質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第八四号

高速増殖炉サイクルに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年三月二十八日

福島 みずほ   


       参議院議長 江田 五月 殿



   高速増殖炉サイクルに関する質問主意書

 現在、改造工事が終わった「もんじゅ」では、「工事確認試験」が平成十九年八月三十日に終了しており、現在進行中の「プラント確認試験」を経て、本年十月には臨界を予定している。
 ポスト「もんじゅ」の動きもすでに始まっているが、「もんじゅ」後継機は炉の基本デザインが「もんじゅ」とは異なる事から、「もんじゅ」の存在意義に強い疑念を抱かざるを得ない。そして、政府が行うべき「もんじゅ」の必要性に関する検証が極めて不十分と言わざるを得ない。また、ブッシュ政権が提起している国際原子力エネルギー・パートナーシップ(以下「GNEP」という。)等との関係においても、今後「もんじゅ」が如何なる役割を果たそうというのかも多々不明である。
 また、原子力安全・保安院は、日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)に対して、平成十八年九月に策定された新たな耐震設計審査指針に照らして「もんじゅ」の耐震安全性の評価(バックチェック)を指示し、加えて、平成十九年七月に発生した新潟県中越沖地震を踏まえ、バックチェック実施計画の前倒しを行うことを指示している。これを受け、原子力機構は、「もんじゅ」の耐震安全性評価の報告時期を変更し、平成二十年三月までに報告することとしている。他の原子力発電所の事業者も、三月に一斉に耐震バックチェック報告書を提出するが、これらが「中間報告」であることに比べ、原子力機構は「最終報告」となっている。しかしながら、中越沖地震によって柏崎刈羽原発が如何なる影響を被ったかは、ようやくこれから本格的な調査が始まるところであり、中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災状況から得られる新知見を、三月の耐震バックチェック「中間報告」に適切に反映させることは到底不可能であり、それはその後の「最終報告」には反映させうるとしても、「もんじゅ」の場合、「最終報告」ゆえ全く無理であることは言うまでもない。
 そこで、「もんじゅ」及び関連する「常陽」その他の関連施設に関連して、経費、安全性、使用計画等を含めて、さらに、「もんじゅ」の耐震バックチェックについても併せて、以下質問する。

一 もんじゅの開発予算について

1 原子力機構は七の事業推進部門、九の研究開発部門、大きく分けて十一の研究開発拠点を有するが、このうち、高速増殖炉サイクルの研究開発に係わる全てのセクションを示されたい。
2 1の高速増殖炉サイクルの研究開発に係わる全てのセクションで、各部門、拠点毎に原子力機構設立当初から二〇〇八年度までの全経費(二〇〇七年度までは実績額、二〇〇八年度は予算額)を人件費を含めて年度ごとに示されたい。
3 動力炉・核燃料開発事業団にさかのぼる原子力機構の前身時期を含めて、次の事業毎に高速増殖炉サイクルの研究開発に要した全経費(二〇〇七年度までは実績額、二〇〇八年度は予算額)を初年度から二〇〇八年度まで明らかにされたい。
(一) 高速増殖炉本体について
(1) 「常陽」の開発総経費について実験機器に要した費用、建設費、維持費、補修費、その他項目毎
(2) 「もんじゅ」の開発総経費について実験機器に要した費用、建設費、改造工事費、維持費、改造工事外の修理費、その他項目毎
 なお、「実験機器に要した費用」には、基礎実験を含む全ての試験用機器の開発、設計、製造に要した費用、運転、維持管理などの費用、試験結果の解析等の計算費などを含むこととされたい。
(二) その他
(1) 「常陽」並びに「もんじゅ」の燃料開発・製造に係わる施設の建設、運転、維持管理費用等について項目毎
(2) 再処理施設の研究開発、建設、運転、維持管理費等を項目毎
(3) リサイクル機器試験施設(以下「RETF」という。)の施設建設費、維持費等について項目毎

二 もんじゅ関連のプロジェクトについて

1 RETFに関して、現状並びに今後の取り扱いについて説明されたい。
2 「もんじゅ」の使用済み燃料をどうするのか、具体的計画を説明されたい。また、再処理を行うのであれば、どこでどのように行うのか、具体的計画を説明されたい。
3 「常陽」の使用済みブランケットは現在どうなっているのか、今後どうするつもりか、再処理する計画の有無を含めて説明されたい。

三 もんじゅの安全性と耐震バックチェックについて

1 冷却系配管の内面検査について、配管内にカメラを挿入して目視調査したのは全配管のうち何パーセントか。
2 蒸気発生器伝熱管の欠陥検査について、「もんじゅ」の蒸気発生器伝熱管の健全性を調べるECT探傷装置は精度が悪く、現状では小さな亀裂やピンホールなど径の小さい穴は検出できないことを原子力機構も認めている(二〇〇七年十月、敦賀市内で開催された原子力機構主催の公開討論会にて)。また、伝熱管の支持部や曲がり部の欠陥検出も困難である。現状は、水漏れが起こり、ナトリウム・水反応をキャッチすることで結果として亀裂等を知るという方策しかない。安全対策上、事前に不具合を正確にキャッチするシステムがないことは重大な欠陥であるが、このようなシステムでは重大事故を未然に防止できないのではないか。
3 長期停止中の燃料組成の変化(アメリシウム二四一の増加)について、長期停止中に燃料中のアメリシウム二四一の含有率が増え、世界的にも前例のない組成の燃料となっている。このような燃料の健全性には深刻な疑問がある。すくなくとも、事前の照射実験によって総合的に確認すべきではないか。
4 もんじゅは高温の熱応力に対応するため配管の厚みが小さくなっており、軽水炉に比べても耐震設計は厳しくなっている。近時の断層評価の見直し、中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災を踏まえた新指針対応のバックチェックにおいて安全性の確認を行うことが運転再開の前提となると考えるがどうか。
5 現時点においても、中越沖地震によって得られた知見を今後の耐震安全評価にどのように反映させるか、国としての見解は示されておらず、このスケジュールでは、現在検討が進められている中越沖地震等による柏崎刈羽原発の被災状況から得られる新知見を適切に反映したバックチェックが可能であるとは到底考えられない。国における中越沖地震の検討終了後にバックチェックを全面的に実施すべきであり、今後の運転再開のための計画も見直すべきではないか。

四 今後の高速増殖炉開発について

1 「もんじゅ」の再稼働で、運転目的として、①発電プラントとしての信頼性実証、②ナトリウム取扱技術の確立、が掲げられているが、いかなる試験が予定されているのか、具体的に項目等を説明されたい。
2 1で予定されている試験が「常陽」や別の代替施設ではなく「もんじゅ」でなければならない決定的理由があるのか。危機的な国家財政の中で、あえて「常陽」と二つとも稼働し続けるほどの必要性があるのか。政府の認識を示されたい。

五 その他について

1 二〇〇六年五月、米エネルギー省長官と文部科学大臣とで合意された核燃料開発など五分野での日米研究協力と、二〇〇七年四月、日米間で合意された「日米原子力エネルギー共同行動計画」との関係を説明されたい。
2 GNEP構想に基づく日米間の研究開発協力において、日米原子力協定で禁じた機微技術(第二条一項(b))に抵触するものは何か。

  右質問する。