質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇号

柏崎刈羽原子力発電所を含む西山丘陵の地殻構造運動に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年二月四日

近藤 正道   


       参議院議長 江田 五月 殿



   柏崎刈羽原子力発電所を含む西山丘陵の地殻構造運動に関する質問主意書

 本年一月十八日に、私は、「柏崎刈羽原発の安全性と設置審査における国及び東京電力の責任に関する質問主意書」(第一六八回国会質問第一一三号)に対して、中越沖地震を踏まえても、柏崎刈羽原発敷地を含む西山丘陵の地殻構造運動はないとした見解の変更はないとする答弁書(以下「前回答弁書」という。)を受領した。
 一般に柏崎刈羽の平野の西側、海岸線と柏崎刈羽の平野の西縁の間の柏崎刈羽原子力発電所敷地を含む地域を西山丘陵と呼んでいる。国土地理院は、GPS(全地球測位システム、以下「GPS」という。)基地を三十キロメートル間隔に設け常時観測しており、中越沖地震後の二〇〇七年七月十六日と七月二十日、柏崎刈羽原子力発電所周辺に設置されているGPS観測点の水平・垂直移動を公表した。西山丘陵の海岸線を走る国道三五二号線には約二キロメートル毎に一等水準点が設けられており、中越沖地震後に国土地理院が水準測量を実施して同年八月八日の地震調査委員会に報告している。中越沖地震後の同年七月十八日、独立行政法人産業技術総合研究所(以下「産業技術総合研究所」という。)は柏崎原発敷地北東の寺泊から柏崎市街地南西までの海岸を調査して海岸部の隆起や沈降を発表した。国土地理院は人工衛星「だいち」の測定結果を解析して、同年七月二十日には柏崎市椎谷の観音岬を中心とした西山丘陵の隆起を、同年十月二日には柏崎刈羽原発敷地東部の中央丘陵・小木ノ城背斜の隆起や柏崎刈羽平野の沈降を発表した。同年十月十二日、東京電力は岩盤に直接設置された、柏崎刈羽原子力発電所の原子炉建屋やタービン建屋が中越沖地震で傾いた事実を公表した。
 これらの公的機関が公表した事や東京電力の発表した事は、「柏崎刈羽原発敷地を含む西山丘陵の地殻構造運動はない」とする前回答弁書とは矛盾すると考えるので、以下の質問をする。

一 西山丘陵の範囲、位置に関することについて

 一般に西山丘陵とは、海岸と柏崎刈羽平野や出雲崎・旧和島村の平野西縁の間の丘陵部で、南西端は鯖石川までを西山丘陵と呼んでいる。
1 前回答弁書の西山丘陵とはどこか。一般にいう西山丘陵で良いか。異なるなら西山丘陵の範囲とその境界決定根拠を明示されたい。
2 出雲崎町から柏崎市までの国道三五二号線沿いの一等水準点(四四五一~四四六二)は西山丘陵に位置しているか。西山丘陵に位置していないならその根拠は何か。
3 GPS観測点「柏崎1」は、柏崎刈羽原発敷地から二キロメートル南西の柏崎市松波三丁目の柏崎市立松浜中学校に、「出雲崎」は出雲崎町の西山丘陵内に設置されている。これらの観測点は西山丘陵に位置するのか。西山丘陵に位置していないならその根拠は何か。

二 海岸の隆起・沈降と地殻構造運動の関係について

1 国は、産業技術総合研究所が公表した、中越沖地震で柏崎刈羽原発敷地北東の出雲崎町から敷地南西部の柏崎市荒浜までの海岸で隆起や沈降が観測された事実を認めるか。
2 海岸の隆起の事実は地殻構造運動が起こったことを示すと考えるがそれでよいか。
3 海岸の隆起が地殻構造運動でないなら、他に何が考えられるのか。

三 GPS観測点の水平・垂直移動と地殻構造運動の関係について

1 西山丘陵やその縁辺地域に設置されたGPS観測点が中越沖地震で水平・垂直に移動した事を国土地理院が公表している。国は、GPS観測点の移動を認めるか。
2 新潟県中越沖地震の激震地を中心としたGPS観測点が移動した事は、地域の地殻構造運動を示すと考えるがそれで良いか。
3 前回答弁書は「西山丘陵の地殻構造運動はない」と述べている。中越沖地震でのGPS観測点の移動を地殻構造運動以外で説明するならそれは何か。

