質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第七七号

公共事業における予算査定の根拠に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年三月二十四日

富岡 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   公共事業における予算査定の根拠に関する質問主意書

 政府の推計では便益が費用を上回っているにもかかわらず、交通量の芳しくない道路が多く見られるように、費用便益分析の結果と実態が乖離した公共事業が散見される。これは政府により作り出された需要に基づいて、公共事業が実施されるためであり、その結果多くの国民の税金が無駄に費消されている。さらに、道路特定財源に見られるように、道路整備の実態と税収が乖離した結果、多額の税金が不正な目的に利用されているという現実がある。このような政府の姿勢は、納税者の理解を到底得られるものではない。
 よって、以下のとおり質問する。

一 道路事業における費用便益分析について、東京湾アクアライン、本州四国連絡道路は、これまでも議論されてきたように、計画交通量に対して実際の交通量が大幅に下回っているのが現状である。それにもかかわらず、費用便益比はそれぞれ一・九及び一・七という数値が示されているところである。両道路の費用便益比の根拠となるデータを明らかにされたい。また、両道路の建設について、どのようなデータに基づいて建設を決断したのか。その根拠データもあわせて明らかにされたい。

二 北関東自動車道(伊勢崎・岩舟ジャンクション間)及び国道十七号線高松町交差点付近の立体交差に対する費用便益分析の結果及び根拠データを示されたい。

三 費用便益分析を行う際の便益の算出に当たっては、走行時間短縮便益、走行経費減少便益、交通事故減少便益の三種類の便益が計算される。それらを計算する際、時間価値原単位及び走行経費原単位が用いられている。これらの原単位は、国土交通省道路局により、常に精査・更新されているものと承知している。時間価値原単位及び走行経費原単位の算定に当たっての構成要素とその根拠データを明らかにされたい。

四 時間価値原単位及び走行経費原単位が決定されるに当たっては、国土交通省所管公共事業の新規事業採択時評価実施要領に基づき設置されている「道路事業評価手法検討委員会」において審議されていると承知している。原単位の設定、改訂等に関する審議経過を明らかにされたい。

五 「道路事業評価手法検討委員会」のメンバーを見ると、委員長の森地茂政策研究大学院大学教授は、道路事業とも大いに関係のある社会資本整備審議会、さらにその審議会の下にある道路分科会等のメンバーも兼任しており、メンバー自体は学者ではあるものの、国土交通省の意向に沿った意見を述べる人を集めているのではないかとの疑念を抱かざるを得ない。そこで、道路事業評価手法検討委員会の委員の選定方法及び委員全員についての選定理由を明らかにされたい。また委員全員について、国土交通省関係の審議会等の兼務状況も明らかにされたい。

六 最近における費用便益分析における、費用便益比の分布を示されたい。なお、新規事業採択時、再評価時、事後評価時のそれぞれに分類して示されたい。

七 二月二十八日の衆議院予算委員会において「便益が費用を上回る場合に限り整備する」、つまり、費用便益比が一・〇以上であれば整備をするとの見解が示されたところである。しかしながら東京湾アクアライン、本州四国連絡道路を見ても通行量が芳しくないにもかかわらず、開通後の事後評価で費用便益比が一・九、一・七となっており、便益が費用を辛うじて上回る費用便益比一・〇程度で道路建設を進めた場合、実際にほとんど通行されないこともあり得るのではないのか。費用便益比と交通量との関係についてどのように認識しているのか見解を示されたい。

八 国土交通省のホームページで公表されている新規事業採択時評価は、平成十九年度分が約九十件掲載されている。これら約九十件のうち費用便益比が一・〇を超えている場合は無条件で事業が着工されるのか、あるいは費用便益比の高いものから事業が着工されているのか具体的な事業着工の基準を明らかにされたい。また、同じく平成十九年度において費用便益比が一・〇を超えているにもかかわらず、事業が着工されていない事例はどの程度あるのか。またその理由を明らかにされたい。

九 八ツ場ダムは、昭和四十二年に建設が決定されてから四十年余りの年月が経過しているにもかかわらず、ダム本体の工事は未だに始まっていない状況にある。ましてや計画が三回も変更されてきた上に、ダム本体の高さを縮小して工期が五年延長される有様である。こうした変更をする以上、事業評価を実施した上での判断と考えるが、その評価内容を明らかにされたい。またその際の費用便益分析の結果及び根拠データを示されたい。

十 国土交通省においては、平成十年から費用便益分析に基づく事業評価が行われていると承知するが、八ツ場ダムについては現在までに何回か再評価が行われているものと推察するが、その際の費用便益分析の結果及び根拠データもあわせてすべて示されたい。

十一 これまで予算委員会を始めとして、道路特定財源について多くの無駄遣いが指摘されてきたところである。職員宿舎、職員の福利厚生費の一部として野球グラブの購入、マッサージチェアの購入、道路ミュージカルの上演等多岐にわたっているが、これらの道路特定財源の不適切な使用例について、直轄の事業費、庁費の中で計上されていると承知するが、事業別の細目、金額等を明らかにされたい。
 なお、事業別の細目、金額等については、平成十八年度道路整備特別会計予算及び決算、平成十九年度道路整備特別会計予算並びに二十年度社会資本整備事業特別会計予算を対象とされたい。社会資本整備事業特別会計については、各勘定共通経費は業務勘定にまとめられていることもあり、業務勘定中の道路特定財源を活用した部分を対象とされたい。

十二 国土交通省内に「道路関係業務の執行のあり方改革本部」を設置し、そこで、契約方式の見直しの徹底、公益法人の組織のあり方、公益法人に対する指導監督の徹底、支出の適正化等について点検・検討が行われていると承知している。目下のところいつまでに結論を出そうとしているのか。結論については国民への公表は当然のこととして、国会にも報告してしかるべきと考えるが対応方針について明らかにされたい。

十三 冬柴国土交通大臣は、道路特定財源による不適切な使用例に対する答弁で、予算委員会を始め再三再四、「恥ずかしい思いをした、庶民の目線から見て直ちにやめる」旨の発言をされている。その一方不適切な使用例は次から次へと出てきているのが実態である。これまでの質疑、報道等で発表されている以外にも、不適切な使用例は多数存在するものと疑わざるを得ない。道路関係業務の執行のあり方改革本部において、道路特定財源の支出のあり方について一からすべて洗い直しているものと推察するが、現在までに判明した新たな不適切な使用例があれば明らかにされたい。

  右質問する。