質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一二二号

保険約款に対する監督における具体的判断基準に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年五月九日

前川 清成   


       参議院議長 江田 五月 殿



   保険約款に対する監督における具体的判断基準に関する質問主意書

 小職は、政府提出の「保険法案」の審議の用に供するべく、金融庁に対して、生命保険や、自動車保険、火災保険等保険契約において、契約者、保険金受取人等の消費者が不当に不利益とならないよう、金融庁が保険約款に関して、どのような指導、監督を実施しているのか、その際の基準はいかなるものか、保険未払い等が再発しないよう徹底した指導、監督、処分を実施したか等について説明と資料の提出を求めていた。
 ところが、小職は、金融庁担当者に対して、平成二十年三月二十八日、同年四月三日、同月十六日と三度に亘って右趣旨等を説明したにもかかわらず、金融庁は小職が求める十分な資料を提出しないなど要領を得ず、また何故か、右四月十六日には、三井住友海上火災株式会社の社員を同行するなど、監督の公正さに疑念を抱かざるを得ない対応にも接したため、同年四月十七日、「生命保険、損害保険等の約款に対する監督に関する質問主意書」(以下、前回質問主意書という)を提出した。
 しかし、これに対する答弁書に至っても条文等を引き写したに過ぎず、具体的判断基準等は一切記載されていない。それ故、この答弁書を読む限り、金融庁による保険会社各社の約款に対する指導、監督は、明確なルールに基づくことなく実施されていると感じざるを得ず、加えて、右の通り一部保険会社とは緊密に連絡を取り合っている様子に照らすと、監督の公正さ、中立性にも深刻な疑念を抱かざるを得ない。
 加えて、前記答弁書のまさに「木で鼻をくくった」かの如き記載は、国会議員の質問権に対する「挑戦」とも解される。
 そこで、以下の通り質問する。

一 前回質問主意書に対する答弁書において、金融庁の具体的監督基準の一つとして示された「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれのないものであること」とは、どのような意味か。

二 右基準における「保険契約者等」の範囲を具体的に列挙されたい。

三 前記基準において、「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠ける」とは、いかなる場合か。
 どのような判断基準を用いて、「保護に欠ける」か、否かを判断しているのか、また、その判断は、いかなる調査、検討を経て、誰が行っているのか、答弁されたい。

四 前記基準が「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるものではないこと」ではなく、「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれのないものであること」と定められているのは何故か。
 また「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるものではないこと」ではなく、「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれのないものであること」と定められていることによって、その具体的適用にはいかなる差異が生じるのか。
 これまでに具体的適用に差異が生じた約款があれば、前記理由と、右差異に加えて、その条項も示されたい。

五 これまでに金融庁が現に「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれ」があると判断した約款は存在するか。
 存在する場合、その約款の条項と、何故「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれ」があると判断したか、その判断理由を答弁されたい。

六 前回質問主意書に対する答弁書において、金融庁の具体的監督基準の一つとして示された「保険契約の内容に関し特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものではないこと」とは、どのような意味か。

七 「不当な差別的取扱い」とは、いかなる場合か。
 どのような判断基準を用いて、「不当な差別的取扱い」か、否かを判断しているのか、また、その判断は、いかなる調査、検討を経て、誰が行っているのか、答弁されたい。

八 右基準が「保険契約の内容に関し特定の者に対して差別的取扱いをするものではないこと」ではなく、「保険契約の内容に関し特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものではないこと」と定められているのは何故か。
 また「保険契約の内容に関し特定の者に対して差別的取扱いをするものではないこと」ではなく、「保険契約の内容に関し特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものではないこと」と定められていることによって、その具体的適用にはいかなる差異が生じるのか。
 これまでに具体的適用に差異が生じた約款があれば、前記理由と、右差異に加えて、その条項も示されたい。

九 同一の保険契約でありながらも、特定の範囲に属する者らの保険料を割り引く制度が存在するが、右制度は「特定の者に対して不当な差別的取扱いをすること」に該当しないのか。
 結論と、理由を示されたい。

十 前回質問主意書に対する答弁書において、金融庁の具体的監督基準の一つとして示された「保険契約の内容が公の秩序又は善良の風俗を害する行為を助長し、又は誘発するおそれのないものであること」とは、どのような意味か。

十一 右基準の「公の秩序又は善良の風俗を害する行為」がいかなるものかは、時代の変化に応じて、また変容するのではないか。そうであれば、どのようにして「公の秩序又は善良の風俗を害する行為」か否かを判断するのか。

十二 前記基準にいう「行為を助長」するとは、いかなる意味か。
 どのような判断基準を用いて、「助長」するか、否かを判断しているのか、また、その判断は、いかなる調査、検討を経て、誰が行っているのか、答弁されたい。

十三 前記基準にいう「誘発する」とは、いかなる意味か。
 どのような判断基準を用いて、「誘発する」か、否かを判断しているのか、また、その判断は、いかなる調査、検討を経て、誰が行っているのか、答弁されたい。

十四 前記基準が「助長し又は誘発する」ではなく、「助長し又は誘発するおそれ」と定められているのは何故か。
 また「助長し又は誘発する」ではなく、「助長し又は誘発するおそれ」と定められていることによって、その具体的適用にはいかなる差異が生じるのか。
 これまでに具体的適用に差異が生じた約款があれば、前記理由と、右差異に加えて、その条項も示されたい。

