質問主意書

第169回国会(常会)

答弁書


答弁書第二○号

内閣参質一六九第二○号
  平成二十年二月十二日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員近藤正道君提出柏崎刈羽原子力発電所を含む西山丘陵の地殻構造運動に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員近藤正道君提出柏崎刈羽原子力発電所を含む西山丘陵の地殻構造運動に関する質問に対する答弁書

一の1について

 参議院議員近藤正道君提出柏崎刈羽原発の安全性と設置審査における国及び東京電力の責任に関する質問に対する答弁書(平成二十年一月十八日内閣参質一六八第一一三号。以下「先の答弁書」という。)で述べた西山丘陵は、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置変更許可申請書のうち二号機から七号機までの設置変更許可申請に係るものに記載されている西山丘陵のことを指すが、御指摘の「海岸と柏崎刈羽平野や出雲崎・旧和島村の平野西縁の間の丘陵部で、南西端は鯖石川まで」とほぼ同様の範囲を想定している。

一の2について

 西山丘陵の範囲を厳格に画定することは困難であるが、国土地理院が設置した一等水準点標石番号第四千四百五十一号から第四千四百六十二号までのうち、一等水準点標石番号第四千四百五十三号付近から第四千四百五十九号付近までは、西山丘陵の範囲に位置していると考えられる。

一の3について

 西山丘陵の範囲を厳格に画定することは困難であるが、国土地理院が設置した電子基準点柏崎一及び電子基準点出雲崎のうち、電子基準点出雲崎は、西山丘陵の範囲に位置していると考えられる。

二の1について

 平成十九年新潟県中越沖地震(以下「今回の地震」という。)により、御指摘の海岸で隆起や沈降があったと承知している。

二の2及び3について

 御指摘の海岸の隆起は、地殻構造運動により引き起こされた今回の地震の発生に伴う地殻変動によるものと考えられるが、当該海岸の観測結果のみをもって、当該海岸近傍における地殻構造運動を示すものとはいえず、地震を引き起こす可能性のある地殻構造運動に伴う褶曲及び活断層が柏崎刈羽原子力発電所の敷地及びその近傍に存在するかどうかについては、現在、東京電力株式会社において調査中である。

三の1について

 地震調査研究推進本部地震調査委員会(以下「調査委員会」という。)は、国土地理院が実施した電子基準点柏崎一における観測の結果に基づき、今回の地震の発生に伴って、当該基準点が柏崎市の沿岸部で北西方向へ最大約十七センチメートル移動したと評価している。また、電子基準点出雲崎については、地盤の局所的な変形の可能性があることから、当該基準点が移動したとは評価していない。

三の2及び3について

 三の1についてで述べた電子基準点柏崎一の移動は、地殻構造運動により引き起こされた今回の地震の発生に伴う地殻変動によるものと考えられるが、当該基準点における観測結果のみをもって、当該基準点の近傍における地殻構造運動を示すものとはいえず、地震を引き起こす可能性のある地殻構造運動に伴う褶曲及び活断層が柏崎刈羽原子力発電所の敷地が含まれる西山丘陵に存在するかどうかについては、現在、東京電力株式会社において調査中である。

四の1について

 調査委員会は、御指摘の一等水準点について国土地理院が実施した水準測量の結果に基づき、今回の地震に伴って、柏崎市観音岬を中心とする最大約二十五センチメートルの隆起と柏崎験潮場における約四センチメートルの沈降が観測されたと評価している。

四の2及び3について

 御指摘の隆起及び沈降は、地殻構造運動により引き起こされた今回の地震の発生に伴う地殻変動によるものと考えられるが、御指摘の一等水準点における観測結果のみをもって、当該水準点の近傍における地殻構造運動を示すものとはいえず、地震を引き起こす可能性のある地殻構造運動に伴う褶曲及び活断層が柏崎刈羽原子力発電所の敷地が含まれる西山丘陵に存在するかどうかについては、現在、東京電力株式会社において調査中である。

