質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第七三号

介護ベッド並びに業務用ベッドの手すりによる重大製品事故に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年三月十七日

谷 博之   


       参議院議長 江田 五月 殿



   介護ベッド並びに業務用ベッドの手すりによる重大製品事故に関する質問主意書

 昨年五月十四日に改正消費生活用製品安全法が施行されて以降、介護ベッド用手すりに関する重大製品事故が本年二月一日までに五件報告されており、二月十五日に経済産業省は注意喚起を行っている。さらに二月九日にも島根県出雲市で八十歳代の女性が介護ベッドの介助バーに寝間着の首の部分が引っかかり、窒息死する事故があったと承知している。一方、同じ出雲市内の民間病院で本年一月に、ベッドの手すりに首が挟まって八十五歳の女性患者が窒息死していたが、この事故(以下「出雲の事故」という。)のことは島根県に報告は上がったものの、国は三月三日に報道があるまで知らなかったとしている。
 そこで、以下質問する。

一 医療法の施行規則第十二条に基づき、医療機関における事故については、二〇〇五年度から、医療事故等情報収集事業として、厚生労働大臣の登録機関である(財)医療機能評価機構に対して病院から報告することになっていると承知している。しかし、その対象は大規模な公的医療機関と任意参加の民間病院のみであり、今回の出雲の事故のような重大製品事故であっても、一民間医療機関からの情報は国に上がる仕組みになっていないと承知するが、事実か。

二 経済産業省は三月三日の出雲の事故報道に接してすぐに、島根県に確認し、製造元のメーカーを把握して連絡を取り、当該製品が医療機関向けの業務用であって一般には販売されていないものであり、消費生活用製品安全法の対象外であることを確認したと聞いているが事実か。また、それ以降、業界団体に情報収集等をしていると聞いているが、それはどのような法的根拠の下に、誰の利益保護のために、今後具体的にどのような行政行為を行うつもりか。

三 介護保険制度の担当である厚生労働省老健局(以下「老健局」という。)は、三月三日の出雲の事故報道に接し、情報収集を開始したとのことだが、いわゆる介護ベッドではなく、介護保険適用の施設ではないにもかかわらず、あえて情報収集することとした理由は何か。また同様に業務用ベッドを使用していると思われる介護保険適用施設に対し、今後具体的にどのような行政行為を行うつもりか。

四 経済産業省や老健局の対応と比べ、医療機関内での事故について国の担当であるはずの厚生労働省医政局(以下「医政局」という。)の対応は、ちぐはぐである。医療法第二十五条に基づき、三月五日の昼に島根県から連絡があるまで医政局は出雲の事故を把握していなかったというのは事実か。また、医政局はなぜ三月三日に出雲の事故が全国報道された際、速やかに島根県に問合せるなどの情報収集を自ら行わなかったのか。そのような対応は全く問題がなかったと考えているか。

五 私が島根県に問いあわせたところ、出雲の事故が起きた一月の時点で病院から任意で情報が上がり、事実を把握していたが、報道機関から情報公開請求があるまで、国に報告も公表もしなかったとの回答であった。その後全国に報道されたからという理由で、三月になってから国に情報提供したとのことだが、この対応が適切だったかどうかについて、政府の見解を明らかにされたい。また、出雲の事故把握後、一月中に速やかに県から国に報告されるべきだったとは考えていないのか。

六 島根県は県内の医療機関から任意で情報を集めている中で、出雲の事故を把握したと聞いている。医療は自治事務であるとの理由から、医療機関から都道府県、都道府県から国への、いわゆる製品安全四法の対象外であって、医療機器以外の製品による重大製品事故についての報告義務は法律上定められていないとのことだが、今後もこの仕組みを変える必要はないと考えているか。

七 厚生労働省は今回、島根県からの連絡を受けて、今後どのような対応をとるつもりか検討していたところ、三月十日、広島赤十字・原爆病院は類似の死亡事故(以下「広島の事故」という。)が二月十七日に発生していたと発表した。そこで医政局はあわてて翌十一日に都道府県に向けて、注意喚起を行ったところだが、もし出雲の事故が速やかに県から国に報告され、国が他の都道府県に対してこのような注意喚起を一月中に行っていれば、広島の事故は防げたのではないか。広島の事故について国にどのような責任があるのか、政府の見解を明らかにされたい。

