質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第五九号

内閣参質一六九第五九号
  平成二十年三月十一日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出サンルダムに関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出サンルダムに関する再質問に対する答弁書

一の1について

 前々回答弁書(平成十九年十二月二十八日内閣参質一六八第一〇〇号)一の2について及び前回答弁書(平成二十年二月五日内閣参質一六九第一一号)一の2の(二)についてで述べたとおり、天塩川水系河川整備計画(以下「整備計画」という。)における目標流量は、河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第十条の規定に基づき、実績流量のみならず、地域の気象、開発の状況等を総合的に考慮して、流域全体の効果的な河川整備を実施するために設定したものであり、過大な流量ではない。

一の2について

 誉平地点における目標流量である毎秒四千四百立方メートルは、昭和五十六年八月の洪水時における氾濫及び岩尾内ダムによる洪水調節がなかった場合の流量を実際の降雨量等に基づき計算した結果であるため、前回答弁書一の2の(二)についてで「降雨量等より算定した流量」と述べたものである。
 また、真勲別地点及び名寄大橋地点における目標流量については、前回答弁書一の2の(二)についてで述べたとおり設定しており、流域全体の効果的な河川整備を実施するために地域の気象を考慮したものである。

一の3の(一)について

 下川町三の橋地先の治水対策としては、大規模な河道掘削ではなく高水敷の部分的な掘削により対応可能であり、また、前回答弁書一の3の(三)についてで述べたとおり、天塩川水系において河道掘削を行うに当たっては、多様な動植物の生息・生育する河川環境、河道の安定等を考慮することとしており、整備計画で定めたとおり、河道掘削等を行うことが適切であると考えている。

一の3の(二)について

 名寄河川事務所から音威子府村に排水ポンプ車を出動させた実績はない。名寄河川事務所においては、豊栄排水機場等に排水量毎分二百立方メートルの排水ポンプ二台及び排水量毎分六十立方メートルの排水ポンプ十五台を設置し、管理している。また、名寄河川事務所において、二台の排水ポンプ車を保有しており、それぞれに排水量毎分七・五立方メートルの排水ポンプを四台搭載している。現在、筬島地区に排水機場を設置する予定はないが、今後の災害の発生状況等に応じて必要な対策を検討することとなる。

二の1の(一)について

 サケ、マスの産卵等に必要な流量は、小林哲夫著「サケとカラフトマスの産卵環境」、長澤和也著「サケ・マス類の生態と漁業-地方名・分布・生育の特徴-」等の既往文献及び学識経験者等から構成される「河川における魚類生態検討会」(座長:水野信彦愛媛大学名誉教授。以下「検討会」という。)の報告書等を踏まえて設定している。
 検討会の報告書においては、魚類の遡上及び降下に必要な水深を体高の約二倍を目安とすること等が示されている。

二の1の(二)について

 お尋ねのあった事項については、前回答弁書二の1の(二)についてで述べたとおりである。
 なお、真勲別地点においては、毎秒五・五立方メートル以上の流量が年間を通じて頻繁に観測されることを説明するために、一年を通じて二百七十五日はこれを下らない流量である低水流量の平均値を参考として示したものである。

二の1の(三)について

 北海道開発局が行った現地調査において、お尋ねの「渇水によりヤマメの生息数が低くなった事例」については、把握していない。

二の1の(四)について

 お尋ねの「根拠」については、御指摘の「整備計画が「非かんがい期に毎秒五・五立方メートルの流量がなければサケ・マス資源に悪影響を与える」と判断した」が何を指すのかが明らかでないため、お答えできない。
 非かんがい期における正常流量(漁業、流水の清潔の保持、動植物の生息・生育地の状況等を総合的に考慮して定められた維持流量及び流水の占用のために必要な水利流量の双方を満足する流量をいう。以下同じ。)の設定の根拠については、前々回答弁書二の1について及び前回答弁書二の1の(一)についてで述べたとおりである。河川の流量が正常流量を下回ることで直ちにサケ、マスが生息できなくなるとは考えていないが、河川管理者は流水の正常な機能の維持を図るため、その確保に努める必要があると考えている。

