質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一九二号

在日韓国・朝鮮人及び日本国籍を有する朝鮮民族又は韓民族の市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十七条のマイノリティとしての承認に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月二十日

福島 みずほ   


       参議院議長 江田 五月 殿



   在日韓国・朝鮮人及び日本国籍を有する朝鮮民族又は韓民族の市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十七条のマイノリティとしての承認に関する質問主意書

 明治四十三年の「韓国併合」を契機に形成され、日本の敗戦まで日本国籍を有していた在日朝鮮人とその子孫は、現在では百万人近い人口を有し、日本各地に居住しており、その半数以上は日本国籍を有している。
 このような中、国際人権規約委員会は、平成六年四月六日、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号、以下「規約」という。)第二十七条に関する「一般的意見二十三」を採択し、第二十七条の「保護の対象となる個人は当該国家の市民である必要はない」こと、「国民、市民であることを必要とされないように、永住者であることも必要とされない」との条文解釈を、全世界に向けて示した。
 一方、日本政府は本年六月六日、衆参本会議が決議した「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を受けて、官房長官談話を発表し、アイヌ民族が「独自の言語、宗教や文化を有する先住民族であるとの認識」及び「アイヌの人々が民族として名誉と尊厳を保持し、これを次世代へ継承していくことは、多様な価値観が共生し、活力ある社会を形成する『共生社会』を実現することに資するとの確信」を示し、「『先住民族の権利に関する国連宣言』における関連条項を参照しつつ、総合的な施策の確立に取り組む」との所存を示した。
 こうして政府は、アイヌ民族に関しては、規約第二十七条のマイノリティとして認め、さらに先住民族としても認めたが、昭和五十五年以来、国際人権規約委員会で、規約第二十七条の下で問題にされた、二つの民族集団のマイノリティとしての承認のうち、在日韓国・朝鮮人については、未だマイノリティとして認めていない。現在、戦前から居住していた在日朝鮮人とその子孫のうち、半数以上は日本国籍を有しており、状況も昭和五十五年当時とは変わっている。平成十三年三月二十二日の参議院法務委員会で法務大臣が「帰化は民族に影響を与えるものではない」とも答弁している。
 国際連合は昨年九月、「先住民族の権利に関する宣言」を採択したが、平成六年十二月に、「民族的、宗教的、言語的マイノリティに属する者の権利に関する宣言」を採択している。「先住民族の権利に関する宣言」の採択を契機とする今回の官房長官談話に鑑みれば、在日韓国・朝鮮人及び日本国籍を有する朝鮮民族又は韓民族に対しても、同様に、植民地支配と国境変動の結果、日本列島各地に居住するに至り、現在四世や五世にも達しながら、依然として独自の言語、宗教や文化の独自性を維持しているマイノリティであるとの認識を示すべきである。先住民族と同様、民族的マイノリティに属する人々が、名誉と尊厳を保持し、その文化と誇りを次世代に継承していくことは、国際社会の潮流であり、こうした国際的な価値観を共有することは、日本が二十一世紀の国際社会をリードしていくためにも不可欠である。
 ところが日本政府は、一昨年十二月、国際連合に提出した規約に基づく第五回報告書でも、これらの人々を第二十七条のマイノリティとして認めるという記述をしていない。
 そこで、以下質問する。

一 政府は、在日韓国・朝鮮人及び日本国籍を有する朝鮮民族又は韓民族が、独自の言語、宗教や文化の独自性を有するマイノリティであると、現在は認めているか。もし、認めないのなら、アイヌ民族を規約第二十七条にいうマイノリティであると認めながら、朝鮮民族又は韓民族については認めない理由を明らかにされたい。

二 政府としては今後、多様な価値観が共生し、活力ある社会を形成する「共生社会」を実現することに資するという確信の下、「マイノリティの権利宣言」における関連条項を参照しつつ、朝鮮民族又は韓民族に関する総合的な施策の確立に取り組むか明らかにされたい。

  右質問する。