質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一六五号

建設業附属寄宿舎及び雇用保険法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月十二日

福島 みずほ   


       参議院議長 江田 五月 殿



   建設業附属寄宿舎及び雇用保険法に関する質問主意書

 建設業をはじめとしてさまざまな産業において日雇労働者が雇用されているが、日雇労働者の雇用や生活はきわめて厳しいものがある。
 建設業附属寄宿舎及び雇用保険法に関し、以下質問する。

一 建設業附属寄宿舎(いわゆる飯場)について

 二〇〇一年五月、千葉県四街道市の解体業者菊地組の寄宿舎で火災が発生し、経営者親族と労働者の計十一名が亡くなった。この寄宿舎は建物自体が違法建築であっただけでなく、建設業附属寄宿舎設置届がなされておらず所轄の労働基準監督署も未把握で、労働基準法とその第九十六条の規定に基づく建設業附属寄宿舎規程、さらに火災予防条例などの関係法令に違反していた。
 二〇〇三年十月、朝日建設で働いていた日雇労働者三名の他殺遺体が、山梨県都留市のキャンプ場の土中から発見された。この業者は、日頃から元暴力団幹部に労働者を管理させ、賃金不払いや労災もみ消しを繰り返し、トラブルによる労働者への暴力が日常的に行われており、その結果この殺人につながったことが、裁判の過程で明らかになっている。
 これらの事件は決して特殊な事例ではなく、日雇労働者の飯場ではしばしば見受けられる事態であり、著しく劣悪な労働環境を日雇労働者に強いており、現代においても事実上の無権利労働が温存されている。
1 これらの事件以降、建設業附属寄宿舎の実態について、総務省、国土交通省、厚生労働省など関係省庁では、どのような調査がなされたか。
2 現在の寄宿舎の数や事業内容、関係法令への違反の有無について、把握しているか。把握しているのであればその内容を具体的に示されたい。
3 無届け業者の摘発、指導をどのように行い、その成果はどのようなものであったか。

二 日雇雇用保険制度について

1 日雇労働者数と日雇労働被保険者手帳所持者数について
 日雇労働者の生活を保障するため、雇用保険法において日雇労働求職者給付金制度(いわゆる日雇雇用保険制度)が設けられているが、同保険の手帳(日雇労働被保険者手帳)所持者数は少ないように思われる。
(1) 総務省、厚生労働省など関係省庁が把握している、雇用保険法第四十二条に定義されている現在の日雇労働者数は何人か。
(2) 日雇労働被保険者手帳の所持者数は何人か。
(3) 日雇労働者数に比して日雇労働被保険者手帳の所持者の割合は少ないように思われるが、その理由をどのように考えているか。
2 日雇労働被保険者手帳取得の要件について
 「雇用保険法施行規則」(一九七五年三月十日労働省令第三号)によると、日雇労働者は、日雇労働被保険者手帳、いわゆる白手帳の取得申請に際し、「住民票の写し又は住民票記載事項証明書」または「運転免許証、国民健康保険の被保険者証又は国民年金手帳を提示」しなければならないとされている(第七十一条)。
(1) 日雇労働者の中には、各地の飯場を転々としたり簡易宿泊所やネットカフェ等を移り住んだりして、固定した住所を持たない、あるいは持てない者も少なくない。日雇労働者として雇用保険に加入する意思がありその要件を満たしていても住民票や運転免許証、国民健康保険の被保険者証や国民年金手帳の無い者は、日雇労働被保険者手帳の取得は不可能であると解してよいか。
(2) (1)の場合(日雇労働者として雇用保険に加入する意思がありその要件を満たしているが住民票や運転免許証、国民健康保険の被保険者証や国民年金手帳の無い場合)、日雇労働被保険者手帳の取得を可能とするには、どのような手続きが必要となるか。
(3) (1)の場合、日雇労働被保険者手帳の取得が不可能であるならば、多数の日雇労働者が無保険状態のまま今後も留めおかれることになる。何らかの特例的な措置がとられてしかるべきと考えるが、いかがか。
3 雇用保険印紙を貼付しない業者について
 日雇労働被保険者手帳を取得しても、日雇労働者を雇用した事業者が雇用保険印紙の貼付を行わなければ、この制度は有名無実である。実際、前記一の「建設業附属寄宿舎(いわゆる飯場)について」で指摘したような違法業者がある中で、雇用保険印紙を貼付しない業者が非常に多い。
(1) 制度の適切な運用を図るため、雇用保険印紙を貼付しない業者について、どのように調査を行い、把握しているか。
(2) このような不適切な業者について、どのような対処、指導を行っているか。

  右質問する。