二の1の(五)について

 整備計画における正常流量の設定に当たっては、上名寄頭首工からの取水量については、現在の水利権による取水量を考慮しており、お尋ねの「夏期における水供給量のための増量」は考慮していない。
 また、現時点において、お尋ねの「この地域の水田農家からの要請」はない。

二の2について

 中名寄水田地帯においては、前回答弁書二の2についてで述べたとおり、地元農家からの要望を受けて、北海道において来年度から土地改良事業計画の策定を予定していると聞いているが、その具体的な事業の内容については承知していない。

二の3の(一)について

 ある地点における河川の水位及び流速を推定するためには、流量を仮定し、当該地点における河床勾配、河床の状況等に応じた水位と平均流速(横断面の平均の流速をいう。以下同じ。)を計算しており、水位と平均流速は任意の組合せで定めることができない。サンル川のサンル水位流量観測所地点においては、水深三十センチメートル及び流速毎秒二十センチメートルと設定することはできない。
 なお、サンル川のサンル水位流量観測所地点において、河川の横断方向の最大の水深が三十センチメートルと推定される場合の平均流速はおおむね毎秒三十七センチメートルで、流量はおおむね毎秒一立方メートルである。
 サンルダムの魚道については、前回答弁書三の1の(一)についてで述べたとおり「天塩川魚類生息環境保全に関する専門家会議」(以下「専門家会議」という。)の議論も踏まえ所要の調査検討を進めていくこととしており、現段階では具体的な幅等については決定していない。
 サンルダムでは、六月及び七月は、ウグイの遡上を対象として、おおむね毎秒〇・二立方メートルを魚道に流すこととしている。なお、五月は、サクラマスについては下流部では遡上しているものの通常サンルダム地点までは達しないと考えており、サクラマスの遡上を対象として魚道に一定の流量を流す計画とはしていない。
 また、お尋ねの「魚道流量毎秒〇・二立方メートルは最大流量なのか、常に一定量を流す安定流量なのか」が何を指すのかが必ずしも明らかではないが、サンルダムにおける魚道においては、六月から十一月までサクラマス等の遡上のためにおおむね毎秒〇・二立方メートルの流量を安定的に流すこととしている。
 さらに、お尋ねの「年間の魚道・発電等放流量の種別による推移」が何を指すのかが必ずしも明らかではないが、サンル川のサンル水位流量観測所地点における流量データ等を用いて計算した昭和五十六年度から平成二年度までの十か年の、サクラマス等の遡上のために魚道において確保する流量を除いたサンルダムの発電等のための放流量は、年平均値で毎秒約五・四立方メートルから十・九立方メートルまでの範囲内である。

二の3の(二)について

 現状では、岩尾内ダムの約九百メートル下流左岸に流入する久尾内川の合流点から下士別頭首工までの区間においては無水となる期間が発生している状況ではなく、また、岩尾内ダム地点下流から下士別頭首工までの区間に合流する支川においてサクラマスが産卵し、ヤマメが生息する状況を確認していることから、既存の魚道に加え新たに剣和頭首工、士別川頭首工及び東士別頭首工に魚道を設置することは、サクラマス等が継続的に再生産できる河川環境の改善に資するものと考えている。
 なお、岩尾内ダムにおける小放流設備からの放流は、ダム本来の目的である洪水調節、発電等を達成することを前提としているものの、ダム下流区間の水位変動に配慮しつつ、ダムの下流で無水となる期間を可能な限り短縮するよう実施するものであり、その効果については、今後検証してまいりたい。
 また、新たに整備する剣和頭首工、士別川頭首工及び東士別頭首工の魚道においては、サクラマス等の遡上及び降下の機能を確保できるものと考えているが、既設の魚道も含め、今後、現地調査と専門家会議の議論を踏まえ、確認していくこととしている。

