質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第八〇号

岩国市に対する新市庁舎建設補助金等の支給に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年三月二十四日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   岩国市に対する新市庁舎建設補助金等の支給に関する質問主意書

 岩国市に対する新市庁舎建設補助金は、米軍再編に伴う岩国基地への空母艦載機移転に反対する意思を明らかにした井原勝介前市長のもとで支給凍結された結果、同前市長が辞任したうえ、艦載機移転容認か否かをめぐっての市長選挙まで行われ、移転反対を訴えていた井原前市長が移転容認の福田良彦新市長に敗れるという結果になった。しかし、地方自治体の市長が米軍再編に協力すると補助金を支給し、協力しなければ補助金を凍結するとなれば、国が、いわば補助金凍結という手段によって地方自治体の生殺与奪権を握ることになってしまう。これでは地方自治体は、法律上、国と対等といいながら実質的には国の支配下に置かれるに等しい。二〇〇〇年四月施行の地方分権一括法によって国と地方は対等となった以上、同法の趣旨をゆがめるような補助金支給の運用は厳しく戒めなければならないと考える。
 よって、以下のとおり質問する。

一 岩国市に対する新市庁舎建設補助金は、一九九六年の日米特別行動委員会(SACO)の合意に基づき、米軍普天間飛行場から空中給油機十二機と米兵約三百人を受け入れる見返りとして、二〇〇六年度までの二年間で計十四億円が支給されていたと理解しているがそのとおりか。つまり、もともとは米軍再編とは必ずしも関連してはいなかったものではないか、明らかにされたい。

二 二〇〇六年二月に岩国市で実施された住民投票の結果を受けて井原前市長が米軍再編に伴う岩国基地への空母艦載機移転反対の姿勢を示し始めるや補助金の支給を拒否するようになったが、補助金支給凍結の理由は何か。艦載機移転を容認しないことが補助金支給凍結の理由になったのではないか、明らかにされたい。

三 政府は、二〇〇七年になって、前記一の補助金の名目を米軍再編の協力自治体に支給する「再編交付金」と同等の扱いに変更したのではないか。変更したとすれば、それはどのような法的根拠によって行ったものか明らかにされたい。また、変更していないとすれば、前記一の補助金の性格内容には全く変化はないと理解して良いか、政府の見解を示されたい。

四 井原前市長が艦載機移転反対の姿勢を明らかにしたのは、もともと岩国基地の米軍兵力拡充強化について、歴代防衛庁(当時)長官が約束していた地元への事前相談を無視したことを契機に、これ以上の基地機能強化は受け入れ難い旨の表明からであった。とすれば、元はと言えば、国と地方との信頼関係を先に破壊したのは国ではないかとも考えられ、こうした点をも考慮すれば、国が艦載機移転を容認しなければ補助金を凍結するということは、まさに地方分権一括法によって対等とされた地方自治体の存在を劣位に置くものであり、同法の趣旨に反するものと考えるが、政府の見解を求める。

五 政府は去る三月一二日、福田新市長に、凍結していた新市庁舎建設補助金と再編交付金の支給を伝えたとの報道がなされている。補助金の凍結解除及び交付金の支給に至った理由を明らかにされたい。

六 政府は、今後とも政府の方針に従わない地方自治体への各種補助金の支給については、支給の凍結を強行する意向であるか、それとも補助金の支給の有無に当たってはあくまで国と地方は対等であるとの原則を遵守して決定する意向であるか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。