質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一一五号

航空自衛隊のイラク派遣に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年四月二十八日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   航空自衛隊のイラク派遣に関する質問主意書

 名古屋高等裁判所は、去る四月十七日、航空自衛隊のイラク派遣について、イラク復興支援特別措置法(以下、「イラク特措法」という。)に違反し、憲法第九条第一項に違反する行為がなされている旨の判決(以下、「判決」という。)を言い渡した。
 判決では、イラク特措法は、自衛隊の活動は人道復興支援のため「非戦闘地域」で武力行使とは一体化しないと規定しているものの、実際には航空自衛隊は米国からの要請を受け、定期的にクウェートのアリ・アッサーレム空港からバグダッド空港へ武装した多国籍軍兵員を輸送しているが、バグダッドはイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当し、また、戦闘要員を含むと推認される多国籍軍の武装兵員の輸送は、現代戦において戦闘行為にとって必要不可欠な事実上の後方支援となり、他国による武力行使と一体化した行動であると事実認定を行い、こうした行為は非戦闘地域に活動を限定したイラク特措法から逸脱し、武力行使を禁じた憲法第九条に違反するとした。特に、判決では、国の主張をも踏まえた上で「バグダッドは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し物を破壊する行為が現に行われている地域というべきで、イラク特措法にいう『戦闘地域』に該当する」と認定しており、国政上、極めて重要な判断が示されたものであり、重く受け止める必要がある。
 政府部内では、判決主文は国が勝訴しており、前記指摘は判決の傍論に過ぎないので無視するとの意見も聞かれるが、被告(被控訴人)であった国もイラク派遣の実態について十分に主張立証を行った上での高裁の事実認定であり、容易に無視できるものではない。
 よって、同判決を踏まえた政府の姿勢について以下のとおり質問する。

一 名古屋高等裁判所が航空自衛隊のイラクでの輸送支援活動を違憲とした以上、このまま継続すべきではなく、いったん撤退をしたうえで、同判決を真摯に踏まえた検討が必要ではないか。政府は、判決をどのように踏まえているか、またイラク情勢をどのように分析し、航空自衛隊のイラクからの撤退をどのように検討するか、明らかにされたい。

二 航空自衛隊の田母神俊雄航空幕僚長は、翌十八日の会見で、判決に対して「そんなの関係ねえ」と発言したと報じられている。事実とすれば極めて不謹慎な発言ではないか。政府はこうした発言を確認したうえ何らかの注意ないしは指導をしたか、明らかにされたい。

三 同航空幕僚長は、バグダッド空港については、「予断を許さない状況だと思う。ただ自衛隊が戦いに巻き込まれる危険はない」と発言しているが、政府も同様の認識であるか、明らかにされたい。

四 政府は、以前から、首都バグダッドが戦闘地域か非戦闘地域かの判断はしていないが、少なくとも「バグダッド空港と輸送機が飛ぶ経路は非戦闘地域」としていた。政府は、判決の指摘にもかかわらず、バグダッド空港およびクウェートからバグダッドまでの空路はすべて非戦闘地域であるとの認識の当否について、見直しの検討ないしは変更はしないか。バグダッド空港周辺では多数の死傷者を伴ういわゆるテロ事件が何度も発生しており、政府も把握していると思われるが、それでもバグダッド空港は非戦闘地域であると強弁するのであれば、その根拠を明確にされたい。

  右質問する。