質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第七九号

有機大豆の国産奨励と米の生産調整に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年三月二十四日

谷 博之   


       参議院議長 江田 五月 殿



   有機大豆の国産奨励と米の生産調整に関する質問主意書

 米価の安定は焦眉の急であるが、そのための二〇〇七年度補正予算による地域水田農業活性化緊急対策について、僅かな退職金で農民を首切りするようなものとの批判が、栃木県内の農業者から上がっている。この緊急対策は、二〇〇八年産の米価下落を避けるためとの理由で、二〇〇七年度補正予算で五〇〇億円の予算を組み、全国で一〇万ヘクタールの生産調整を目標に、一〇アールあたり五万円又は三万円の緊急一時金で生産調整面積の拡大をはかるという施策である。
 そこで、以下質問する。

一 この緊急対策は、これまでぎりぎりの生産調整に協力してきた真面目な農業者に怒りと失望を与えたとの批判がある。結果として生産調整を拒否してきた農業者が優遇され、いわゆる「ゴネ得」となっている施策ではないか。政府の見解を明らかにされたい。

二 将来の経営の見通しも示されないまま、やみくもに生産調整を行えと五万円を提示され、しかもわずかに一月足らずの間に契約書を締結し、報告しろというのは、行政の横暴であり、農業者を馬鹿にしているとの怒りが広がっていると聞いている。一〇万ヘクタールの生産調整によって具体的に自給率がどれだけ向上し、生産調整に参加する農業者の経営の安定的な発展の見通しがどのようなものになるのか、政府の見解を明らかにされたい。

三 補正予算五〇〇億円の予算消化のメドはあるのか。このまま推移すれば大幅に使い残すことになりかねないのではないか。

四 輸入農産物の価格高騰と安全性が疑問視される事態の中で、国内産農産物、なかでも有機農産物への需要は年々拡大している。毒入り餃子事件を機に、JAS有機加工食品であっても原材料が中国などからの輸入品であることに不安を感じる消費者が増えている。一方で、有機農産物の国内生産は停滞しており、国内自給率は低下の一方である。有機大豆に至っては国内自給率は一・五パーセントしかない。今後味噌や醤油の加工業者を含め、国産有機大豆を求める声は強くなっていくものと考えるが、このことについての政府の見解と、有機大豆の生産振興、自給率向上についての今後の具体的な政府の取り組みについて明らかにされたい。

五 有機農業推進法が施行されて、農業者の過半数が有機農業への転換を希望する時代になってきた。一方で、五年間にわたる有機農業関係者の研究と実践で、大豆跡のイネには強害雑草がほとんど発生しないことが明らかになった。具体的には北関東の例では六月から七月にかけて水田の三分の一に大豆を作付けし、収穫後はそのままにしておいて翌年そこにイネを作付けし、裏作に有機麦を栽培する、という農法である。この農法による雑草防除効果について、政府が得ている知見について明らかにされたい。

六 五の農法を経営面から見た場合、一〇アールあたり有機米で約一四万円、有機大豆で六万円、有機麦で七万円の粗収益が確保され、米の生産調整もスムースに図られると考えるが、政府の見解を示されたい。

七 需要量に見合った有機大豆を国内で確保するには、約三万ヘクタールの面積が必要であり、その分そのまま新たな生産調整が可能になると考えるが政府の見解を明らかにされたい。

八 現状の国産有機大豆の価格では加工業者が購入しにくいという問題がある。そこで三で触れた補正予算五〇〇億円の一部を、大豆の収穫や調整機器の導入補助等に充て、生産調整面積の拡大と有機大豆の生産奨励を同時に追求するべきではないか。

九 味噌・醤油・豆腐・納豆などの加工業者に購入奨励金を手当てするなど、国産有機大豆の消費拡大に振り当てる方策も、農水省と経産省で連携して検討するべきではないか。

十 麦・大豆・加工用イネなどへの転作は、国内自給率向上のために重要でありながら、作付転換によって稲作農家がより一層の経営危機に見舞われる恐れがある。この際、有機農業への転換を同時に奨励することによって、転作後も経営が成り立つような生産調整策を大胆に展開するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。