質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一五〇号

PCB処理の推進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月十日

長浜 博行   


       参議院議長 江田 五月 殿



   PCB処理の推進に関する質問主意書

 かつて我が国に於いてトランスやコンデンサに使用された絶緑油に含まれていたポリ塩化ビフェニル(PCB)は、昭和四十三年にカネミ油症事件を引き起こす原因となったことにより、昭和四十七年には製造販売が禁止され、今日に至っている。その後、安全な処理方法が確立されない中、三十数年にわたりPCB含有絶緑油やそれを用いたトランス、コンデンサを所有する事業者に対して保管義務を課した一方、実際の処理については手付かずのまま推移した。
 しかし、その長期にわたる無策状態の中で多くのPCB汚染されたこれらトランス、コンデンサが行方不明となったり、破壊されたことなどによるPCB汚染などが発生したりする事態が何度も起きてきた。こうした事態を経て、平成十三年にようやく国は、世界の動向を踏まえて世界環境基準に照らしたPCB処理のための法律「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(以下「PCB廃棄物法」という。)を制定し、PCB廃棄物を保管する事業者に対して平成二十八年までに全てのPCBを処理するよう罰則規定も設けて義務付けた。そして、平成十六年に北九州市で第一号の処理施設を稼働させ、引き続きあと四箇所の処理施設(大阪市、豊田市、東京都、北海道)の稼働が進められている。
 法律制定後七年、最初の処理施設稼働から四年がたっているのであるが、その処分状況はどの程度進捗しているのか、PCB廃棄物法が定めた平成二十八年までのPCB完全処分が可能なのか、国民の前にはなんら示されないままである。あわせ、その処理スキームについても、不透明な感がある。
 今年七月は、地球環境問題を大きなテーマにした洞爺湖サミットが開催される。こうした時節にふさわしく、我が国の環境保全問題にとって長年にわたり懸案であったPCB処理の現状について、国民及び世界の前に広く明らかにされるべきである。
 そこで、次の事項について質問する。

一 PCBの製造販売が禁止されてから三十五年も経ている中、その後の経済情勢の激動によりPCB廃棄物を保管すべき事業者が倒産するなどにより、多くのトランス、コンデンサが行方不明となっていると見られる。国として、これらの状況について、どのように把握しているか。また、製造販売が禁止され、保管義務が事業者に課されて以降、届出されていたPCB廃棄物のうちのどれくらいのものが行方不明となっているのか。

二 全国五箇所のPCB処理施設に於けるPCB廃棄物処理は、国が百パーセント出資して平成十六年に設立された日本環境安全事業株式会社(以下「JESCO」という。)が行うことになっているが、その根拠は何に基づいているのか。

三 JESCOについては、PCB廃棄物を保管すべき事業者が処理についての計画を策定し、処理施設への搬入について問い合わせても、「そちらの地域は、まだ処理計画の順序で該当しない」との理由で搬入を事実上拒否したり、あるいは不明瞭な指導をしたりするという苦情が聞かれている。JESCOは今後、平成二十八年までに全てのPCB及びその汚染物を処理するにあたり、いかなる具体的な計画を策定しているのか。地域別計画を含め、明らかにされたい。また、平成二十八年にPCB完全処理を達成する上での、現状における目標達成率と今後の展望についても明確にされたい。

四 JESCOは、PCB廃棄物処理施設の運営やここへの廃棄物持込みの上で必要な手続きなどの事務の一切を行っているが、JESCOの年度毎の決算についてその状況を明らかにされたい。また、PCB廃棄物の費用負担が大きい中小企業等に対する基金が独立行政法人環境再生保全機構において設置・管理されているが、本基金による中小企業等への助成の実績についても状況を明らかにされたい。

五 JESCOについては、政府OBの天下りが多数にのぼるのではないかとの推測が聞かれる。実際にはどうなのか。JESCO職員中の政府OBについて、出身省庁別に人数を明らかにされたい。また、退職時、課長以上の役職だったものについては、省庁及び役職別にその人数を明らかにされたい。

六 「緊急の課題であるPCB廃棄物処理を行う国の唯一の機関」として設立されたJESCOが、その特権的地位を乱用して政府からの天下り職員にいつまでも安定した職を保証したり、PCB及びその廃棄物を保管する者やこれらの運搬に関わる業者に対して実情に合わない一方的な要求や指導をしたりすることがあってはならないと思われる。現状をどのように認識しているか。PCB廃棄物法で定めた期限内での安全な処理に向けての政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。