質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一五二号

日本の戦後処理として残されている遺骨問題の解決に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月十日

今野 東   


       参議院議長 江田 五月 殿



   日本の戦後処理として残されている遺骨問題の解決に関する質問主意書

 戦後六十三年を経てなお戦後処理として解決しなければならないことに遺骨の問題がある。
 本年一月二十三日、祐天寺の朝鮮半島出身の軍人・軍属の遺骨のうち百一体が韓国の遺族に奉還された。次回以降の祐天寺の遺骨返還に加え残る問題として、日韓で取り組まれてきた「旧民間徴用者」の遺骨問題、アジア各地に散在している元日本兵(日本人、朝鮮人、台湾出身者)やシベリア抑留犠牲者(日本人、朝鮮人、モンゴル人)の遺骨収集、日本各地で死亡した中国人強制連行犠牲者の遺骨などがある。
 遺骨問題の解決へ向け政府はどのような取り組みを行おうとしているのか、以下質問する。

一 祐天寺の遺骨関連について

1 一月の祐天寺の遺骨の奉還の際、韓国から遺族を招待し、追悼式典で政府がお詫びの言葉を述べたことは有意義だったと思うが、次回以降も同様な対応をするのか。
2 先の式典で政府代表は外務副大臣と厚生労働副大臣だったが、今後は内閣総理大臣が出席し「お詫びの言葉」を述べるか、又は、それに代わる者が出席し代読することが適切と考えるが如何か。
3 お詫びの言葉は「一九九八年の日韓共同宣言」の引用にとどまらず、戦後六十三年間の長期間にわたり、また、日韓共同宣言から十年間もの間、遺骨を遺族にお返ししなかったことについてもお詫びし、再び戦争、植民地支配を繰り返さない政府の決意を表明することが適切と考えるが如何か。
4 追悼式典は日本社会にも開かれたものとし、希望する市民の参列や仏教界など宗教者の参列も認め、各方面からの弔慰の表明を認めることが適切と考えるが如何か。
5 追悼式典には、両院議長、最高裁判所長官などの参列を図り、お詫びの気持ちを含む追悼の辞を述べるよう要請すべきと考えるが如何か。
6 追悼式典に希望する国会議員の参列を認めるべきと考えるが如何か。
7 式典後に、来日遺族と関係市民との交流の場をつくることが、日韓市民の和解と交流にとって必須であると考える。政府は、そのような場を用意すべきと考えるが如何か。
8 奉還に当っては、奉還する遺骨がどのようなものであるかについて、何時、どこで、どのように、なぜ死亡した遺骨なのかなどの概略を国民に公表することが必要と考えるが如何か。
9 追悼式典の際はマスコミへの取材はオープンにすることが適切と考えるが如何か。
10 本年一月の遺骨奉還に際し、日本政府は遺族に各三十万ウォンを渡したとのことであるが、その事実はあるか。事実とするとその性格はどういうものか。それが、弔意金とするとあまりにも少ない金額であり、少なくとも各三百万ウォン以上が必要と思うが如何か。

二 民間徴用者の遺骨返還について

1 日韓両国政府は、戦時下日本に強制動員された韓国人の所謂「旧民間徴用者」の遺骨返還に取り組んできたが、三年を過ぎたいまも一体の遺骨返還も実現できていない。こうした実態を改め、遺骨返還をスムースに行うため、今後どうすればよいと考えているか、見解を示されたい。
2 遺骨調査の前提として死亡者調査をすべきと考えるが如何か。また、その際に、次のような(1)から(5)の調査を全体的に行うことが必要と考えるが如何か。
(1) 各地方自治体が保有している死亡記録である埋火葬認可証、戸籍受付帳、変災報告書などの積極的な調査依頼
(2) 国が保有している厚生年金名簿、未払金供託書副本の明細書、未払金供託報告書、変災報告書などに記載されている死亡記録の調査
(3) 関係企業が保有している供託書正本、名簿、各種報告書の写しなどに記載されている死亡者に関する調査
(4) 既に公刊されている死亡者などの記録、資料の調査
(5) 大学、図書館、博物館などに存在する死亡者などの記録、資料の調査
3 調査に当っては、民間人の協力も得て新たな調査体制を確立することが必要だと考えるが如何か。

三 北朝鮮出身者の遺骨について

 既に、朝鮮民主主義人民共和国に遺族がいると判明している遺骨については、国交正常化を待つことなく人道問題として解決することが必要と考えるが如何か。

  右質問する。