二千五百億円、総費用は一兆七千億円となっている。また、お尋ねの「本州四国連絡道路」の費用対便益分析については、平成十二年度に本州四国連絡橋公団(当時)が試行的に実施した事後評価において、総便益は八兆七千億円、総費用は五兆二千億円となっている。
 また、「東京湾アクアライン」の建設については、昭和六十年九月に日本道路公団(当時)が取りまとめた「東京湾横断道路調査(中間報告)」の内容を踏まえ、建設に係る技術的な問題や経済効果等を総合的に判断した上で、昭和六十二年七月に建設大臣(当時)が日本道路公団(当時)に対し、日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法の実施のための関係法律の整備に関する法律(昭和六十二年法律第八十七号)による改正前の道路整備特別措置法(昭和三十一年法律第七号)第三条第一項の規定に基づき事業許可を行っている。また、「本州四国連絡道路」の建設については、昭和四十七年十一月に本州四国連絡橋公団(当時)が取りまとめた「本州四国連絡橋調査報告書」の内容を踏まえ、建設に係る技術的な問題や経済効果等を総合的に判断した上で、昭和四十八年十月に建設大臣(当時)が本州四国連絡橋公団(当時)に対し、日本道路公団等民営化関係法施行法(平成十六年法律第百二号)第三十七条の規定による廃止前の本州四国連絡橋公団法(昭和四十五年法律第八十一号)第三十一条の規定に基づき、工事実施計画の認可を行っている。

二について

 北関東自動車道の伊勢崎インターチェンジから岩舟ジャンクションまでの区間については、平成十五年度に国土交通省が、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成十三年法律第八十六号)に基づき再評価を実施したところ、総便益は一兆二千十億円、総費用は千七百五十七億円であり、費用便益比は六・八三であったが、その後、道路関係四公団の民営化に際し、平成十七年度にコストの大幅な削減を行った結果、総便益は一兆二千十億円、総費用は千四百七十二億円であり、費用便益比は八・一六となっている。
 また、国道十七号高松立体事業については、平成十一年度に新規事業採択時評価を実施した結果、費用便益比が一・九となっている。この事業の総便益及び総費用については、関係する資料の保存期間を経過し、現存していないことから、お答えすることは困難である。

三について

 お尋ねの時間価値原単位は、乗用車、バス及び貨物車の車種別に設定されており、人、車両及び貨物の時間当たりの機会費用で構成されている。人の時間当たりの機会費用は、ドライバー、同乗者ごとに厚生労働省が行った毎月勤労統計調査等により算出し、車両の時間当たりの機会費用は、代表的な自家用自動車の有償貸渡し事業者の平均的なレンタル価格等により算出している。また、貨物の時間当たりの機会費用は、貨物車一台当たりの輸送貨物の価値額に短期プライムレートから算出した一分当たりの利子率を乗じて算出している。
 お尋ねの走行経費原単位は、乗用車、バス及び貨物車の車種別に設定されており、燃料費、油脂費、タイヤ・チューブ費、車両整備費及び車両償却費の距離当たりの走行経費から構成されている。燃料費は、ガソリン及び軽油の一リットル当たりの販売店等への税抜きの渡し価格から燃料消費量等を勘案して算出し、油脂費は、国土交通省が取りまとめた自動車運送事業経営指標等から、燃料費に対する油脂費の割合を用いて算出している。また、タイヤ・チューブ費は、出荷実績等から推計される距離当たりの単価を用いて、速度や路面状態等を勘案して算出しており、車両整備費及び車両償却費は、自動車運送事業経営指標等から道路種類別に算出している。

四について

 道路事業の費用便益分析における便益の算出に当たって用いられている原単位は、「費用便益分析マニュアル」(平成十五年八月国土交通省道路局 都市・地域整備局作成)に定められている。当該マニュアルを策定するに当たっては、平成十五年一月二十三日の第一回道路事業評価手法検討委員会(以下「委員会」という。)において、時間価値原単位、走行経費原単位等の案を提示し、同年三月三日の第二回委員会において、第一回委員会での指摘事項に対する審議を行い、同月二十五日の第三回委員会において、「費用便益分析マニュアル(案)」の改定案についてのパブリックコメント等を実施する案を決定している。同年五月一日の第四回委員会においてパブリックコメント等を通じて出された意見についての中間報告、同月二十九日の第五回委員会においてパブリックコメント等を通じて出された意見への対応案の審議を行い、同年七月十七日の第六回委員会において、費用便益分析マニュアルの最終案を提示し審議を行っている。

