質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇二号

六ヶ所再処理工場の本格稼働に関する国の再評価に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年四月十五日

福島 みずほ   


       参議院議長 江田 五月 殿



   六ヶ所再処理工場の本格稼働に関する国の再評価に関する質問主意書

 日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)の計画によれば、六ヶ所再処理工場が今年五月にも本格稼働されると言われている。平成一九年七月国の安全審査の想定を超えた地震波が観測された中越沖地震によって、柏崎刈羽原発では敷地地盤はもとより原子炉等の機器類、建屋に甚大な被害を受け、本年二月末で三三三三件の損傷箇所が報告されている。この柏崎刈羽原発の地震被害以来地元では、国の安全審査や耐震安全性について、住民はもとより今まで国の原子力行政に協力してきた自治体関係者の間にも不安は大きくなっている。また、原発施設における事故の多発、ミスを隠ぺいする体質、情報公開が徹底していないことなど、国や電力会社などへの信頼も大きく損なわれている。
 こうした中で六ヶ所再処理工場が本格稼働されるにあたり、使用前検査が実施されているが、その検査の基準、チェック方法についても、万全の体制で実施され、住民の不安を払拭する方式であるとは認めがたい。また、地域住民の生活への影響についても、住民の不安はあらゆる点で増大するばかりである。
 そこで、以下質問する。

一 耐震設計のいわゆるバックチェックについて

1 六ヶ所再処理工場の耐震安全について、原子力安全・保安院はどのようなチェックをどこまで行っているのか。六ヶ所再処理工場の設計・建設は、旧耐震指針に基づいて行われたが、原子力安全委員会の耐震指針の改訂によって、どのような耐震チェックが行われているのか。
2 現在、新潟中越沖地震と原子力施設の安全性について、原子力安全・保安院、原子力委員会等で様々な検討が行われている最中である。例えば原子力安全委員会では、地質・地盤に関する安全審査の手引きの改訂作業が行われている。このような審査の指針・手引きの改訂が、六ヶ所再処理工場の耐震バックチェック(耐震安全性評価)にどのように反映されるのか。さらに現在進められている耐震評価作業はいつ頃に終了予定か。
3 六ヶ所再処理工場が立地する下北半島を含む東北地方は、太平洋プレートがオホーツクプレートの下に潜り込むプレート運動のある地域であり、地震活動の活発な地域となっている。下北半島沖合には崖の高さが二〇〇メートル以上、長さ約八四キロ、東落ちの断層(名称・大陸棚外縁の断層)が存在している。
(一) 活断層の資料として高い評価を得ている活断層研究会編集の「日本の活断層」においては、この断層は活動度の高い活断層と認定されている。しかし、六ヶ所再処理工場の安全審査では、評価対象とされていない。その理由を明らかにされたい。
(二) この活断層が動けばマグニチュード八以上の地震が起きる可能性も指摘されており、本来なら評価するべき活断層であると考えられる。六ヶ所再処理工場の耐震バックチェックに、この活断層を新たに加えて設計の安全性を再評価するべきではないか。
4 使用前検査が合格すれば稼働させる、との方針を国は取っているが、新しい知見を含んだ新耐震指針、手引きは何のためにあるのか。前記1、2で提起した新指針や手引き、活断層を評価対象に組み込んだ上での検討が終了しない限り、本格稼働させるべきではないと考えるが、いかがか。
5 平成一九年四月に明らかになった六ヶ所再処理工場のチャンネルボックス(使用済み核燃料貯蔵プールからせん断施設に搬入するための配管)等の耐震計算の誤りを、過去に国は見逃していた。日本原燃の耐震バックチェック報告書の設備機器類の耐震計算が間違っている可能性を否定することはできない。そのため、国がすべての耐震計算を再計算し直すべきだと考えるが、その再計算の実施予定はあるのか。すべての設備機器類の再計算を行わない場合は、その理由を示されたい。また、すべての設備機器類の再計算を行わない場合、一部だけでも再計算するのであれば、全体の何割程度の再計算をするのか。一部の再計算を行った場合、その部分が選ばれた理由を説明されたい。