三の1の(一)について

 沙流川水系二風谷ダムについては、北海道開発局において、サクラマスの遡上調査等により魚道の効果を調査している。また、学識経験者からなる「北海道地方ダム等管理フォローアップ委員会」において、サクラマスの遡上については「経年的に遡上していることから、魚道は有効に機能し、魚種の資源維持に大きな役割を果たしているものと判断される」と、降下については「経年的に魚道により降下をしていることから、親魚は沙流川に回帰しているものと判断される」との評価について了承されているところである。これらを総合的に検討し、サクラマスの遡上及び降下の機能を確認しているものである。また、お尋ねの「サクラマス資源」が仮に「沙流川水系に生息すると推定されるサクラマスの数」であるとすれば、沙流川水系に生息すると推定されるサクラマスの数の増減のみによって、二風谷ダムに設置した魚道の効果の有無を確認できるものではないと考えている。

三の1の(二)について

 前回答弁書三の1の(三)についてで述べたとおり、魚道によるサクラマスの遡上及び降下の機能については、個別の魚道や河川の特性に応じて、学識経験者の意見等を踏まえ、総合的に検討し判断するものと考えている。

三の1の(三)について

 サンルダムの建設によるサクラマスへの影響や魚道の機能については、事業主体である国土交通省が、漁業関係者との調整も進めながら、専門家会議の議論も踏まえた所要の調査検討を行い、総合的に判断するものと考えている。

三の2の(一)について

 サクラマスの遡上及び降下の機能を確保するための恒久的対策の効果については、専門家会議の意見も踏まえて、暫定水位運用の期間に十分把握・検証することとしており、その結果、必要な場合は追加対策等を行うこととしている。

三の2の(二)について

 サンルダムの建設に当たっては、専門家会議の議論に基づき実施する予定の事前の段階からの調査の結果や専門家会議の議論も踏まえて恒久的対策を行う予定である。恒久的対策の効果については、ダム本体建設後の暫定水位運用の期間に十分把握・検証することとしている。
 また、調査のための魚道施設については、専門家会議の議論も踏まえて、現在、天塩川の支川であるサンル川に設置することを予定している。

四の1について

 バイパス方式の魚道は、後志利別川水系美利河ダムで採用されており、平成十七年四月から運用を開始している。
 美利河ダムの魚道への取付け部は、チュウシベツ川から導水した水のうち、魚道を流下させない水を余水吐きを通じて再びチュウシベツ川へ戻す構造となっている。このため、サクラマス幼魚(以下「スモルト」という。)が余水吐き水路へ落下せずに魚道を降下するには、余水吐き付近にスモルトが近づかないようにする必要があり、余水吐きの越流部付近の水深を浅くしたり、底面を白く塗布する等の工夫を施している。美利河ダムの魚道について、平成十七年度及び平成十八年度に行った調査結果では、スモルトが余水吐きの越流部を回避する行動をとっていることを確認している。
 なお、美利河ダムの魚道については、今後も調査を継続し、専門家の意見も踏まえつつ必要な対策についても検討を進めることとしている。

四の2について

 サンルダム建設事業の平成十九年度以降に計画されている魚道を含むダム本体等の工事費の内訳は、基礎掘削等に係る費用として約十三億円、堤体工に係る費用として約五十二億円、魚道に係る費用として約八億円、その他に係る費用として約七十五億円と見込んでいる。また、環境調査等の測量及び試験費として約二十九億円、付け替え道路等の用地費及び補償費として約四十四億円と算定している。

五について

 関係団体等の理解を得るため、専門家会議における審議過程、関係資料等を公開するほか、広く一般から寄せられた意見に関する北海道開発局の見解をホームページ上に分かりやすく示すことに努めるとともに、住民等への説明会の開催等により、今後とも引き続き理解が得られるよう努力してまいりたい。