五について

 委員会の設置に当たっては、道路工学及び経済学に関する学識経験者から選定することとし、道路工学の分野からは、森地茂政策研究大学院大学教授、小林潔司京都大学大学院工学研究科教授及び中村英夫武蔵工業大学学長の三名を、経済学の分野からは、竹内健蔵東京女子大学教授、林山泰久東北大学大学院経済学研究科教授及び山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授の三名の合計六名を選定した。その後、委員会での検討事項の追加等を踏まえ、平成十五年七月十七日の第六回委員会において、道路工学の分野から堤盛人筑波大学社会工学系准教授を、経済学の分野から太田和博専修大学商学部教授の二名を追加で選定した。
 審議会等の委員の兼任状況については、森地茂教授は国土審議会委員、社会資本整備審議会委員、交通政策審議会委員及び国土開発幹線自動車道建設会議委員を、小林潔司教授は国土審議会専門委員及び交通政策審議会臨時委員を、中村英夫学長は国土審議会特別委員を、竹内健蔵教授は国土審議会専門委員及び交通政策審議会臨時委員を、山内弘隆教授は交通政策審議会委員、社会資本整備審議会臨時委員及び国土交通省独立行政法人評価委員会臨時委員を、太田和博教授は社会資本整備審議会臨時委員をそれぞれ兼任している。

六について

 国土交通省所管の公共事業において、平成十八年度に事業評価を実施し、費用便益比を算出した件数は、新規事業採択時評価が三百六十九件、再評価が七百八件、完了後の事後評価が百七十六件である。このうち、費用便益比が一未満の件数は、再評価が一件、一以上五未満の件数は、新規事業採択時評価が二百六十三件、再評価が五百九十五件、完了後の事後評価が百二十七件、費用便益比が五以上の件数は、新規事業採択時評価が百六件、再評価が百十二件、完了後の事後評価が四十九件である。

七について

 費用便益比は、費用と便益について相対的に比較するものであり、費用は道路整備に要する事業費及び維持管理に要する費用からなり、整備する道路の地形条件及び道路構造等により変動する。また、便益は走行時間短縮便益、走行経費減少便益及び交通事故減少便益からなり、各便益は交通量のほか、自動車の走行時間等の変化により変動する。このように、費用便益比は、交通量だけで決定されるものではないことから、費用便益比が比較的小さい道路であるからといって、一概に交通量が少なくなるとはいえないと考えている。

八について

 国土交通省ホームページにおいては、道路・街路事業において平成十九年度に新規に事業採択された事業についての新規事業採択時評価の結果九十一件を公表しており、お尋ねの「事業着工」が何を指すのかが必ずしも明らかではないが、これらの事業について新規に事業採択するに当たっては、便益が費用を上回っていることを前提条件とし、さらに、地元における合意形成の状況、事業の効果や必要性等の客観的な評価等を踏まえて総合的に判断している。

