質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一三〇号

市町村の合併に伴う市街化区域と市街化調整区域との区分に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年五月二十一日

水戸 将史   


       参議院議長 江田 五月 殿



   市町村の合併に伴う市街化区域と市街化調整区域との区分に関する質問主意書

 近年、静岡市、浜松市、新潟市など、市街地が中心の市町村と中山間地域を含む市町村との合併の結果政令指定都市(以下「政令市」という。)となった市が生まれてきている。都市計画法第七条によれば、政令市の区域の全部又は一部を含む都市計画区域においては、市街化区域と市街化調整区域との区分(通称「線引き」)を定める「ものとする」とされていることから、政令市においては、合併前の中山間地域を含む市町村の区域においても線引きする「ものとする」こととなる。
 しかしながら、合併前に線引きが行われていない中山間地域の市町村において新たに線引きを行うと、政令市になったからといって急速に市街化が進むとは限らないにもかかわらず、市街化区域になる地域においては、都市計画税が新たに課されるほか固定資産税が急激な増税となる場合があり、市街化調整区域となる地域においては一定以上の開発が制限され、相続税支払いが難しくなるといった、政令市になる以前には予想できなかった不利益を蒙る可能性がある。
 相模原市は、既に平成十九年三月までに旧津久井郡四町と合併が終了しており、平成二十二年四月の政令市施行を目指していると聞いているが、旧津久井郡のうち旧相模湖町及び旧藤野町(二町併せて一区域)、旧津久井町においてはそれぞれ都市計画区域が定められており、全て線引きは行われていない。また、これら旧三町の多くの地域は中山間地域にあり、政令市になったとしても急速に都市化が進むとは考えにくいと思われ、このような中で地元住民の意思に反して線引きを行うことは多くの住民にとって酷と考えられる。
 そこで、市町村の合併に伴う線引きについて、以下質問する。

一 成田市のように、「近郊整備地帯」を含む市町村とそれ以外の市町村が合併した場合は、合併前の複数の都市計画区域をそのまま残すことにより、前述のような問題が発生しないようにしている場合がある。この場合のように、都市計画法は一市町村内に複数の都市計画区域が定められることを排除していないが、市町村内の各地域ごとの事情の違いを踏まえ、一市町村内の複数の都市計画区域ごとに、線引きをする区域としない区域が発生することが認められる場合があると考えてよいか、見解を示されたい。

二 都市計画法第七条の制定当時、広大な中山間地域を含む政令市が生まれ、これらの都市計画区域で線引きする「ものとする」こととなることを想定していたか、見解を示されたい。

三 質問二において、「想定していた」場合、「既成市街地」や「近郊整備地帯」と、中山間地の両方を含む政令市の場合に、「市町村内の各地域ごとの事情の違いを踏まえ、一市町村内の複数の都市計画区域ごとに、線引きをする区域としない区域が発生すること」を禁止する合理的理由は何か、見解を示されたい。

四 1 現行の都市計画法の制定当時、政令指定都市が広域の中山間地域を含むようになることを想定していなかった可能性があるならば、合併により政令市になった場合であって、旧市町村の都市計画区域が「既成市街地」、「近郊整備地帯」のいずれにも含まれない場合には、線引きをしなくてもよいよう法令を改正すべきではないか。なお、その場合、都市計画法第七条に直接規定するのが本来であるが、都市計画法施行令第三条を改め、このような場合については「大都市に係る都市計画区域」に含まないことができるとの但し書きを新たに追加するのも一案と考えるが、見解を示されたい。
2 仮に、前記1の想定をしていなかった可能性があるにもかかわらず、法令改正をすべきでないとするならば、その合理的理由は何か、見解を示されたい。

五 1 仮に四のような法令改正が困難な場合は、線引きを回避できるよう少なくとも法令解釈によって対応すべきではないか。具体的には、都市計画法第七条は、政令指定都市の全部又は一部を含む都市計画区域において、「区域区分を定めるものとする」とされているが、「定めなければならない」とはされていない。市町村合併後に政令市となった場合、「既成市街地」、「近郊整備地帯」のいずれにも含まれない都市計画区域については、線引きを行わなくとも必ずしも法令に違背するものではないと考えてよいか、見解を示されたい。
2 仮に、四の想定をしていなかった可能性があり、法令も改正せず、前記1の法令解釈による対応もしないとするならば、時代の変遷を踏まえた法令施行がなされていないと言わざるを得ないが、その合理的理由は何か、見解を示されたい。

  右質問する。