質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一四七号

生物多様性条約第九回締約国会議における日本政府代表団の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月九日

谷岡 郁子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   生物多様性条約第九回締約国会議における日本政府代表団の対応に関する質問主意書

 平成二十年五月十二日から三十日にかけて、ドイツのボンにおいて生物多様性条約第九回締約国会議(COP9)およびカルタヘナ議定書に関する会合(MOP4)が開催され、最終日には、次回の締約国会議(COP10)を日本の名古屋で開催することが正式決定された。このCOP10は、現在の生物多様性条約が定めている「二〇一〇年目標」に代わる次の目標を定める上で非常に重要な会議であり、日本は会議をとりまとめる議長国として重責を担うことになった。
 ところが、COP9においては、日本が議長国となることに対して、特に非政府組織からの批判的な意見や不安が表明されている。これはCOP9およびMOP4における日本政府の発言や態度に起因しているが、このような事態は、COP10の成功にとって悪影響を及ぼすものであると同時に、今国会で成立した生物多様性基本法第二十六条の趣旨にも反するものである。
 今日の国際会議においては、非政府組織にも出席と発言の権利は認められており、会議の成功にとっても、生物多様性の維持のためにも非政府組織は無視し得ない存在である。日本がCOP10の議長国としての責任を果たし、国際的に重要な課題となっている環境問題の解決に対して貢献するためには、非政府組織の出席と発言の権利を尊重すると同時に、今回のような非政府組織による批判的な意見を丹念に検討し、真摯に対応することが求められている。このことは、生物多様性基本法第二十一条第二項にも通ずるものであり、COP10に向けて、非政府組織との対話はより積極的に推し進められるべきである。
 生物多様性を通じて世界的な環境問題の解決を目指すと同時に、COP10を機会に日本の外交上のリーダーシップを今以上に向上させるために、政府の責任ある発言や態度、非政府組織の意見の尊重などは、不可欠なものである。
 よって、以下質問する。

一 五月十三日、COP9に先だって行われたMOP4において、複数の非政府組織が連名で、カルタヘナ議定書に対する日本政府の対応に対して声明を発表した(会場で発行された「ECO」という非政府組織のフリーペーパーに掲載)。続いて十五日には、「敵対的なホスト国」、「名古屋以外ならどこでもよい」というチラシが会場内で配布された。これは十三日の声明が無視されたために、その批判として配布されたものである。
 これら一連の動きは、非政府組織が日本政府代表団の発言と態度をカルタヘナ議定書に対する合意を阻害する行為であると見なしていることを示している。さらには、COP10における議長国としての資質についても疑問を呈している。非政府組織は声明の中で、日本政府に対して地球全体の大局的な視点、合理的に説明が可能な発言、合意のための対話と調整を行うことを求めている。これらはCOP10の成功のために、日本政府として解決すべき問題であり、議長国として信頼回復を行うことは急務であると考えられる。
1 MOP4において、日本政府代表団が、いかなる発言を行ったのかを明らかにされたい。
2 MOP4及びその後のCOP9において、日本政府代表団は、次期議長国として、大局的な視点に立ち、合理的な説明が可能な発言や、合意のための対話や調整に努めたのかどうか、明らかにされたい。
3 あわせて、非政府組織に対して、積極的な対話と説明を行ったのかどうかについても明らかにされたい。そして、それらの努力を行っている場合は、その具体的内容を示されたい。

二 生物多様性条約では、現在「二〇一〇年目標」の達成を目指している。COP9開催国のドイツ政府は、目標達成のために「ライフウェブ・イニシアティブ」を提案し、二〇〇八年から二〇一二年の間に五億ユーロ、二〇一三年以降は毎年五億ユーロの拠出を表明している。これに対して、COP10の議長国である日本については、「二〇一〇年目標」達成に向けての明確な態度や具体的提案を示さず、六十八ヵ国に対して保護地域の支援増加を求める保護地域勧告十三条の削除を要求しているとして、非政府組織は批判している。

1 日本政府は、COP9において、「二〇一〇年目標」の実現についていかなる態度表明を行ったのかを示されたい。
2 保護地域勧告十三条の削除を要求したのは事実であるか明らかにされたい。事実である場合は、その理由を説明されたい。

三 ドイツ政府関係者は、COP9の財務会合において、唯一日本のみが、生物多様性条約の予算増に反対していると述べている。そのドイツ政府関係者は、日本政府は生物多様性条約の予算の約二割を拠出し、COP10開催国として各国から期待されているだけに、議長国としてのリーダーシップに疑念を抱いている。COP10の成功のためには、このような疑念は払拭すべきである。

1 日本政府は、生物多様性条約にどの程度の予算を拠出しているのか。主要な条約加盟国の拠出額と、総拠出額に占める各国の拠出額の割合を併せて示されたい。
2 COP9の財務会合において日本政府が予算増額に反対したことは事実であるのか。発言内容を明らかにされたい。また、反対したことが事実である場合、その理由を説明されたい。

四 五月二十八日から三十日には、COP9の閣僚級会合が行われたが、同時期に日本ではアフリカ開発会議(TICADⅣ)が開催された。このため、アフリカ諸国の環境大臣の一部は、COP9ではなく、TICADⅣに参加した。
 これについて、ドイツ政府とともにMOP4およびCOP9を運営するドイツの非政府組織は、このことに大きな失望と、日本政府がCOP9を妨害する意図を持っているのではないかという疑念を示した。このことはCOP10の成功にとって大きな障害である。
1 TICADに参加した各国の環境大臣の人数を明らかにされたい。
2 COP9と閣僚級会合とTICADの日程が重なっていることを認識していたのか、明らかにされたい。また、重複を避けるための日程調整や、COP9議長国であるドイツ政府との協議は行われたのかについても明らかにされたい。
3 今回の日程の重複という事態をどのように考えているのか、説明されたい。

五 非政府組織の会議への参加や発言については、国際連合が承認したものであり、また会議に対して一定の影響力を持つ無視し得ない存在となっている。COP10における非政府組織の参加をどのように認識しているのか、政府の基本的な考え方を明らかにされたい。

六 COP9においては、ドイツの非政府組織がドイツ政府に協力し、非政府組織の受入、意見調整等を行った。開催国において、政府が受入を担う非政府組織と連携をとることは、生物多様性条約の締約国会議や気候変動枠組条約の締約国会議などでは、重要な課題である。

1 現在、日本政府としてCOP10の受入を行う非政府組織と定期的に連絡や調整を行っている事実はあるのか、明らかにされたい。また、そのような連絡や調整は政府の側から積極的に働きかけて実現したものであるのか、あるいは非政府組織の呼びかけに対応したものであるのか、明らかにされたい。さらに、それら連絡や調整等を行っている場合には時期や内容を示されたい。
2 COP9において、日本の非政府組織との現地での連携を積極的に試みたのか、内容を含めて示されたい。

  右質問する。