二 アクティブ試験について

1 日本原燃は本年二月四日、原子力安全・保安院に「アクティブ試験第4ステップにおける高レベル廃液ガラス固化設備の試験状況報告」を提出した。第4ステップの試験計画では、高レベル廃液ガラス固化設備の試験において、AとBの二系統が安定的に運転できることを確認するとしていたが、昨年末にA系統の溶融炉でトラブルが発生し、十分な試験結果を得ることができず、追加データの取得が行われた状況である。この日本原燃の報告では、A系統、B系統、両者の試験が順調に行われたことに対する報告がなされねばならないものの、A系統での不十分な試験結果、さらにB系統では全く試験をしていない状態のままで、保安院が日本原燃から報告を受領した理由はなにか。
2 第4ステップにおいて、ガラス固化が順調に行われていないことが明らかになった。
(一) アクティブ試験第4ステップのガラス固化体製造試験の中で、通常の高レベル廃液とガラスビーズを混合した溶融ガラスの流下作業によって製造されたガラス固化体は平成二〇年三月三一日現在で何本か、またこれらのガラス固化体の組成(ガラスと高レベル廃液等の組成)について、明らかにされたい。
(二) その他の状況、例えばガラスの抜き出し等の作業によって製造されたガラス固化体は何本あるか、またこのような通常の流下作業以外で製造されたガラス固化体品の品質は、どのようになっているか、ガラスと高レベル廃液等の組成についても明らかにされたい。
(三) これら通常の流下作業以外で製造されたガラス固化体は、中間貯蔵や最終処分をどのように行うのか。
3 日本原燃のガラス固化体設備に関する報告が不十分であることは明白であり、第4ステップの試験結果を合格と判定することはできない。しかし、原子力安全・保安院および核燃料サイクル安全小委員会は、日本原燃のガラス固化状況報告を承認し、アクティブ試験の第5ステップに入ることを容認した。どのような理由から、第5ステップに入ることを認めたのか、明確にその根拠を示されたい。
4 国は、第4ステップの試験結果が十分でないとの理由から、「具体的な運転方法」等について追加報告するよう日本原燃に条件をつけた。アクティブ試験ではそれぞれの試験項目に判定基準がある。日本原燃に要請した追加報告の内容と、それらの「報告」等提出後評価を行う場合の基準を明らかにされたい。また、その評価基準をクリアできない場合は、六ヶ所再処理工場の本格稼動を許可しないということになるのか。
5 ガラス固化作業が必要な基準を満たしていなければ、何万年もの貯蔵にはとても耐えられない欠陥ガラス固化体が生じる可能性もある。六ヶ所再処理工場が将来稼働を開始した際、ガラス固化体製造に不測の事故が起きた場合、危険な高レベル放射性廃液が長期間貯蔵される事態が想定される。高レベル廃液の貯蔵は工場の安全にどのような影響が生ずるのか、その想定される事態を説明されたい。
6 ガラス固化の確実安全な技術がないにもかかわらず再処理を続け、高レベル放射性廃液を廃液のままで溜めておくのは大変危険である。
(一) 六ヶ所再処理工場の高レベル廃液の貯蔵可能な量は、どのくらいか。廃液タンクの数、貯蔵量を明らかにされたい。
(二) 高レベル廃液は、事故により爆発する可能性もある。廃液がタンクに満杯となった状態で地震などにより電源を失った際、どのように対処するか。ガラス固化技術がない中で進んだ第5ステップにおける防災対策を、具体的に明らかにされたい。

三 地域住民の生活の安全・安心について

1 六ヶ所再処理工場から放射性廃液を海に流すことになるが、東北産の食べ物、特に東北太平洋沿岸の海産物に対する風評被害が起こり、地元経済に打撃を与えることも心配される。事前に放射能による食品汚染の問題について、情報共有するために関係省庁等と検討会議などを行ったか。行った場合は、時期と共有した情報内容などを示されたい。
2 平成一九年四月再処理工場に近い尾駮沼の二地点から採取した水から、一リットル当たり二から三ベクレルのトリチウムが検出された(それまではすべて数値として示されない「定量下限値未満」であった。)。最新の尾鮫沼における水質検査の時期と、その結果についてのトリチウム数値を示されたい。また、「一リットル当たり何ベクレル」が許容基準となっているか。
3 サーファーや漁業関係者、工場周辺の子どもたちのために、放射能の放出予告をサイレンや掲示板表記などで事前に行う計画はないか。特に子供は放射能の影響を受けやすく、事前の警告を行い、成長期における子どもの身体への影響を最小限にするべきである。事前警告ができない場合、その理由は何か。
4 再処理工場から排出される放射能濃度がどの程度になれば、工場周辺の地域に対して注意・警告を呼びかけるのか。具体的な防災対策、排出濃度基準を明示されたい。
5 再処理工場から海洋に放出される放射濃度について、その規制値はいくつか、またその値は海洋のどこで測定することとしているのか。また、今まで再処理工場周辺で海洋環境のモニタリング調査した結果について、測定時期、測定場所、想定対象、対象核種とその測定値を明らかにされたい。

  右質問する。