質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第二三号

経済産業事務次官の発言に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年二月八日

大久保 勉   


       参議院議長 江田 五月 殿



   経済産業事務次官の発言に関する質問主意書

 北畑隆生経済産業事務次官(以下、「経産次官」という)は、一月二十五日に行った財団法人経済産業調査会主催の講演会「企業は株主のものか?│企業買収防衛策・外為法改正・企業のかたち研究会│」(以下、「講演会」という)で、株主や社外取締役を批判したと伝えられている。これが事実であるとすれば、日本の経済及び産業への投資環境に大きな悪影響を及ぼしかねないと懸念する。
 よって、以下の質問をする。

一 この講演会での経産次官の発言内容及び質疑応答の内容を全て明らかにされたい。

二 経産次官は講演会で、一般もしくは特定の株主について「危ない表現をすると」しつつ、「能力がない」「配当を要求する強欲な方」などと述べたと伝えられている。これは事実であるか、明らかにされたい。事実であるとすれば、「能力がない」と判断した根拠を明らかにするとともに、これが政府の見解と同一であるか、明らかにされたい。さらに、株式の保有期間の長短に関わらず、株主が配当を要求することは会社法で定められた当然の権利であるから、これを「強欲」とする価値判断には疑問があるが、政府の見解を示されたい。加えて、経産次官の発言が政府の見解と同一であるとすれば、会社法で定められている株主の能力及び配当の要求に対する疑問であるから、政府は同法について、一般もしくは特定の株主の権利等を制限する方向及び配当の要求を不可とする方向で改正することを視野に入れていると理解してよいか、併せて見解を示されたい。

三 経産次官は講演会で、社外取締役について「役に立たない」などと否定的見解を述べたと伝えられている。これは事実であるか、明らかにされたい。事実であるとすれば、これは政府の見解と同一であるか、明らかにされたい。なお、政府の見解と同一であるとすれば、会社法で定められている社外取締役に対する疑問であるから、政府は同法について、社外取締役に関する規定を削除もしくは役割を限定する方向で改正することを視野に入れていると理解してよいか、併せて見解を示されたい。

四 経産次官の講演内容は、「関係者によって尊重され、企業社会の行動規範となる」ことを期待したものと考えてよいか、政府の見解を示されたい。

五 日本は言論の自由が保障された民主主義社会であるから、行政府の高官といえども個人的意見を述べる自由が存在すること自体に何ら疑いはない。しかし、職務内容に密接に関連した分野の場合は、個人的意見であっても、それが政府全体もしくは所属する省庁の公式見解であると誤認せしめる可能性が高いため、自ずと制限があると考える。これに対する政府の見解を示されたい。

六 行政府の高官が政府の見解と明らかに異なったり、激しく誇張されたりした内容の発言を行った場合、国家公務員法第八十二条その他の法令による懲戒処分等を行うことは可能か、明らかにされたい。

七 経産次官は、昨年二月十九日に行われた記者会見で、「企業価値研究会でまとめたルール」について述べている。これは、平成十七年五月二十七日に公表された「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」のことか、明らかにされたい。なお、経産次官は、同記者会見で「基本的にはいまの経営者と買収者が日本ではこれがルールなんだということを認識をして議論してもらえばいい」と述べているが、これはどのような効果を期待しての発言か、明らかにされたい。併せて、この発言は行政手続法第三十二条に定める行政指導もしくはそれに類する行為と捉えてよいか、政府の見解を示されたい。なお、なんらかの効果を期待しての発言ではないとすれば、なぜ記者会見でそのような意味のない発言を行ったのかについて、理由を明らかにされたい。

八 経産次官は、昨年六月十四日に行われた記者会見で、「法廷闘争になっているので、個別の案件について、今どうこういうのは少し適切でない」としつつ、特定の投資ファンドを名指しして「手がけた案件で企業価値向上につながった部分があるかといったら、私はそこの部分はないのではないか」とし、否定的見解を述べている。同日は、当該ファンドによるブルドックソース食品株式会社に対する株式公開買い付けの期間中であった。この行為に、証券取引法(現・金融商品取引法)その他の法令上問題はないか、明らかにされたい。また、行政府の高官が、法律に従って行動している投資ファンドについて確たる法的根拠もなしに批判することは、特に海外からの投資を萎縮させかねないと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。