質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一一四号

八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年四月二十三日

大河原 雅子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   八ツ場ダムの洪水調節に係る便益の算定に関する質問主意書

 今年の一月二十三日の参議院本会議で、八ツ場ダム事業は当初計画から比べ、完成年度は十五年遅れで二〇一五年度、総建設事業費は倍増して四千六百億円に膨れ上がり、基金事業や起債の利息を含めると総額が八千八百億円にも達し、日本史上最高額のダムになることを私は指摘した。完成年度や事業費が当初の想定から大きくずれたことを鑑みれば、事業の妥当性を改めて厳正に検証する必要がある。
 昨年十二月、国土交通省関東地方整備局は、事業評価監視委員会で治水に関する費用便益費比の概要を明らかにし、治水に係る便益は八千五百二十五億円であるとした。そのうち、「洪水調節に係る便益の算定」として「ダムによる年平均被害軽減想定額として」八千二百七十六億円と計上した。この総定額は、治水経済調査マニュアル(案)(平成十七年四月)に基づいて算定されたことが分かっているが、その算定の前提は不明である。
 たとえば、治水経済調査マニュアル(案)は「被害防止便益の算定にあたっては、幾つかの想定が必要」であるとし、その一つ「破堤地点の想定」については、「堤防が機能しなくなる地点(破堤地点や越水地点)を想定する必要がある」とする。また、その地点は、「氾濫ブロック毎に被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」することになっているが、具体的にそれがどこを指すのかは、事業評価監視委員会では明らかにされなかったため、必要性の判断のもととなるこれらの重要な想定についてはブラックボックスに入ったままである。
 利根川流域住民の安全確保や意識喚起、さらには納税者に対する河川管理者としての責務を果たすためには、これら想定について、誰もが分かる平易かつ明解な言葉で説明される必要がある。
 そこで、以下、質問する。

一 想定のもととなっている洪水の規模を明らかにされたい。

二 利根川水系ではいくつの氾濫ブロックが想定されているか。

三 その各ブロックにおいて、「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」した地点はどこか。地名とともに、下流から何キロメートル地点の右岸、または左岸などと、可能な限り分かりやすく示されたい。

四 今現在、これら「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」した地点の堤防の状況はどのようなものか。

五 国土交通省関東地方整備局では、平成十八年までに各水系で堤防詳細点検を行ったと聞くが、「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」は、利根川の堤防の点検で判明した結果を反映させたものかどうかを明らかにされたい。反映をしていないとすると、「被害額が最大となる地点を破堤地点として想定」する際、どのように想定したのかを分かりやすく示されたい。

六 八ツ場ダムが建設され、想定通りの降雨があった場合、想定した各氾濫ブロックで「被害額が最大となる地点」を流れる流量は、どの程度、軽減されるのか。流量および水位によって示されたい。

七 平成二十年度予算案の策定にあたり、財務省は八ツ場ダムの治水に関する費用便益費比は二・九であるという説明を受けたか。受けたとしたら一から六のような詳細についても説明があったかどうかを明らかにされたい。

  右質問する。