質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第七八号

小農いじめの農政改革に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年三月二十四日

谷 博之   


       参議院議長 江田 五月 殿



   小農いじめの農政改革に関する質問主意書

 昨今のいわゆる農政改革は小農いじめであって、規模拡大できなければ農業をやめねばならぬ、何するにも書類の山に取り組まねばならぬという怨嗟の声が、津々浦々から聞こえてくる。また改革の柱とする水田経営所得安定対策(旧品目横断的経営安定対策)とは表裏一体の関係にあるとされる米政策改革に関しては、集荷円滑化対策に参加せずに米の生産調整の助成・ほてん金を受けたいという声が、米を消費者に産地直売している栃木県内の農業者から上がっている。
 そこで、以下質問する。

一 改革の柱として二〇〇七年度より実施されている水田経営所得安定対策(旧品目横断的経営安定対策)に関し、その事務手続きが極めて繁雑であるとの意見が二〇〇六年の申請段階から農業者の間に満ち満ちていた。そこで私は二〇〇六年一〇月二六日の参議院農林水産委員会において、申請手続きの簡素化や交付金の一括仮払いを提案したところ、松岡農林水産大臣から前向きな答弁があった。ところが実際に農林水産省がそれらの取り組みを決めたのは、参議院選挙で農政改革に対する国民の審判が下った後さらに半年近くが経った二〇〇七年一二月二〇日のことであるが、なぜすぐに実施できなかったのか。

二 水田経営所得安定対策と車の両輪として、同じく二〇〇七年度より実施されている農地・水・環境保全向上対策に関し、その事務手続きが極めて繁雑であるとの意見が未だに農業者の間に満ちている。事務補助員を雇わねばならぬほどだとの意見さえある。実際に対策事業の実施主体で事務補助員を雇っているケースは何件あるか、都道府県等にも問いあわせた上で、明らかにされたい。

三 政府は、二〇〇七年末に簡易マニュアルを作成し、二〇〇七年度の報告から農地・水・環境保全向上対策の事務手続きを半減しているとのことだが、その情報は年度末の報告書作成事務に苦しんでいる当事者に十分に行き渡り、報告書作成事務を実際に軽減していると考えているか。

四 二〇〇七年も末になってから、書類の簡易マニュアルを作成し、現行五項目ある報告書類のうち「活動参加人数」と「遊休農地面積」の二項目は提出しなくてもよいとのことだが、そもそもすでに大半の実施主体では初年度の活動を年内に終えており、まじめに「活動参加人数」と「遊休農地面積」の二項目について記録をつけてきた者が大半であり、今年度はほとんど何の利点もない。

1 「二〇〇七年度分から事務手続きを簡素化していますよ」とのアピールは、単なる農林水産省のアリバイ工作ではないか。
2 記録をまとめる段階になって、初年度からいきなり提出しなくてもいいですよ、というのでは、そもそも必要のない事務手続きを要求していた行政に瑕疵があったと認めたということに相違ないか。

五 二〇〇八年度以降、水田経営所得安定対策及び農地・水・環境保全向上対策について、さらなる事務手続きの簡素化の必要性について、政府の見解を明らかにされたい。

六 これまでも長く実施されてきた米の生産調整の助成・ほてん金について、集荷円滑化対策への加入をそれらの交付要件にしたのは何年度からか。またその本当の理由は何か。

七 農業者自らが米の生産調整方針を作るか、既存の方針作成事業者に参加すれば、集荷円滑化対策に参加でき、生産調整の助成・ほてん金を受けられるとのことだが、今回、自分で生産調整方針を作る規模要件を二〇トンから一気に三〇〇キログラムまで下げた狙いは何か。

八 農業者自らが米の生産調整方針を作成し、地域水田協議会で内容のチェックを受け、次に農政事務所の出先に出向き、認定を受けてもらい、契約書類一式を記入し、農政事務所を通してそれを東京麹町の米穀安定供給確保支援機構に提出し、集荷円滑化対策契約後は米穀安定供給確保支援機構と直接連絡を取り、拠出金を支払うといった繁雑で面倒な手続きを、米を三〇〇キログラム程度しか生産せず、パソコンも所有していないような小規模農家が苦労することなく自前でできると政府は考えているのか。

九 小規模な米の産直農家にも、個人で生産調整方針を作ってもらうには、単に規模要件を引き下げるだけではなく、一層の事務手続きの簡素化などが不可欠と考えるがいかがか。

十 そもそも集荷円滑化対策は米の生産調整策の一部に過ぎず、集荷円滑化対策に参加しない生産者にも米の生産調整に参加してもらうことは、米価安定に資することとなり、全農にとってもJA組合員にとっても有意義ではないのか。政府の見解を明らかにされたい。

十一 なぜ集荷円滑化対策への加入を生産調整の助成・ほてんを受ける要件にこだわり、全農に米を売っていない農業者が生産調整に参加しようとすることに対し、わざわざ敷居を高くするのか。政府の見解を明らかにされたい。

十二 前記七に関し、既存の方針作成事業者に加入する場合、加入要件として事業者への出荷義務はないが、事業者が商売をしている以上、多少は米の取引をせざるを得ないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。