質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第七三号

内閣参質一六九第七三号
  平成二十年三月二十五日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員谷博之君提出介護ベッド並びに業務用ベッドの手すりによる重大製品事故に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷博之君提出介護ベッド並びに業務用ベッドの手すりによる重大製品事故に関する質問に対する答弁書

一について

 医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)第十二条の事故等分析事業においては、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第四条の二第一項に規定する特定機能病院等である医療機関及び当該事業に任意で参加し、事故等の報告を行う医療機関として登録されている医療機関がこれらの医療機関内において発生した事故等を財団法人日本医療機能評価機構に報告する仕組みとなっているが、その他の医療機関については、当該事業における報告の対象となっていない。

二について

 経済産業省としては、御指摘の「出雲の事故」については、本年三月四日の新聞報道等で承知し、これを受け、同日中に同事故に係る業務用ベッドの製造事業者であるパラマウントベッド株式会社から事実関係を確認した。
 経済産業省としては、経済産業省設置法(平成十一年法律第九十九号)及び経済産業省組織令(平成十二年政令第二百五十四号)の規定に基づき、福祉用具の輸出、輸入、生産、流通及び消費の増進、改善及び調整に関する事務並びに経済産業省の所掌に係る一般消費者の利益の保護に関する事務を所掌しているため、福祉用具に係る一般消費者の利益の保護の観点から、本年三月六日付けで福祉用具の関係団体である日本福祉用具・生活支援用具協会及び医療・介護ベッド安全普及協議会に対してベッド、サイドレール及び手すりに関する製品事故等の報告を要請したところであり、今後、当該報告が提出された後、日本工業規格において必要な安全規格を定めてまいりたい。

三について

 厚生労働省としては、御指摘の「出雲の事故」については、本年三月四日の新聞報道等により承知したところである。また、厚生労働省としては、介護保険施設において重大事故等が発生した場合については、速やかに情報収集等ができる仕組みの構築について検討してまいりたい。

四から六までについて

 厚生労働省においては、従前より、医療法第二十五条に基づいて都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長が実施する病院、診療所又は助産所(以下「医療機関等」という。)に対する立入検査の参考にするため、「平成十九年度の医療法第二十五条第一項の規定に基づく立入検査の実施について」(平成十九年六月十四日付け医政発第〇六一四〇〇四号厚生労働省医政局長通知)等に基づき、医療機関等における重大な医療関係法規の違反等の事例について、都道府県等からの情報提供を求めているところであり、御指摘の「出雲の事故」についても、本年三月五日に、島根県から情報提供があったところである。
 厚生労働省としては、当該通知に該当する事例については、都道府県等において、当該事例発生後早期に情報提供をしてもらう必要があると考えているところであり、また、一についてでお答えしたとおり、事故等分析事業を通じて、今後とも、適切な情報収集に努めてまいりたい。

七について

 業務用ベッドのサイドレールに関する事故への対策については、平成十四年度厚生労働科学研究における調査・研究等を踏まえ、製造業界団体により構成される「医療・介護ベッド安全普及協議会」において「ベッドの安全使用マニュアル」が作成され、医療機関等に対し周知が図られてきたところである。
 先般、島根県及び広島県の医療機関において、連続して同様の事故の発生が明らかになったことから、厚生労働省としては、同様の事故の再発を防止するため、各都道府県医政主管部(局)長に対し、「医療機関用・介護用ベッドのサイドレール・手すりによる事故について(注意喚起)」(平成二十年三月十一日付け医政総発第〇三一一〇〇一号厚生労働省医政局総務課長通知。以下「医政局総務課長通知」という。)を発出し、医療機関等に対し、再発防止に係る注意喚起を図ったところである。
 また、ベッドのサイドレールに関する重大製品事故については、消費生活用製品安全法(昭和四十八年法律第三十一号)第三十五条に基づく報告対象製品に係る事故であり、今後とも、必要な対策がとられるよう、関係省庁、関係部局間における連携に努めてまいりたい。

八について

 一般論として申し上げれば、事業者は、その製造、輸入又は小売販売に係る製品について生じた製品事故に関する情報を収集し、事故の防止のため、当該情報を消費者に対し適切に提供するよう努めることが望まれる。

九について

 厚生労働省としては、御指摘の事故は、医療機関において連続して発生した同様の死亡事故に関する事例であり、全国の医療機関等に対し注意喚起を行うとともに、再発防止を図る必要のあるものと考えており、また、島根県及び広島県からは、四から六までについてでお答えした通知の趣旨に基づき、厚生労働省に対して情報提供があったものと考えている。

