質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第四一号

アウトソーシング業界における社会保険に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年二月二十日

谷 博之   


       参議院議長 江田 五月 殿



   アウトソーシング業界における社会保険に関する質問主意書

 近年、グローバル競争の激化や規制緩和等、企業と労働者を取り巻く環境の変化に伴い、とりわけ製造業の現場において、派遣労働者や請負労働者が急激に増えている。昨年八月に経済産業省が発表した「モノ作りを支える人材関連サービスの高度化に向けた研究会とりまとめ」によると、「物の製造に係る派遣労働者数が十一・六万人、請負労働者数が八十六・六万人、併せて九十八・二万人の外部人材が働いている」とのことであり、今や製造現場の労働者の二割が派遣や請負労働者である。
 これらの外部人材を供給する人材ビジネス事業者の中には、請負発注者・派遣先と結託し、利益最優先・コスト削減優先の原理により、労働者の社会保険加入を疎かにしたり、いわゆる「偽装請負」という形で事業展開を進める悪質な事業主が相当数存在している。その結果、遵法主義を貫く人材ビジネス事業者は競争に勝てず、経営危機に直面する事態も生じている。まさに「悪貨が良貨を駆逐する」状態である。そんな中、公表されている日雇派遣労働者の雇用の安定等を図るために派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針(案)(以下、「指針案」という。)の中で社会保険、とりわけ健康保険法上の諸課題について以下、質問する。

一 厚生労働省の二〇〇五年九月の派遣労働者実態調査結果によると、派遣労働者の七・九パーセントが労働・社会保険に加入してほしいと回答している。一方で、アウトソーシング業界においては、請負事業主・派遣事業主の実に九十七パーセント以上の事業主が社会保険未加入との情報が流れていると聞いている。政府は派遣労働者並びに請負労働者はそれぞれ、どのくらいの割合が雇用保険、健康保険、厚生年金保険に加入していると認識しているのか。厚生労働省が行った二〇〇五年度の労働力需給制度についてのアンケート調査結果も踏まえ、政府の見解を明らかにされたい。

二 健康保険法では、健康保険法施行規則百四十五条に基づき、日雇労働者を雇用している事業主は、被保険者本人からの日雇特例被保険者手帳の提示がなくても、健康保険印紙購入通帳の申請が義務であると承知しているが事実か。

三 日雇派遣(スポット派遣)を行っている事業主は、健康保険印紙購入通帳の申請を、被保険者本人からの日雇特例被保険者手帳の提示がなくても、あらかじめ行うべきではないか。

四 昨年二月に株式会社フルキャストから雇用保険印紙購入通帳の交付申請を厚生労働省が受けて以降、株式会社フルキャストをはじめとする日雇派遣事業主に対して健康保険印紙購入通帳の交付申請を指導してこなかったのは、職業安定局と保険局の連携不足であり、厚生労働行政の怠慢なのではないか。

五 日雇派遣(スポット派遣)を行っている事業主において、社会保険の適用を逃れるために二ヶ月間の契約が横行している事実を政府は掴んでいるか。掴んでいるとすればその実態を明らかにされたい。

六 労働者派遣事業の許可を受けている事業主から、これまで健康保険法第三条二項に基づく日雇特例被保険者健康保険適用除外承認申請が提出されたケースはほとんどないと承知しているが、あるとすれば年度毎の件数を明らかにされたい。

七 指針案では、日雇派遣労働者の定義として、雇用保険法の定義を準用し「日々又は三十日以内の期間を定めて雇用される者」としているが、健康保険法では、二ヶ月以内の期間を定めて使用される者が日雇特例被保険者制度の対象となっている。なぜこのような違いが生じているのか。

八 右七の制度の違いを悪用した二ヶ月契約が横行している現状に鑑み、指針案における日雇派遣労働者の定義を「二ヶ月以内」に改めて、二ヶ月以内の契約を複数の派遣元事業主と繰り返して働くことで生計を立てているような派遣労働者についても、指針案による権利保護を図るべきではないか。

九 総務省勧告にもある通り、雇用保険と社会保険の行政事務の一本化がなかなか進んでいないが、健康保険法上の日雇特例被保険者手帳並びに雇用保険法上の日雇労働被保険者手帳の一本化を検討するべきではないか。

  右質問する。