九及び十について

 一級河川利根川水系吾妻川に建設中の八ッ場ダム(以下「八ッ場ダム」という。)については、特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第四条第一項に規定する基本計画(以下「基本計画」という。)を昭和六十一年七月に作成している。
 建設省(当時)所管の公共事業の再評価システムについては、平成十年度に導入したところであり、八ッ場ダムの再評価については、平成十年十一月に開催された建設省関東地方建設局(当時。以下「関東地方建設局」という。)が設置した関東地方建設局事業評価監視委員会において、関東地方建設局が、八ッ場ダムの治水や利水の効果、費用対効果、代替案等を説明した上で、八ッ場ダム建設事業を継続するという関東地方建設局の対応方針の事務局案が了承され、同年十二月に建設省(当時)は八ッ場ダム建設事業を継続するという対応方針を決定している。建設省(当時)が当該対応方針を決定した際の治水に係る費用対効果は、治水に係る妥当投資額である約一兆五千七十四億円を治水に係る費用である約千二百八十八億円で除した値である約十一・七となっている。
 平成十三年九月には、八ッ場ダムの用地補償調査が遅れたことから、工期を「昭和七十五年度まで」から「平成二十二年度まで」に変更することを内容とした基本計画の変更を行っている。
 また、平成十五年十一月に開催された国土交通省関東地方整備局(以下「関東地方整備局」という。)が設置した関東地方整備局事業評価監視委員会(以下「事業評価監視委員会」という。)において、関東地方整備局が、八ッ場ダムの建設の目的に流水の正常な機能の維持を追加すること、建設に要する費用の概算額を約二千百十億円から約四千六百億円に変更すること、治水や利水の効果、費用便益比等を説明した上で、八ッ場ダム建設事業を継続するという関東地方整備局の対応方針の原案が了承され、同年十二月に国土交通省は八ッ場ダム建設事業を継続するという対応方針を決定している。国土交通省が当該対応方針を決定した際の治水に係る費用便益比は、治水に係る便益である約九千百十四億円を治水に係る費用である約二千四百七十億円で除した値である約三・七となっている。国土交通省においては、この結果を踏まえて、平成十六年九月に基本計画を変更している。
 さらに、平成十九年十二月に開催された事業評価監視委員会において、関東地方整備局が、八ッ場ダムの建設の目的に発電を追加すること、工期を「平成二十二年度まで」から「平成二十七年度まで」に変更すること、治水や利水の効果、費用便益比等を説明した上で、八ッ場ダム建設事業を継続するという関東地方整備局の対応方針の原案が了承され、平成二十年三月に国土交通省は八ッ場ダム建設事業を継続するという対応方針を決定している。国土交通省が当該対応方針を決定した際の治水に係る費用便益比は、治水に係る便益である約八千五百二十五億円を治水に係る費用である約二千九百十七億円で除した値である約二・九となっている。国土交通省においては、この結果を踏まえて、現在、基本計画を変更するための手続を行っているところである。

十一について

 職員宿舎に係る平成十八年度及び平成十九年度の道路整備特別会計の予算額については、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第三十四条の二第一項の規定による支出負担行為の実施計画の承認(以下「実施計画承認」という。)を経た額で、平成十八年度において約二十四億千七百万円、平成十九年度において約二十四億九千四百万円である。その内訳を示すと、平成十八年度及び平成十九年度の額は、それぞれ、道路事業費から約十億千四百万円、約九億九千七百万円、北海道道路事業費から約十億七千万円、約十一億八千四百万円、沖縄道路事業費から約千百万円、約千万円、道路環境整備事業費から約二億九千九百万円、約二億九千六百万円、北海道道路環境整備事業費から約二千二百万円、約四百万円、沖縄道路環境整備事業費から約二百万円、約三百万円計上されている。職員宿舎に係る平成二十年度の社会資本整備事業特別会計の予算額のうち道路整備事業分については、同会計の業務勘定に計上した営繕宿舎費のうち道路整備事業分の額七十六億三千万円の内数であるが、その額は、実施計画承認がされておらず、決定していない。平成十八年度の決算額については、職員宿舎に係る経費としての整理を行っていないため、お答えすることは困難である。
 野球グラブ等レクリエーション用具の購入に係る経費は、庁費の内訳である職員厚生経費の一部であるが、これに係る経費を予算及び決算上独立して計上していないことから、予算及び決算上の額をお答えすることは困難である。なお、平成十八年度における購入実績を別途調査したところ、庁費から約十三万円の支出があった。
 マッサージチェアについては、別途調査したところ、平成十四年度以降、購入の実績はない。
 道路ミュージカルの上演に係る経費を含む広報広聴に係る経費は予算及び決算上独立して計上していないことから、予算及び決算上の額をお答えすることは困難である。なお、道路ミュージカルの上演実績を別途調査したところ、平成十八年度は、道路調査費から約四千九百万円、工事雑費から約六百万円の支出があり、平成十九年度は実施していない。

十二について

 「道路関係業務の執行のあり方改革本部」(以下「改革本部」という。)においては、四月中に最終的な取りまとめを行い、公表する予定である。国会においての報告については、必要に応じ適切に判断してまいりたいと考えている。

十三について

 現在、改革本部において道路特定財源の支出の在り方について総点検を行っているところであり、現段階でお答えすることは困難である。