十五 これまでに金融庁が「保険契約の内容が公の秩序又は善良の風俗を害する行為を助長し、又は誘発するおそれ」があると判断した約款は存在するか。
 存在する場合、その約款の条項と、何故「保険契約の内容が公の秩序又は善良の風俗を害する行為を助長し、又は誘発するおそれ」があると判断したか、その判断理由を答弁されたい。

十六 前回質問主意書に対する答弁書において、金融庁の具体的監督基準の一つとして示された「保険契約者等の権利義務その他保険契約の内容が保険契約者等にとって明確かつ平易に定められたものであること」とは、どのような意味か。

十七 右基準に言う「保険契約者等」の範囲を具体的に列挙されたい。

十八 前記基準に言う「明確かつ平易」とはいかなる意味か。
 どのような判断基準を用いて、「明確かつ平易」か、否かを判断しているのか、また、その判断は、いかなる調査、検討を経て、誰が行っているのか、答弁されたい。

十九 前記基準において「権利義務その他保険契約の内容」とあるが、ここに言う「権利」と「義務」と「その他」の範囲を具体的に示されたい。

二十 現在、保険会社が契約者等に交付している約款は、いずれも「明確かつ平易」か。

二十一 これまでに金融庁が「保険契約者等の権利義務その他保険契約の内容が保険契約者等にとって明確かつ平易に定められたもの」ではないと判断した約款は存在するか。
 存在する場合、その約款の条項と、何故「保険契約者等の権利義務その他保険契約の内容が保険契約者等にとって明確かつ平易に定められたもの」ではないと判断したか、その判断理由を答弁されたい。

二十二 前回質問主意書に対する答弁書において、金融庁の具体的監督基準の一つとして示された「保険契約の内容が保険契約者等の需要及び利便に適合した妥当なものであること」とは、どのような意味か。

二十三 右基準に言う「保険契約者等」の範囲を具体的に列挙されたい。

二十四 前記基準に言う「需要」とは何か。

二十五 前記基準に言う「利便」とは何か。

二十六 これまでに金融庁が「保険契約の内容が保険契約者等の需要及び利便に適合した妥当なもの」ではないと判断した約款は存在するか。
 存在する場合、その約款の条項と、何故「保険契約の内容が保険契約者等の需要及び利便に適合した妥当なもの」ではないと判断したか、その判断理由を答弁されたい。

二十七 いわゆる「変額保険」とはいかなるものか。

二十八 「変額保険」も「保険契約の内容が保険契約者等の需要及び利便に適合した妥当なものである」と判断したか。
 結論と、理由を示されたい。

二十九 前回質問主意書に対する答弁書において、金融庁の具体的監督基準の一つとして示された「保険契約の解約による返戻金の開示方法が保険契約者等の保護に欠けるおそれのない適正なものであり、かつ、明瞭に定められている」とは、どのような意味か。

三十 右基準における「保険契約者等」の範囲を具体的に列挙されたい。

三十一 前記基準において「保険契約者等の保護に欠ける」とは、いかなる意味か。
 どのような判断基準を用いて、「保護に欠ける」か、否かを判断しているのか、また、その判断は、いかなる調査、検討を経て、誰が行っているのか、答弁されたい。

三十二 前記基準が「保険契約者等の保護に欠けるものではない適正なもの」ではなく、「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれのない適正なもの」であることと定められているのは何故か。
 また「保険契約者等の保護に欠けるものではない適正なもの」ではなく、「保険契約の内容が保険契約者等の保護に欠けるおそれのない適正なもの」と定められていることによって、その具体的適用にはいかなる差異が生じるのか。
 これまでに具体的適用に差異が生じた約款があれば、前記理由と、右差異に加えて、その条項も示されたい。

三十三 前記基準に言う「明瞭」の意味と、「保険契約者等の権利義務その他保険契約の内容が保険契約者等にとって明確かつ平易に定められたものであること」との基準における「明確かつ平易」とでは、意味が異なるのか。
 意味が異なるのであれば、具体的な適用に当たって、いかなる差異が生じるのか、明らかにされたい。

三十四 これまでに金融庁が現に「保険契約の解約による返戻金の開示方法が保険契約者等の保護に欠けるおそれのない適正なものであり、かつ、明瞭に定められて」いないと判断した約款は存在するか。
 存在する場合、その約款の条項と、何故「保険契約の解約による返戻金の開示方法が保険契約者等の保護に欠けるおそれのない適正なものであり、かつ、明瞭に定められて」いないと判断したか、その判断理由を答弁されたい。

三十五 保険金の支払時期に関する監督基準は存在しないのか。

三十六 前回質問主意書に対する答弁書の末尾から三行目に「こと、などが定められている」とあるが、ここに言う「など」はいかなる趣旨か。
 日本語の通常の用い方としては、答弁書に列挙した基準のほかにも基準が存在する場合に「など」と記載するが、右の「など」も同様か。

三十七 前回質問主意書に対する答弁書の末尾に言う「保険会社向けの総合的な監督指針」とは何か。

三十八 「保険会社向けの総合的な監督指針」に敢えて言及しながらも、その内容を記載しないのは何故か。

三十九 前回質問主意書に対する答弁書の末尾に言う「保険商品審査上の留意点等」とは何か。

四十 前記の通り小職は、平成二十年三月二十八日、同年四月三日、同月十六日と三度に亘って資料の提供等を求めたにもかかわらず、何故、「保険会社向けの総合的な監督指針」や「保険商品審査上の留意点等」については隠蔽したか。

  右質問する。