質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第二七号

内閣参質一六九第二七号
  平成二十年二月二十二日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員平野達男君提出北上川上流改修一関遊水地事業に関連した遊水地内営農被害の増大に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員平野達男君提出北上川上流改修一関遊水地事業に関連した遊水地内営農被害の増大に関する質問に対する答弁書

一について

 連続堤の整備は、洪水を安全に流下させる利点がある。しかしながら、上流において連続堤が整備されると、整備以前には上流域において氾濫していた洪水が下流に流下し、下流域において被害が増大するおそれがあるため、下流から上流に向けて順次整備を進めることが原則となっている。このため、連続堤の整備により上流域の治水安全度の向上を図るには、長期間を要する等の課題があると認識している。

二について

 計画規模の洪水を安全に流下させるために必要な河道を確保することよりも洪水時の流量を低減させるための洪水調節施設を設置することが適当な場合に、洪水調節施設として遊水地を設置する場合もあると認識している。

三について

 一関遊水地内の最大水位及び最大貯留量は、河川整備等の影響により変化するものと考えている。
 また、一関遊水地内の地権者に対しては、事業説明会等において、平成二年三月に建設省東北地方建設局岩手工事事務所(当時)が作成した「一関遊水地計画概要」により、遊水地の計画概要、事業内容、遊水地内の土地の使用に対する補償等について説明している。

四について

 現時点では、一関遊水地の周囲堤(以下「周囲堤」という。)が概成し、一関遊水地の小堤が未整備の状況であるが、この状況下における遊水地内の水位、貯留量及び冠水面積については、周囲堤の建設前と比べて、御指摘の平成十九年九月の洪水時においては、水位が平均約十五センチメートル上昇し、貯留量が約二百三十万立方メートル増大し、冠水面積が約十三万平方メートル増大すると、御指摘の設計洪水時においては、水位が平均約三十三センチメートル上昇し、貯留量が約五百六十万立方メートル増大し、冠水面積が約四万平方メートル増大すると算出している。

五について

 一関遊水地より上流においては、北上川水系河川整備基本方針における計画規模の洪水を安全に流下させるために必要な堤防は完成しておらず、国土交通大臣の管理区間において計画された堤防の延長に対する完成した堤防の延長の割合は約四十パーセントであり、完成していない地区は、北上市立花地区、花巻市八幡地区等である。

六及び七について

 一関遊水地より上流において、連続堤が未整備の状況と比較した、現時点の連続堤の整備状況下又は連続堤が計画に沿ってすべて完成した状況下における、連続堤の整備が遊水地内の水位、貯留量及び冠水面積に与える影響については、御指摘の各条件下におけるものも含め、計算していないため、お尋ねについてお答えできない。

八について

 先の答弁書(平成十九年十二月七日内閣参質一六八第六八号)四についてで述べたとおり、一関遊水地内は、周囲堤の建設前より洪水時に頻繁に冠水する地域であり、周囲堤の建設が遊水地内の営農に与える影響については、冠水深のわずかな増加の可能性はあるものの、冠水面積の拡大、冠水時間の長期化等の被害が著しく増大することはないと考えている。また、一関遊水地より上流の連続堤の整備が遊水地内の営農に与える影響については、北上川上流においては、連続堤の整備等を進める一方、ダムの建設による洪水流量の低減を行っていることから、洪水時に遊水地内の冠水面積の拡大、冠水時間の長期化等の被害が著しく増大することはないと考えている。