質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一二六号

「調査捕鯨」鯨肉処理問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年五月十六日

喜納 昌吉   


       参議院議長 江田 五月 殿



   「調査捕鯨」鯨肉処理問題に関する質問主意書

 第二期南極海鯨類捕獲調査の第三次調査において、捕鯨船の傭船会社である共同船舶株式会社の社員である捕鯨母船日新丸の乗組員が、二〇〇八年四月十五日に同船が南極海より東京の水産物大井埠頭に帰港した際、「調査の副産物」である鯨肉の高級部位を選び、個人宅に大量に宅配していた事実が明るみに出た。捕鯨船の乗組員らによるこのような行為は、「公然の秘密」として大規模かつ長年にわたって行われていたとされる。環境保護団体グリーンピースジャパンが五月十五日に業務上横領容疑で東京地検に告発したように事は重大であり、国際的反響も小さくないと予想される。
 そこで、以下質問する。

一 鯨肉を所有し販売代行する共同船舶株式会社は、乗組員らが個人宅に配送した鯨肉を同乗組員らに公的に販売したのか、この事実関係を明らかにされたい。また、公的な販売行為が行われたのであれば、その公的販売記録と価格設定の詳細を明らかにされたい。

二 水産庁は、毎年その年に持ち帰られた鯨肉の価格を決定する六月以前にその年の鯨肉が出回ることはないとしている。このことから、日新丸が帰港した四月十五日の時点で鯨肉が乗組員らにより個人消費されることは、乗組員らによる国有財産の横領行為と考えられる。政府の見解を明らかにされたい。

三 二で指摘した横領行為の疑いが濃い乗組員らの鯨肉処理について全貌を明らかにするための第三者による調査を実施し、その情報を開示すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 「調査捕鯨」は、管轄官庁である水産庁や調査主体である財団法人日本鯨類研究所、そして捕鯨船の傭船会社である共同船舶株式会社が、科学とルールに基づいて行われているとして、その正当性を国内外に向けて主張し続けて来た。二〇〇八年一月二十三日の衆議院本会議で福田康夫内閣総理大臣も、調査捕鯨は国際捕鯨取締条約に従い公海上で実施する合法的な活動である、と発言している。この度の横領と呼ばれても仕方がないような不正行為は、政府の主張と食い違う。政府の見解を理由と共に明らかにされたい。

五 四で指摘した横領と見なされても仕方の無いような行為は、納税者の血税を不正な方法で使い、国内外の信頼を裏切るものであると考える。政府の見解を理由と共に明らかにされたい。

六 この横領と見なされうる行為は、乗組員らにより個人消費された鯨肉が大量であることや、長期にわたる塩蔵処理が船室内で行われていた事実、そして乗組員らによる鯨肉の個人消費が「公然の秘密」として大規模かつ長年にわたって行われていたという証言などがあり、捕鯨船の傭船会社であり、横領と見なされうる行為を行った乗組員を雇用する共同船舶株式会社の認知なしにはありえないと考えられる。これに関する政府の見解を理由と共に明らかにされたい。

七 このような不祥事と呼ぶべき問題を起こしてきた共同船舶株式会社は、国営調査の業務委託先企業として到底ふさわしくなく、政府は同社の捕鯨行為への関与を禁止すべきであると考える。政府の見解を理由と共に明らかにされたい。

八 調査捕鯨に絡む違法性が濃厚だと受け取れる事実が明らかになった今、政府は財団法人日本鯨類研究所への調査捕鯨に対する許可発行及び補助金交付を停止すべきだと考える。政府の見解を理由と共に明らかにされたい。

  右質問する。