質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第二三号

内閣参質一六九第二三号
  平成二十年二月十九日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員大久保勉君提出経済産業事務次官の発言に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大久保勉君提出経済産業事務次官の発言に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の講演会における発言内容については、経済産業省及び主催者である財団法人経済産業調査会のホームページに掲載されているところである。また、当日の質疑応答はなかったものと承知している。なお、これらのホームページに掲載されている発言内容は、同調査会が、その会員その他の者に配付するために、同調査会において作成した記録を基に必要な加筆、修正、削除、補充等を行い、作成したものである。

二について

 御指摘の講演会において、「危ない表現をすると」と断った上で、株主のすべてがそうではなく、株主が多様化しているという趣旨を併せて述べつつ、一部の株主について「能力がない」、「配当を要求する強欲な方」などとする発言がなされたことは事実である。「能力がない」との発言は、株式会社制度が所有と経営の分離を前提としている以上、株主には経営者に比して経営的専門能力が備わっていない場合もあるという趣旨でなされたものと認識している。また、「強欲」との発言については、適切でないものであったと考えている。これらの発言は、自分の発言は少数説であるとあらかじめ前置きした上でなされたものであり、政府として、御指摘の「一般もしくは特定の株主の権利等を制限する方向及び配当の要求を不可とする方向」で会社法(平成十七年法律第八十六号)を改正することは考えていない。

三について

 御指摘の発言は、米国の企業との意見交換を踏まえ、社外取締役について日頃の細かな業務執行の監視の役割までを期待するには限界がある場合が少なくなく、むしろ社外取締役に対しては大きな見地からのマネジメントについて責任あるアドバイザーとしての役割が期待されるという趣旨でなされたものであると認識している。こうした発言は、自分の発言は少数説であるとあらかじめ前置きした上でなされたものであり、政府として、御指摘の「社外取締役に関する規定を削除もしくは役割を限定する方向」で会社法を改正することは考えていない。

四について

 御指摘の講演会は、基本的に、主催者である財団法人経済産業調査会の会員に対して、政策を分かりやすく説明することを目的として行われたものと承知している。

五について

 行政機関の幹部職員がその職務内容に密接に関連した分野に関して個人的意見を述べる場合には、当該意見が政府全体又は所属する省庁の公式見解であると誤認されることのないよう、当該意見が個人的意見である旨を明らかにすることが適切であると考えている。御指摘の講演会においては、講演者は、その意見が政府全体又は経済産業省の公式見解ではないことを明らかにする趣旨で、自分の発言は少数説であり、多数の者に受け入れられているものではない旨を述べたものと認識している。

六について

 一般に、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第八十二条第一項に規定する懲戒処分を行うかどうかについては、任命権者が、個別具体の事案に即して判断することとなる。

七について

 経済産業事務次官が昨年二月十九日に行った記者会見で述べた「企業価値研究会でまとめたルール」とは、平成十七年五月二十七日に経済産業省及び法務省が策定した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」のことである。
 御指摘の発言は、特定の者に一定の作為又は不作為を求める趣旨でなされたものではなく、この指針の考え方が、スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピーによるサッポロホールディングス株式会社に対する買収提案の関係者によって共有され、尊重されることを期待してなされたものであり、行政手続法(平成五年法律第八十八号)に規定する行政指導には当たらないと考えている。

八について

 御指摘の発言は、特定のファンドについての感想を述べたものであり、直ちに法令上の問題を生じさせるとは認識していない。
 また、御指摘の発言と海外からの投資の萎縮との関係については、その具体的根拠が明らかではなく、お答えすることは困難である。