質問主意書

第169回国会(常会)

質問主意書


質問第一九号

諫早湾干拓調整池等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年二月一日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   諫早湾干拓調整池等に関する質問主意書

 国営諫早湾土地改良事業に伴って潮受堤防内に設置された調整池等について、平成二十年一月十五日に質問主意書(以下「前回質問主意書」という。)を提出したところ、同年同月十八日に答弁書を受領した(内閣参質一六八第一一二号)(以下「前回答弁書」という。)。しかし、答弁漏れや質問の趣旨を曲解しているのではないかと思われる答弁が散見されるので、再度、以下のとおり質問する。

一 前回質問主意書第一項で諫早湾干拓調整池の水質について問うたところ、平成九年度以降、いずれの年も目標値を達成していないにもかかわらず、「実際に調整池の水を使用して試験栽培を実施したところ、目標水準を上回る収量が得られたことが確認され」たので、「調整池の水を干拓地のかんがい用水として利用することについて特段の問題はない」と答弁している。要するに野菜の収量が確保されたということが水質保全の目標値を達成しなくてもよい理由のようであるが、理由としてはそれだけであるか、他にも根拠があるか、明らかにされたい。
 なお、調整池に繁茂しているアオコについては、昨年十一月十九日付け読売新聞夕刊(熊本)で、世界保健機構が定めた飲料水基準(一リットル当たり一マイクロ・グラム)を大幅に上回る毒素「ミクロシスチン」が検出されたと報道されている。ミクロシスチンについてはその有毒性を指摘する研究もあるが、政府はアオコの有毒性をどのように理解しているか、その見解を示されたい。

二 金子原二郎長崎県知事は、平成二十年一月九日の定例記者会見で、「諫干の場合の新しい農地での水の活用というのは、調整池の水を使うのではなくて、調整池に入ってくる本明川の水を使うのです、取水口で。年間三億立方メートルの水があります。調整池の水というのは緊急でどうしても使わなければいけない時は使うけれども、通常の農作業は、ちょうど本明川と調整池の境のところの水を取水して使うということになっていますので、調整池の水質とは違います。」と述べている。記者からの質問に入る前に自ら、「人が食べるものに汚染された水が使われるということが放映されている」テレビをずっと見てきての発言であり、さらには「私たちはあくまでも流れてきたところの一番きれいなところで取水をするようにしていますので、そこは理解していただきたい」とも述べている。
 前回答弁書では、政府は、調整池の水を干拓地のかんがい用水として利用するとして、これには「特段の問題はない」としている。しかし、長崎県は、「調整池の水を使うのではなくて、調整池に入ってくる本明川の水を使う」と言う。つまり調整池の水は、「緊急でどうしても使わなければいけない時」にのみ限定しており、通常は利用しないことを強調しているので、これは前回答弁書の考え方とは異なっている。政府は、長崎県知事の説明のとおりという認識であるか、それとも知事の説明は誤りであって、調整池の水は単に緊急避難的に利用するのではなく、普段に利用すると考えているのか、明らかにされたい。

三 前回答弁書では、前回質問主意書第四項の趣旨を曲解して答弁している。つまり、前回答弁書では単に土地取得者が負担することになる負担金の徴収方法を述べているだけであって、肝心の点について答弁していない。「潮受堤防は、高潮被害等の防止及び農業用水の確保を目的としている」と答弁しているのであるから、そうであれば、潮受堤防にかかる費用は、農業用水を利用する干拓農地を所得する受益者に一定割合を負担させるのが適切であるとの指摘について、見解を示されたい。

四 前回答弁書では、潮受堤防の防災の対象として想定している土地の範囲を地図上で示すことは困難であるとのことであるが、全く不可解である。国営諫早湾土地改良事業は、当初の目的は農地の造成であったが、途中で防災目的が加わった。目的が加わった以上、当然、その対象地は当初から明確になっているはずである。防災の対象地を地名ないしは地図上で特定されたい。また、防災の対象地の変動があったというのであれば、その変動状況も明らかにされたい。仮に防災の対象地が特定されていないというのであれば、特定しなくても良い理由を明らかにされたい。
 なお、言うまでもないことであるが、国営諫早湾土地改良事業は土地改良法に基づく事業であるから、防災という目的があるにしても、土地改良法の趣旨目的の範囲内で考えるべきある。防災の対象地はあくまで土地改良事業の対象となった土地、本件で言えば中央干拓地及び小江干拓地の防災ということではないか。干拓地以外の後背地などはもともと土地改良法からみた防災対象地ではなく、結果として間接的に防災の効果が得られる土地ということではないか。併せて見解を明らかにされたい。

  右質問する。