八 出雲の事故及び広島の事故が起きた業務用ベッドの製造者はパラマウントベッド株式会社であり、改正消費生活用製品安全法の施行以降に起こった介護ベッド用手すりによる重大製品事故五件のうち二件がやはり同社の製品であった。しかし同社は、出雲の事故及び広島の事故について、報道があるまで一般に公表せず、国にも報告してこなかったが、これは製品の消費者及び利用者に対する企業の社会的責任として不適切ではなかったか。政府の見解を明らかにされたい。

九 出雲の事故及び広島の事故は重大な事故であると政府は認識しているか。二〇〇七年六月十四日に医政局長から発出された知事宛の通知文(医政発第〇六一四〇〇四号)でいうところの、①重大な医療関係法規の違反、②管理上重大な事故、③軽微な事故であっても参考になると判断される事案、のいずれかに出雲の事故及び広島の事故は該当するのか、しないのか、政府の見解を明らかにされたい。

十 厚生労働省は在宅での介護ベッドによる類似の重大製品事故について経済産業省から情報を得ており、二月十五日に老健局から都道府県に対して注意喚起をしている。この注意喚起が、広島県では介護保険担当部署にしか伝わっていなかったと考えられるが、医療機関担当の部署にも伝わっていれば、二月十七日の広島の事故は未然に防げたのではないか。

十一 今回広島の事故が起きたベッドの製造販売会社は、二〇〇一年より類似の事故を把握しており、予防策としてプラスチック製安全装置の装着を奨励していたが、広島で亡くなった男性のベッドには付いていなかったとのことである。このことに対し、広島赤十字・原爆病院の院長は報道機関に「病院にも責任があると考えている」と話しているが、国及び県の責任はないのか。

十二 介護保険適用施設内で、出雲や広島における業務用ベッドの手すりによる死亡事故のような、いわゆる製品安全四法の対象外であって、医療機器以外の製品による重大製品事故が起きた場合、国や都道府県がその事実を把握する仕組みはあるか。

十三 消費生活用製品安全法が改正され報告義務が課されたので、その対象となった介護ベッドを使う在宅介護の現場での死亡事故が、最近急に多く見うけられるだけで、業務用かそうでないかを問わず、また在宅か施設内かを問わず、ベッドの手すりによる死亡事故は以前からあったのではないか。そこで以下の1から3について都道府県や製造・輸入業者、及びその業界団体に照会の上、都道府県毎に、製造・輸入業者名と件数を明らかにされたい。

1 過去十年間の、介護施設における介護ベッド並びに業務用ベッドの手すりによる重大製品事故
2 過去十年間の、医療機関における介護ベッド並びに業務用ベッドの手すりによる重大製品事故
3 過去十年間の、在宅における介護ベッドの手すりによる重大製品事故

十四 出雲の事故及び広島の事故が全国に報道された理由について、政府はどのように考えるか。

十五 消費生活用製品安全法第二条第一項において、消費生活用製品が定義されているが、製品が消費生活用製品かどうか、或いはいわゆる製品安全四法の対象であって、重大製品事故の報告義務があるかないかは製造・輸入業者が自主的に判断することになっているところが問題であり、この仕組みを変えるべきではないのか。また、製品安全四法の対象外の製品であっても、重大製品事故については一律に、消費者並びに患者等製品の利用者保護の観点から、製造・輸入事業者から国に対する報告義務と一般消費者及び製品利用者への迅速な事実公表の義務を課すべきではないのか。

十六 製品安全四法の対象外の製品による重大製品事故についての情報把握並びに再発防止のための情報提供について、国が負うべき責任はあると考えているか。ないとすれば、なぜか。あるとすれば、なぜ消費生活用製品と業務用製品でその製品事故に対する国の責任の程度に差があるのか。

十七 ベッドや車椅子など、医療機器以外の患者が使用する製品管理について、介護保険適用施設ではしっかりとその使用履歴の記録や消毒等が行われている一方で、医療機関では繁忙なこともあって、きわめてずさんに管理されているのではないかとの指摘があるが、このことについても政府は調査を行い、都道府県及び医療機関に対し、改善を求めるべきではないか。

  右質問する。