質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一二三号

八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定根拠となる調査等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年五月十二日

大河原 雅子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定根拠となる調査等に関する質問主意書

 国土交通省(以下「国交省」という。)は、流域住民の安全を確保するため、日ごろよりさまざまな調査および対策を行っていると理解する。
 しかしながら、私が四月二十三日に提出した「八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定に関する質問主意書」に対する四月三十日の政府答弁(以下「答弁」という。)を読むと、異なった治水対策業務の成果が有機的に機能していない側面が見られる。
 治水対策とは、想定の困難な自然現象を相手に、ダムや堤防などのハードウェアの整備に、流域住民への関心啓発などのソフトウェアを組み合わせて行うものであり、そのすべては適切な現状把握の上に成り立つと考える。対策が現状に即したものでなければ、最悪の場合は、想定する被害は出ず、想定外の被害が生じることになりかねない。
 また、答弁は、国交省が八ツ場ダムの治水に係る便益は八千五百二十五億円であるとした根拠がブラックボックスに入ったままだとして質問したことに対する回答にはなっていない。
 そこで、国民の血税により国交省が行う種々の調査および対策が有機的に活用されているかどうかを確認するために、以下、質問する。

一 国交省関東地方整備局では、平成十八年までに各水系で堤防詳細点検を行ったと聞くが、そもそもこの「堤防詳細点検」の目的は何か。

二 「河川管理施設構造令」は何のために誰が定めているものか。

三 「堤防詳細点検」も「河川管理施設構造令」も、その目的は流域に暮らす人々の生命財産を守るための治水対策であると考えるが、もしそうではないというのであれば、そうではないという論拠を示されたい。

四 費用便益費比を算出する前提として、国交省は「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」している。答弁で、それらの破堤想定地点は左岸で六箇所、右岸で九箇所と明らかにした。これらの地点は、国交省が平成十八年までに利根川水系で行った堤防詳細点検では、どのような状態にあると確認されたか。「堤防詳細点検」で判明したことを各地点ごとに明らかにされたい。流域に暮らす住民にもわかるように表現されたい。

五 答弁では、群馬県邑楽郡明和町大輪地先と茨城県古河市中田地先の堤防は「河川管理施設構造令に基づく堤防の高さ及び天端幅の基準を満たしていない」としているが、基準を満たしていないことに対する対策の緊急性はどのようなものか、日、月、年などの分かりやすい時間軸で二地点それぞれについて明らかにされたい。

六 「河川管理施設構造令に基づく堤防の高さ及び天端幅の基準を満たしていない堤防は、国土交通省の測量結果によれば、群馬県邑楽郡明和町大輪地先及び茨城県古河市中田地先の二地点である」という答弁に出てくる「測量」とは、どのような機会、あるいはどのような業務として行ったものか。また、この費用はいくらで、予算書のどのような項目に含められているか、明らかにされたい。なお、測量業務全体もしくは関連業務全体でしか分からなければ、この二地点のみの測量費を切り分ける必要はなく全体の額を明らかにされたい。

七 答弁で「河川管理施設構造令に基づく堤防の高さ及び天端幅の基準を満たしていない堤防」とした二地点は、あくまで想定した各氾濫ブロックで「被害額が最大となる地点を破堤地点」のうちの二地点であると理解する。これらの二地点以外で、利根川本川及び支川における堤防で河川管理施設構造令に基づく堤防の高さ及び天端幅の基準を満たしていない地点があれば、そのすべてを明らかにされたい。

八 国交省関東地方整備局が平成十八年までに行った「堤防詳細点検」にかかった費用はいくらか。そのうち、利根川水系の「堤防詳細点検」にかかった費用はいくらか。また、この費用は予算書のどのような項目に含められているか、明らかにされたい。

九 答弁によれば、国交省は「『堤防詳細点検』は浸透に対する安全性を照査するものであり、安全に流下できると評価する水位を判定するためのものではないため、破堤地点又は越水地点の想定にその結果を反映していない」とする。この答弁は、同じ利根川水系の堤防の状態を把握するために、質問四の「堤防詳細点検」と質問六の「測量」を別々に行っており、それを互いに照らし合わせた利用を行っていないと理解するが間違いはないか。

十 少なくとも、八ツ場ダム事業の費用便益費比のもととなる被害の想定に「堤防詳細点検」の結果は反映されていない。被害想定を行うために非常に有効なはずの「堤防詳細点検」結果が利用されないのは税金の無駄遣いではないのか。予算編成の観点、行政評価の観点からどのように考えるか、それぞれ見解を明らかにされたい。

  右質問する。