十について

 厚生労働省としては、「介護ベッド用手すりによる重大製品事故について(注意喚起)」(平成二十年二月十五日付け厚生労働省老健局計画課・振興課・老人保健課事務連絡)において、各都道府県の介護保険担当課(室)に対し、介護ベッド用手すりによる重大製品事故について、管内市町村、関係団体及び事業者等へ、幅広く情報提供するとともに、その使用に当たっての注意喚起を依頼しているところであり、今後とも、医療機関等にも周知が徹底されるよう、関係部局間における連携に努めてまいりたい。

十一について

 厚生労働省としては、七についてでお答えしたとおり、これまで、製造業界団体等を通じて業務用ベッドのサイドレールに関する重大製品事故の再発防止に関する周知を図ってきたところであるが、さらに、先般、島根県及び広島県の医療機関において、連続して同様の事故の発生が明らかになったことから、同様の事故の再発を防止するため、各都道府県医政主管部(局)長に対し、医政局総務課長通知を発出し、医療機関等に対し、再発防止に係る注意喚起を図ったところである。
 今後とも医療機関等に対し、医療機関等内における重大製品事故の再発防止のための周知徹底を図ってまいりたい。

十二について

 介護保険施設は、施設内において事故が発生した場合、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十九号)第三十五条第二項等の規定により、速やかに市町村に連絡を行うことを義務付けられているが、厚生労働省としては、国又は都道府県においても必要な情報収集等ができる仕組みの構築について検討してまいりたい。

十三の1について

 お尋ねの製造・輸入業者名及び件数については、厚生労働省としては、現時点では把握していないが、都道府県を通じ、十二についてでお答えした市町村に対する連絡等を調査し、可能な範囲で把握に努めてまいりたい。

十三の2について

 お尋ねの製造・輸入業者名及び件数については、厚生労働省としては、現時点では把握していないが、四から六までについてでお答えしたとおり、今後とも事故等分析事業の充実に取り組み、可能な範囲で把握に努めてまいりたい。

十三の3について

 お尋ねの製造・輸入事業者名及び件数については、都道府県、製造・輸入事業者及びその業界団体から経済産業省又は独立行政法人製品評価技術基盤機構への報告によれば、東京都におけるパラマウントベッド株式会社の製品による一件、愛知県におけるフランスベッド株式会社の製品による一件、大阪府におけるフランスベッド株式会社の製品による一件、兵庫県における株式会社プラッツの製品による一件、島根県におけるシーホネンス株式会社の製品による一件、香川県におけるパラマウントベッド株式会社の製品による一件の計六件であり、その他、事業者から任意で事故情報を受け、製品起因かどうか不明なことから、製造・輸入事業者名を公表していない事故が、東京都において一件、神奈川県において一件、広島県において一件の計三件ある。

十四について

 どのような事故について報道するかについては、各報道機関等の判断によるものと考えるが、厚生労働省としては、九についてでお答えしたとおり、御指摘の事故は、医療機関において連続して発生した同様の死亡事故に関する事例であり、全国の医療機関等に対し注意喚起を行うとともに、再発防止を図る必要のあるものと考えている。

十五及び十六について

 消費生活用製品安全法に基づく重大製品事故報告を行うに当たっては、製造・輸入事業者自身が法律上の要件に該当するか否かを判断することとなるが、同法の規定によれば、報告義務に違反し、報告を怠り、又は虚偽の報告をした場合においては、罰則により担保される体制整備命令を発することができるとされているところであり、併せて経済産業省より、報告要件を明確化するため、事業者向けに解説したパンフレットを広く配布し、事業者の判断の参考に供している。また、経済産業省としては、製造・輸入事業者に対し、消費生活用製品に係る重大事故の発生を知ったときは、報告義務対象外であることが明白でない限り報告すること及び疑義が生じた場合には経済産業省に事前に相談することを要請している。これらにより報告制度の実効性を高めているところであり、このような制度を変える必要はないと考える。
 経済産業省としては、消費生活用製品以外の製品に関する重大事故については、一般に、製品を利用したり、その設置施設を保有・管理する事業者による適切な管理行為と密接不可分であることから、製品事故情報の把握や再発防止措置の在り方についても、一般の消費生活用製品とは異なるものと考える。これらの製品については、個別の業務用製品の性質や当該事業者に係る規制・監督を定める個別法令等に応じて、それぞれ適切な措置が講じられているところである。

十七について

 医療法第二十条の規定により、医療機関等においては清潔を保持するものとし、その構造設備は衛生上、保安上安全と認められるようなものでなければならないとされており、厚生労働省としては、御指摘の「医療機器以外の患者が使用する製品管理」については、医療機関等の責務として当然行うべきものと考える。また、同法第二十五条に基づく立入検査においても、医療機関等の清潔保持の状況及び構造設備の安全性を検査し、必要に応じて指導を行っているところであり、厚生労働省としても、都道府県等とともに今後とも引き続き、適切に対処してまいりたい。