四の4について

 国土地理院が実施した水準測量により、今回の地震において、御指摘の一等水準点の多くが沈降したとの結果が得られている。

四の5及び6について

 御指摘の沈降は、地殻構造運動により引き起こされた今回の地震の発生に伴う地殻変動によるものと考えられるが、御指摘の一等水準点における観測結果のみをもって、当該水準点の近傍における地殻構造運動を示すものとはいえず、地震を引き起こす可能性のある地殻構造運動に伴う褶曲及び活断層が柏崎刈羽原子力発電所の敷地が含まれる西山丘陵に存在するかどうかについては、現在、東京電力株式会社において調査中である。

五の1について

 今回の地震において、陸域観測技術衛星(ALOS)からの観測により、西山丘陵と中央丘陵・小木ノ城背斜が隆起し、また、柏崎市を中心とする鯖石川・鵜川流域の柏崎平野が沈降したと考えられる結果が得られている。

五の2及び3について

 御指摘の隆起及び沈降は、地殻構造運動により引き起こされた今回の地震の発生に伴う地殻変動によるものと考えられるが、御指摘の地域における観測結果のみをもって、当該地域の近傍における地殻構造運動を示すものとはいえず、地震を引き起こす可能性のある地殻構造運動に伴う褶曲及び活断層が柏崎刈羽原子力発電所の敷地が含まれる西山丘陵に存在するかどうかについては、現在、東京電力株式会社において調査中である。

六の1について

 今回の地震後に実施した柏崎刈羽原子力発電所の建屋の水準測量の結果、今回の地震の前後において原子炉建屋やタービン建屋が傾斜したことの報告を東京電力株式会社から受けているが、原子炉建屋やタービン建屋の隆起・沈降については、現在、東京電力株式会社において調査中である。

六の2について

 柏崎刈羽原子力発電所の原子炉建屋やタービン建屋の傾斜については、平成十九年十月十二日に開催された総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会地震・津波・地質・地盤合同ワーキンググループにおいて、東京電力株式会社から報告を受けている。同ワーキンググループにおいては、今回の地震後の当該建屋の傾斜が安全上重要な設備に与える影響について厳正に検討を行うことが必要であるという旨の指摘がなされており、この指摘を受け、東京電力株式会社において、建屋の傾斜が安全上重要な設備に与える影響について検討が行われているものと承知している。

六の3及び4について

 原子炉の設置許可に係る安全審査においては、「原子力発電所の地質・地盤に関する安全審査の手引き」(昭和五十三年八月二十三日原子炉安全専門審査会)等に基づき、原子炉施設の基礎岩盤について、支持力、すべり及び沈下に関して評価を行い、基礎岩盤が十分な安全性を有することを確認し、その結果については、いわゆる安全審査書として取りまとめている。

六の5及び6について

 原子炉建屋やタービン建屋の隆起・沈降と敷地直下における地殻構造運動に伴う褶曲及び断層活動との関係については、現在、東京電力株式会社において調査中である。

七の1について

 地震を引き起こす可能性のある地殻構造運動に伴う褶曲及び活断層が柏崎刈羽原子力発電所の敷地が含まれる西山丘陵に存在するかどうかについては、現在、東京電力株式会社において調査中であることから、原子力安全・保安院としては、現時点で「柏崎刈羽原子力発電所の敷地及び刈羽村寺尾を含む敷地付近の西山丘陵地域において少なくとも第四紀後期における地殻構造運動に伴う褶曲及び断層活動はない」という安全審査時の判断を変える状況には至っていないと考えており、先の答弁書三についてのようにお答えしたものである。

七の2について

 国土地理院は、土地の測量、地図の調製及びこれらに関連する業務に関すること等を所掌する機関であり、その業務の一環として地殻変動の調査を行っているが、地殻構造運動の調査を所掌する機関ではない。

七の3について

 原子力安全・保安院においては、原子炉の設置に係る安全審査を所掌する立場から、先の答弁書三についてのようにお答えしたものである。

七の4について

 七の2についてでお答えしたとおり、国土地理院は地殻構造運動の調査を所掌する機関ではないことから、御指摘の見解について了承する立場にない。

七の5について

 独立行政法人産業技術総合研究所は、先の答弁書三についてで原子力安全・保安院がお答えした内容について了解する立場にない。

七の6について

 柏崎刈羽原子力発電所を含む西山丘陵の地殻構造運動について、省庁間で異なる見解はないと考えている。