質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇一号

地上デジタル放送への移行に伴う都市受信障害対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年四月十四日

福山 哲郎   


       参議院議長 江田 五月 殿



   地上デジタル放送への移行に伴う都市受信障害対策に関する質問主意書

 二〇一一年七月二十五日からの地上デジタル放送への移行に伴い、高層建築物等による受信障害への対策として施設改修等の対応が必要とされている。しかし、この施設改修等については、当事者間の協議で費用負担等が決定するとはいえ、参考となる実例や学説、判例も蓄積されておらず、社会慣行として定着するにいたっていないことを総務省も認めている。現状のままでは、受信障害施設の設置について不要な混乱を招きかねないのではないかと危惧している。
 そのような見地から、以下のとおり質問する。

一 地上デジタル放送への移行に伴う都市受信障害対策用共聴施設の改修について、総務省は通達(平成十八年十一月二十七日総情域第一五一号)において、当該対策施設の維持管理責任を有している所有者(マンションの場合は管理組合)と受信者とを当事者とする協議によって決定されることとしている。しかし、調整役も存在せず、しかも費用負担を伴うものであることから、協議が円滑に進まないことは容易に推測できる。当事者間の協議が不調で結論を得ることができない場合、共聴施設の改修は実施できなくなるのではないかと危惧する。二〇一一年七月二十四日までに改修できない場合、テレビ放送を受信できない世帯が生じる可能性があるが、総務省は当事者間の協議を円滑に進めるための対策を用意しているのか、明らかにされたい。

二 地上デジタル放送の開始に伴い、全国の受信障害世帯数は、およそ十分の一程度に減少するとのことであるが、総務省は、具体的にどの地域の受信障害が解消され、どの地域の受信障害が残るかの調査を行っているのか。どのような調査を行い、結果はどのようなものであったのか、明らかにされたい。
 また、総務省は受信障害範囲の調査について、通達(平成十八年十一月二十七日総情域第一五一号)において、所有者が主体的に実施することが望ましいとしているが、そのように判断する根拠は何か、具体的に示されたい。

三 これまでのアナログ放送において、受信障害対策施設を設置したマンションは、建設当初は電波障害の原因建物であったかもしれないが、その後、周辺に多くのマンションやビルが建設され、現時点で、電波障害の原因建物のままであるとは必ずしもいえない。また、アナログ方式から地上デジタル方式に変更するのは、携帯電話の周波数が不足すること等への対応という目的も含め、国の施策として実施されるものである。それにも関わらず、デジタル放送化に係る受信障害の調査を所有者の費用負担で実施するよう求めたり、施設改修を当事者の負担のみで行わせることは不適切との指摘もあるが、政府の見解を示されたい。

四 各高速道路株式会社は、自社のホームページ等を通じて、沿道環境対策の一環としてのテレビ受信障害対策について、既にアナログ方式によるテレビ受信対策を行った地域あるいは世帯については、デジタル方式によるテレビ受信障害対策を行わないと明確に述べている。各高速道路株式会社はその判断の根拠として「公共施設の設置に起因するテレビジョン電波受信障害により生ずる損害等にかかる費用負担について」(昭和五十四年十月十二日建設省計用発第三五号)をあげている。一方、先述した通り、総務省は通達において、マンション管理組合をはじめとする高層建築物等の所有者に対して、受信障害範囲の調査や受信障害対策用共聴施設の改修に係る費用負担及び同施設維持管理の費用と責任を求めている。両者は矛盾するものではないのか、政府の見解を明らかにされたい。また、矛盾しないとする場合、なぜ各高速道路株式会社は総務省通達の適用外となるのか合理的な根拠を示されたい。

五 電波受信障害が解消した世帯においては、新たに地上デジタル放送を受信するためにUHFアンテナ、チューナー等の設置が必要となる一方、当初、アナログ受信障害対策施設を設置したマンションにおいては、これらの設備を撤去しなければならなくなる。これらの費用の負担についての政府の見解を示されたい。

六 地上デジタル放送への移行に伴い難視聴となる地域が発生することがすでに判明しているが、これらの地域では、新たに受信障害対策用の共聴施設を設置しなければならなくなる。また既存の受信障害対策施設のある地域においても当事者間の協議が成立し、受信障害対策施設の改修が実施できるようになったとしても、多額の費用負担を強いられることになる。政府において、これらに対する財政支援措置を講ずることを検討しているのか、検討の有無の判断理由とともに明らかにされたい。

七 政府の予定では、二〇一一年七月二十四日をもって、アナログ放送は停波されることになっている。したがって、この時までに共聴施設の改修を終えておかなければ、翌日からテレビを見ることがまったくできなくなってしまう。既に生活の一部になっているテレビ放送を突然断ち切られることになると、現在の都市受信対策用共聴施設の改修状況からみて、アナログ停波は国民生活に大きな混乱を招くことになるのではないかと危惧している。このような現状及び世界各国の事例を考慮した上で、二〇一一年七月二十四日以降のアナログ放送の継続について、政府の見解を示されたい。

  右質問する。