四 一等水準点の隆起沈降と地殻構造運動の関係について

1 国道三五二号線沿いの一等水準点が中越沖地震で隆起・沈降した事を国土地理院が公表している。これらの一等水準点の隆起・沈降を認めるか。
2 中越沖地震で国道三五二号線沿いの一等水準点が隆起・沈降した事は、地域の地殻構造運動を示すと考えるがそれで良いか。
3 前回答弁書は「西山丘陵の地殻構造運動はない」と述べている。中越沖地震での国道三五二号線沿いの一等水準点が隆起・沈降を地殻構造運動以外で説明するならそれは何か。
4 国道八号線沿いの一等水準点が中越沖地震で隆起・沈降した事を国土地理院が公表している。これらの一等水準点の隆起・沈降を認めるか。
5 中越沖地震で国道八号線沿いの一等水準点が隆起・沈降した事は、地域の地殻構造運動を示すと考えるがそれで良いか。
6 前回答弁書は「西山丘陵の地殻構造運動はない」と述べている。中越沖地震での国道八号線沿いの一等水準点が隆起・沈降を地殻構造運動以外で説明するならそれは何か。

五 人工衛星だいちの観測結果と地殻構造運動の関係について

1 人工衛星だいちの観測結果は西山丘陵と中央丘陵・小木ノ城背斜の隆起と柏崎刈羽平野の沈降を干渉縞で示している。西山丘陵と中央丘陵・小木ノ城背斜の隆起と柏崎刈羽平野の沈降した事実を認めるか。
2 西山丘陵と中央丘陵・小木ノ城背斜の隆起と柏崎刈羽平野の沈降は、地殻構造運動を示すと考えるがそれで良いか。
3 前回答弁書は「西山丘陵の地殻構造運動はない」と述べている。人工衛星だいちの示した西山丘陵と中央丘陵・小木ノ城背斜の隆起と柏崎刈羽平野の沈降を地殻構造運動以外で説明するならそれは何か。

六 原子炉建屋・タービン建屋の傾きと地殻構造運動の関係について

1 東京電力の建屋の水準測量結果の解析は、中越沖地震で岩盤に設置した原子炉建屋やタービン建屋が隆起・沈降し、傾いたことを示している。この事実を認めるか。
2 国は、柏崎刈羽原発の原子炉建屋やタービン建屋が傾いていたことをいつ知ったか。知った後、東京電力にどのような指示をしたか。国の内部でどのような検討をしたか。
3 国は、岩盤に立地した原子炉建屋やタービン建屋が傾くことを想定していたのか。想定していたならばその証拠を示す資料の概要を示されたい。
4 強固な岩盤に設置するといわれた原子力発電所の原子炉建屋やタービン建屋が地震で傾くなど、およそ想定できないことである。原子力発電所の原子炉建屋・タービン建屋の傾きに関する指針や手引き、通達は何か。
5 岩盤に設置した原子炉建屋やタービン建屋が隆起・沈降し、傾いた事実は、中越沖地震で、建屋直下で断層や褶曲などの地殻構造運動が起こったと考えることが常識的である。そのように考えないのか。
6 岩盤に設置した原子炉建屋やタービン建屋が隆起・沈降し、傾いた事実を地殻構造運動以外で説明するならそれは何か。

七 柏崎刈羽原子力発電所を含む西山丘陵の地殻構造運動はないとの見解について

1 前回答弁書の「柏崎刈羽原子力発電所を含む西山丘陵の地殻構造運動はない」との見解は、国土地理院や産業技術総合研究所の見解と異なると考える。国のどこの部署が、何を根拠に「原発敷地や刈羽村寺尾を含む西山丘陵の後期更新世の地殻構造運動はない」と判断し、答弁書を作成したのか。
2 地殻構造運動の調査を担当する国の部署は、国交省の国土地理院でないのか。
3 国土地理院以外が「原発敷地や刈羽村寺尾を含む西山丘陵の後期更新世の地殻構造運動はない」との見解を出したなら、その理由は何か。
4 柏崎刈羽原発敷地周辺の一等水準点の隆起沈降や、西山丘陵や中央丘陵・小木ノ城背斜の隆起と柏崎刈羽平野の沈降を公表している国土地理院は「原発敷地や刈羽村寺尾を含む西山丘陵の後期更新世の地殻構造運動はない」との見解を了承しているのか。
5 柏崎刈羽原発敷地周辺の海岸の隆起・沈降を公表している産業技術総合研究所は「原発敷地や刈羽村寺尾を含む西山丘陵の後期更新世の地殻構造運動はない」との見解を了解しているのか。
6 省庁間で異なる見解の答弁書は改めなくてよいのか。

  右質問する。