質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一八一号

政府管掌健康保険に対する国庫補助額の特例等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月十九日

辻 泰弘   


       参議院議長 江田 五月 殿



   政府管掌健康保険に対する国庫補助額の特例等に関する質問主意書

 政府は、第百六十九回国会において、「平成二十年度における政府等が管掌する健康保険の事業に係る国庫補助額の特例及び健康保険組合等による支援の特例措置等に関する法律案」を提出し、平成二十年度において、政府(平成二十年十月一日以後は全国健康保険協会)が管掌する健康保険(以下「政管健保」という。)の事業執行費に対する法定の国庫補助額の削減を図るとともに、一定の要件を満たす健康保険組合、並びに国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団のいわゆる三共済団体から強制的に納付させる「支援金」を原資として、当該国庫補助削減分を「穴埋め」する仕組み等を作ろうとしている。
 この特例措置は、当面の財政の収支尻のみに目を奪われた糊塗策であり、国の財政負担軽減を目的とした健保組合等の被保険者への負担の押し付けに他ならず、到底、医療保険制度の改革と言えるものではなく、行財政改革の名にも全く値しないと言わざるを得ない。まさに、本法案の内容に責任を負うべき主任の大臣である舛添厚生労働大臣自らが、「極めて筋が悪い」と評した所以である。
 このような見せかけの単なる弥縫策は、国民合意に基づく社会保険制度確立の見地からも、必要な行財政改革推進の見地からも、有害無益なものであり、政府はその内容の非を悟り、その方針を速やかに撤回すべきである。
 かかる見地から、以下質問する。

一 政府は、前記の特例措置(以下「今次の特例措置」という。)が何故必要であると判断したのか、その基本的な理由を明らかにされたい。

二 今次の特例措置の検討過程において、厚生労働省は、その提出資料において、「医療保険制度一元化に向けた重要なステップになる」との見解を示しているが、そもそも政府は医療保険制度の一元化をめざしてきたのか。もし、そうであるならば、その証左を示されたい。政府は、一昨年の医療保険制度の抜本改革の議論の際には一元化の方針を全く示さなかったと承知しているが、それにもかかわらず、今次の特例措置の導入の理由として医療保険制度の一元化を持ち出すのは余りにも不見識であり、極めて場当たり的な対応と言わざるを得ないと考えるが、この指摘に対する政府の見解を示されたい。また、今次の特例措置は医療保険制度の一元化に向けた重要なステップになると、現時点においても考えているのか、政府の見解を示されたい。

三 福田総理大臣、舛添厚生労働大臣は、国会審議において、今次の特例措置が「助け合い」だと答弁しているが、その「助け合い」とは誰と誰との助け合いを意味しているのか、政府の見解を明らかにされたい。

四 額賀財務大臣は、国会審議において、今次の特例措置を、政管健保と組合健保の助け合いである旨答弁しているが、今次の特例措置によって、政管健保は組合健保からどのように助けられることになるのか、また、組合健保は政管健保からどのように助けられることになるのか、政府の見解を明解に示されたい。

五 今次の特例措置についての国会審議において、福田総理大臣は、医療保険制度全体の安定的な運営のために必要な措置である旨答弁し、舛添厚生労働大臣は、国民皆保険の維持に資する措置である旨答弁しているが、今次の特例措置は、いかなるプロセスを通じて、医療保険制度全体の安定的な運営に資することになるのか、また、いかなるプロセスを通じて、国民皆保険の維持に資することになるのか、政府の見解を明解に示されたい。

六 今次の特例措置の持つ本質的な意味合いは、単に、国の財政負担の軽減を図るために、政管健保の財政をトンネルにした形で、健康保険組合、及び三共済団体から「上納金」を召し上げる、即ち、健保組合や共済組合が、国を助けるために奔走させられるものに過ぎないのではないか。畢竟、「助け合い」というべきものではなく、助けられるのは国だけであると言わざるを得ないと考えるが、この指摘に対する政府の見解を示されたい。

七 舛添厚生労働大臣は、今次の特例措置を、極めて筋の悪い措置と評したが、いかなる意味で筋が悪いと考えたのか、政府としての見解を示されたい。また、極めて筋の悪い措置であるという本質を十分に自覚・認識していたにもかかわらず、政府として今次の特例措置を最終的に採用しようと決定したのはいかなる理由によるものか、明確に説明されたい。

八 今次の特例措置の検討過程において、政府は、関係する当事者との協議をどのように行い、合意をどのように得てきたのか、具体的な日時、場所、当事者、協議の内容、合意の内容・条件を示されたい。

九 今次の特例措置によって、健康保険組合、三共済団体、国保組合の三者にもたらされる財政負担の増加額の内容と規模は、各々いくらか。また、三者の被保険者・組合員一人当たりの負担増加額の平均はそれぞれいくらか、政府の分析を示されたい。

十 今次の特例措置の採用は、閣議決定されている「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六」によって示された社会保障費の毎年度二千二百億円の削減方針に沿ったものと考えるが、同基本方針においては、国民負担の増加を小さくするための歳出の見直しが謳われている。しかるに、今次の特例措置が、前項で問うたような被保険者・組合員、即ち、国民に対しての負担増をもたらすものであるならば、そもそも今次の特例措置は、同基本方針の精神、目的に全く反する施策と言うべきものと考えるが、この点について、同基本方針と今次の特例措置との関係を整理して、政府の見解を示されたい。

十一 今次の特例措置は、平成二十年度の特例措置とされているが、平成二十年度限りの措置とするとの方針は、政府としての確定した方針なのかどうか、即ち、来年度以降において同様の措置は採用しないとの方針を政府は確定しているのかどうか、その証左と併せて政府の方針を示されたい。

十二 今次の特例措置は、まさに、極めて筋の悪い、見せかけ、ごまかしの帳尻合わせに過ぎず、社会保障の充実、行財政改革の推進のいずれの見地からも有害無益な愚策と言わざるを得ない。早急に方針を撤回し、国会提出した法案についても速やかに取り下げるべきものと考えるが、政府の見解と今後の方針を示されたい。

  右質問する。